第17話


「ふぅ」

 今日も訓練で扱かれて疲れた。


 宿の一階の食堂で休憩しているとみんなが帰って来る。

「あはぁー、疲れたよぉ」

「今日も魔力は空です」

「私も頭が混乱してるぅ」

 とみんなも一緒で扱かれて来たようだ。

「みんなお疲れ、飲み物は?」

「「「エール」」」

「女将さん、エール四つ」

「あいよぉー」

 エールが来るまでみんな愚痴り始める。

 もう訓練を受けて二週間経った。


「教官が酷くてさぁ、何で遠距離の私らも走らされるわけ?」

「それはしょうがない」

「えぇー!アイラもキツイって言ってるじゃん」

「体力作りで悪い事ない」

「まぁ、そうだけど」

「それより魔力操作が大変」

 リミは体力作り、アイラは魔力操作が苦手なのか。

「てか、聞いてくださいよ!私なんて解除で頭パンパンですよ!」

「「それはしょうがない」」

「ふ、二人してそんなぁ!」

 リミとアイラに言われてショックを受けるネイルは、斥候だから罠解除なんかは覚えておいて損はない。


「そうだ、ルシエはどうなの?」

「俺はまぁ、想像通りだな」

「え?なにそれ?」

 近接は体力作りと技の連携、技の習熟がメインだ。あとは座学でモンスターの勉強もある。


「おうおう!若いのに疲れ切ってるな!」

「ラビオン!訓練が大変なのよ!疲れもするわよ!」

 リミがラビオンに言うが、

「まぁ、一ヶ月でダンジョンに潜ろうってんだから頑張るしかないでしょ?」

 アビーがそう言う。

「うぅー、そうだけど」

「まぁ、訓練で学ぶ事が多ければ何よりだ!それだけ物を知らないって事だからな!」

 ラビオンの言う通りだ。俺たちはまだ知らない事だらけだからな。


 訓練での経験はポイントになっている。

 スキルツリーを見ると増えているし、スキルを取得しているのでいい訓練だと思う。他の人の力も見れるしな。


 リミやアイラはちゃんとパッシブ系は取得してるようで、遠距離は体力なんかが少ないので体術系のパッシブを取得している。

 斥候のネイルは罠解除のレベルが上がっているので心配していない。


「どうだ?調子は?」

「ん?まぁ、順調だよ」

「そりゃ良かった!俺らも今は32階層にいてな、運が良かったんで“コレ”をゲットしたぜ?」

 と見せて来るのは肩掛けカバンだ。

 

「マジックバッグか?凄いな」

「もうちょっと驚けよ!…って、収納持ちには必要ないか」

「だがそれを売ればいい金になるだろ?」

「だな!だが売らない。俺たちで使うつもりだ」

「ほら、自慢はいいだろ?もう返してくれよ」

 とウリンがラビオンから奪っていく。


「ハハッ!あいつ宝箱からでたら、すぐに俺らに言うんだぜ?これは俺が使うからって!」

「あはは、まぁ、収納を欲しがってたからなぁ」

 ウリンは肩にかけて大事そうにしている。


「いいね!夢があるね!」

「売れば大金」

 とリミやアイラまで興奮している。


「どんな罠だったんですか?」

「あれはツール5と7を使って…」

 とネイルはウリンに罠解除を教えてもらっている。ピッキングツールを実際に使用しているなんて地球ではプロしか知らないな。


「32階層はどんなモンスターなんだ?」

「それが…」

 と話は弾む。

 

 翌朝は早くからギルドに集合し、訓練を受ける。


 俺と一緒に受けてるのは三人。

 大剣使いのミドル、双剣使いのサイ、槍使いのドンだ。

「うはぁ、今日もまた疲れるぞぉー」

「昨日なんて疲れすぎて帰ったら寝てたよ」

「お、俺も疲れたよ」

「そうだな」

 やはり出るのは疲れたと言う言葉だけだが、近接の担当教官は脳筋だからしょうがないな。


「おっす!」

「みんなおはよう!」

「「「「おはようございます」」」」

 担当教官のグラムと副教官のシザーレが来た。

「とりあえず柔軟からやって、30周走ろうか!」

「「「「はい」」」」


 グラムは脳筋だが大剣使いで感覚派だ。逆に副教官のシザーレは頭のキレる双剣使いで座学の時はグラムは横で寝ているだけだ。

 まぁ、いいコンビだと思う。


「おら!モンスターは待ってくれないぞ!」

「「はい!」」

 走るのが苦手な大剣使いのミドルと槍使いのドンはグラムから檄が飛ぶ。


 30周走り終わると次は素振りだ。

 何故か木製の大剣を使用する。

 これは俺と双剣使いのサイが遅れてしまうので先に素振りを始める。

 昼を取った後、技の習熟やモンスターの勉強などをして今日も終わりに近づく。

 最後はいつも模擬戦をやる。


「よし!今日はコンビでかかって来い!」

 すぐに俺とミドルが前に出て行く。

 まぁ、早い者勝ちだ。

「おらぁぁ!」

 ミドルは突きからの回転斬りを行うので、合わせてミドルの上を飛びながら振り下ろすが、グラムは大剣を器用に動かして両方の攻撃を『パリィ』する。

 二人飛ばされるが体制を立て直し俺が先に突きからの跳ね上げで攻撃する。

「せあぁ!」

「甘い!!」

 とここまでは想定内で『パリィ』をして来たグラムは俺を吹き飛ばすとミドルが俺の居た位置にいて、

「もらったぁー!!」

「うらぁー!!」

 いいところをついたがミドルの突きを強引に大剣で弾き飛ばされる。

「よし!合格!次!」

 俺とミドルは合格だったらしくすぐに退く。


 次のサイとドンもうまく立ち回り合格をもらい、今日の訓練は終了だ。


 これでリタイア組と言うのだから不思議なとこだ。


 まぁ、クタクタになるが、コンビネーションも鍛えられるので後二週間、どんな成長になるのかスキルツリーが楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る