第16話 感謝されたついでに能力確認
「それで……。色々と有耶無耶になりましたが、カザリはその……。コクーン?と契約ってのをしたんですか?その契約っていうのが何なのか、正直よく分かっていないんですけど……。この子の言葉が分かるようになるって認識で合っているんでしょうか?」
「そうだ。カザリ殿はこの子、コクーンと契約関係にあると見て間違いない。普通はちゃんと手順に則って契約を結ぶものなのだが、カザリ殿の呼びかけにこの子が応じて契約が成立したのだろうな。ただ、呼びかければ誰でも契約が成立する訳ではなく、特別気を許せる相手であり、信頼された相手だからこそ特殊な形で契約関係に至ったのだ。」
「そうなんですか?でも、カザリは何も特別な事はしていないと思いますが……。コクーンにはそんな普通の対応が安心出来たのかも知れないですね。それで……。カザリ?流石にそんな風に足に布を巻いて無理矢理足を伸ばさないようにするのは、ある意味ネグレクト以上の虐待に近いと思うんだけど……。」
「あ、足を矯正されているコクーンさまも大変可愛らしいです……。そ、その……。よろしければ、私も頭を撫でさせて欲しいです。」
「キュッ!キュゥ!」
「別に構わないと言っているわ。あと、堅苦しい言葉は不要だとも言っているわね。この子にもそれなりの立場があるのかもしれないけれど……。子供に対して畏まり過ぎるのも良くないと思うわ。でないとこの子の方もあなたに甘える事が出来ないでしょう?」
「それは……。そうですね。幻獣さまとは敬意を持って接するように教えられてきましたが、畏まるだけでは仲良くなれる筈もありませんよね。ありがとうございます。では、早速触れさせて……。あっ、ありがとう…ございます。その……。自分から触られに来てくれまして。こ、コクーンちゃん?」
「キュゥ!キュッキュッキュゥ!」
「あら、コクーンも元気一杯に喜んでいるわ。よほどあなたに撫でて貰えたのが嬉しいのでしょうね。子供には沢山の大人の手が加わる事が重要だと聞いた事があるけれど、やはり先人たちの教えは偉大ね。こうして、この子が気を許せる相手が増えれば増える程、この子にとってこの場所がもっと大切な場所になるのだから。それは結果としてこの子を助ける事に繋がるし、何より大切な場所にいる気の許せる人たちに囲まれている方がこの子にとって幸せな事だと思うわ。」
「カザリさん……。そうですよね。私たちもこれからコクーンちゃんやクォンさまともっと仲良くなって、ここが大切な場所だと思っていただけるように頑張ります!
よしよし、コクーンちゃんも好きなだけ甘えて下さいね!私もその……。また撫でさせて貰いますから……ねっ?」
「うゅ、キュウ!キュッ!」
「な、何となくですが……。構わないと言ってくれている気がします!コクーンちゃんは何と言ってるんでしょうか?カザリさん!」
「あっダメだ……。コクーンに夢中で話聞いてないやつだ。まあ、その……。コクーンも別に嫌って訳じゃないのか?」
「キュッ!キュゥ、キュッキュ!」
「リグレアには構わないと言っているわ。ハジメには……。
「……これも新たな繋がりか。そうか。結界の中で守るだけがこの子を大切にする事ではなかったのだな。もっと多くの繋がりを持たせる事こそが本当は一番大切で、それがこの子に必要な事だったのかもしれないの。」
カザリのコクーンに対する教育方針での説教が終わり、リグレアが合流して、周りに取り巻きのエルフたちが増え始めた頃。
男性陣のハジメ、クォン、女性陣のカザリ、リグレアで別れて会話してはいるのだが、その内容の中心は勿論、カザリの腕の中で元気一杯の様子であるコクーンの話である。
そして、当のコクーンはカザリの手によって足から胴に掛けてぐるぐると布を巻かれており、カザリによるとコクーンはその状況を許容しているようである。(カザリに可愛いと思われたいとの健気な理由らしいが。)
