第2話
「えっ!じゃあルシエは一文無しなの?」
「いや、あるにはあるが…」
持ってるのは白金貨だから普通には使えないだろ。
「んー、まぁいいって、そんなこともあるから!」
と銀貨を10枚差し出してくる。
「ん?いいのか?」
「ちゃんと返すんだよ?貸すだけだからね?」
とウインクしてくるのでありがたく受け取る。
「じゃあ街に行こう!」
「あぁ、その前に」
“ザクッ”っとナイフを取り出して自分の長い髪を切ってしまう。あとで整えればいいだろう。
「な、なんで切っちゃうの!綺麗な銀髪なのに!」
「ん?まぁ、俺に必要なことをしたまでだ」
このまま外見を変えずに街に入ってしまうのはまずいしな。
「は?…い、意味わかんないよ!…はぁ、揃えてあげるから貸して」
と言ってナイフを受け取るリミに髪を整えて貰う。
俺が死んだ事にするんだから髪型くらいはな。
髪を整え、俺たちは森を抜け城下町に入る。
門を潜るのに証明するものがなかったのでリミが助けてくれた。
「私が責任もって冒険者証を作ってくるから!お願い!」
必死になって頼んでくれている。
俺たちはさっき会ったばかりだぞ?
「はぁ、仕方ないな。すぐに戻って来るようにな!」
「ありがとう!」
門兵は通してくれ、リミは俺の手を引くとギルドに向かって行く。
「すまん」
「いいわよ!そんな時だってある?まぁ、あるからしょうがないよね!」
と言ってくれる。
いい子だな。
はぁ、俺の容姿のせいもあるだろうが、他人に苦手意識があったのを改めないとな。
王都の冒険者ギルドまでは人通りも多く、手を引かれて歩いて行く。
昼間はやはり人が多い。
「さぁ、ここが冒険者ギルドよ」
大きく年季の入った建物が冒険者ギルドのようだ。
両開きの扉を開いて中に入って行くと冒険者と思うがガラの悪そうな男達が手を引かれる俺を見ている。
「ソフィア、新人よ」
ソフィアと呼ばれたメガネをかけた知的な美人が受付なのだろう。
「へぇ、リミの紹介ね。それではこちらに記入をお願いしますね」
ソフィアは微笑んで俺の手を握りながら紙を渡された。
気にせず記入欄を見ると名前と年齢だけだった。
「それは冒険者はクエストをこなしていけば有名になって行くから名前以外はどうでもいいのよ」
「…そんなものなのか?」
「犯罪歴はそこにある天罰の水晶で分かるから盗賊なんかは登録出来ない…でも登録してから盗賊になる奴だっているから、一概に冒険者は善人とは言えないけどね」
まぁ、リミが言ってることは分かるし、俺は殺人などの罪を犯したことはない。
一回殺されたけどな。
いや、自虐は辞めよう。
天罰の水晶に触ると青く光って問題は無さそうだ。
カードが発行され手渡される。
「じゃあこれで登録完了です」
「Fランクスタートだね」
リミが言う通りカードにはFと書いてある。
ランクはクエスト達成やその他の実績に応じてFからSまであって、Sランク冒険者は世界でも数える程しかいないそうだ。
「じゃあ、門兵のとこに行って確認してもらおう」
「そうだが俺一人でいいぞ?」
「そう言うわけにはいかないでしょ?私に責任あるんだから」
「…そうだな。悪い」
そうだった、俺一人の責任じゃなかったな。
門兵のところに行くとカードを見せて確認して貰う。
「よし!これでもう大丈夫ね」
「ありがとう。近いうちにお金は返す」
「分かったわ!またギルドで会いましょ」
と言ってリミと別れる。けっこうあっさりしたものだ。
さて、まずはレビンに斬られた服をどうにかしたいが、白金貨はあまり使える場所がないのだよな。
「仕方ない…あそこに行くか」
アテはあるが、あまり行きたくはないな。
大通りを抜け貴族街に入る。
すぐに大きな商会が見えて来るので中に入って行く。
「さて、何か買わないといけないか」
「いらっしゃいませ!どんな物でもお言い付け下さい」
商魂逞しく太った商人のギルストが出てきた。
「悪いが剣を見繕ってくれないか」
「はい!あれ?何処かでお会いしてますよね?」
「いや、そんなことより商売をしろ」
ここには父と共に何度か足を運んでいる。顔は知られているがそこは商人だから見知らぬふりをするだろう。
「そうですね!剣はこちらにあります」
と店内を歩いて行く。
「これでいい。これをもらおう」
「はい!それではこちらに」
と受付に行き金を払う。
この剣が金貨10枚とはな…ミスリルソードだぞ?質もしっかりしているようだし、買いだな!
「は、白金貨?!」
「そうだ。何か問題でも?」
「い、いえ、それでは」
釣りの金貨90枚を受け取り財布に入れる。
財布には魔法が付与されていていくらでも入るようになっている。
「またのご来店をお待ちしております!」
深々と頭を下げるギルスト。
俺は腰に二つの剣を装備する。
歩きにくいがしょうがない。
俺は貴族街から出ると平民街の服屋に行く。
店員にサイズの合うものを持ってこさせて着替える。白のシャツに黒のズボンだ。
これで銀貨5枚だから高い買い物だな。
日本円に…はしなくていいか…
宿屋に行くと受付のおばちゃんが対応する。
「うちは一泊銀貨3枚だよ!朝飯つけるならプラス銅貨5枚だ」
「なら2泊分、朝飯付きで」
「あいよ!」
料金を支払うと鍵を渡される。
二階の一番奥だった。
中に入ると掃除してあるのか、木のいい匂いがする。
ベッド、テーブル、椅子、シャワーがついているのでそれだけでも良かったが、窓もついてるので外の様子を見る。
王都だけあって賑わっているなぁ。
「さて、スキルでも見るか」
俺はベッドに腰を下ろすと外れスキルと言われたスキルを念じてみる。
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