とは言え、やはりカザリはコクーンの事を第一に考えているのか、コクーンはふんわりと布に巻かれている為、別段苦しそうな様子などはなく、むしろ小さなお人形のようなその姿には遠巻きの女性エルフたちは勿論。リグレアもメロメロな様子である。
そしてそれは、確かにコクーンとリグレアを始めとしたエルフたちの心の距離を縮めるのに一役買っており、そこには内気な性格のコクーンは存在せず、皆から向けられる視線にも臆する事のないとても元気な様子だ。
「あの……。とても良い空気になってる所に水を刺すようで申し訳ないのですが……。そちらの方たちの説明をお願い出来ませんか?私はこの里の警備を管轄する立場な者で、名をマチルダと申します。お見知り置きを。」
「あっ、マチルダさん。こんにちは。そうですね。ここで立ち話の何ですから、私の自宅に案内します。ハジメさん、カザリさん、それに幻獣さま……。いえ、クォンさまにコクーンちゃんも一緒にお願いします。
マチルダさんにはこの方たちと先程起きた奇跡についてもお話ししますので。」
「なっ!?あの奇跡にもこの方たちが関わっていたのか!?それはすぐにでも話を……。
コホン。し、失礼しました。では、早速ではリグレアの自宅に向かいましょう。大変恐れ入りますが……。神獣さまもご同行いただけるのでしょうか?そちらの女性に抱かれているのは行方不明になったと報告があった神獣さまのご子息さまでお間違いないですか?」
「うむ。我もそれにコクーンもこの者たちに同行しよう。勿論、この子は我が子で間違いない。そして、この子の名は先程コクーンだと決定した。以後はこの子の事を呼ぶ時にはコクーンの名称で呼ぶように。」
「畏まりました。コクーンさまですね。里の者たちに広く周知させていただきます……。
ーーって!もしや、ご子息さまのお名前が確定したと言う事は……。契約者となれる程のお方が!?も、もしかして……。その契約者さまというのはこちらの女性が……?」
「その話は私の自宅でしますので、ここではこれまででお願いします。それでは私について来て下さい。そこまで遠くはないので。」
そうして、リグレアを先頭にマチルダ、ハジメ、カザリ・コクーン、クォンの順でリグレアの自宅へと向かい、エルフの里の入口からほんの数百メートル程離れた場所にある彼女の自宅へと一行は訪れるのであった。
勿論その間にも、エルフたちの注目を集めまくり、ザワザワとウワサされまくりのハジメたち一行であったが、注目の中心にいるハジメ、カザリは堂々とした立ち振る舞いであり、その点もエルフたちに彼らの立場を誤解させる要因となってしまったのだった。
そして、木々の生い茂った先にある巨大な大木の側に、スッとと佇む一軒の家。一戸建ての木造建築がそこにはあった。
「ここが私の家になります。少し手狭ではありますが……。どうぞお上がり下さい。」
「失礼します。私も来客準備をお手伝い致しますので、皆さまはこちらでお待ち下さい。」
「「お邪魔します。」」「失礼する。」
「キュッ?キュゥ。」
「はい。どうぞ。少々お待ち下さい。」
その後、リグレアとマチルダがお茶などを用意し終えて、二人が席についたタイミングで先程までの経緯、最初の街プリミアからここまでの話をマチルダたちに伝えた。
その話の途中、マチルダが『あの……。クソガキ共が。』と彼女の本性が見え隠れするなどあったのだが……。ここに来た経緯も含めて粗方話し終える。(勿論、ハジメたちの出生や能力など、所々はボカしてだが。)
とは言え、流石に精霊たちを実体化させたさせた件などは誤魔化しようがなく、カザリの能力として伝える事となった。
そして、案の定信じられないと言った様子のマチルダに、リグレアの方からハジメとカザリの能力確認の提案を行うのだった。
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