第10話 トンデモ能力の確認方法
「それで……。プリミアの街から既に出た訳ですが、実際の所カザリさんは精霊さまに干渉出来る力を持っているのでしょうか?
あの時は近くに
異世界生活が始まって二日目。昨晩の言伝の通り、昼過ぎに宿屋を訪れたリグレアと共にハジメとカザリはエルフの里に出発しており、大分、プリミアの街(最初の街)が遠くなり、周りに人気がない場所のなった所で、リグレアは二人に……。と言うか、主にカザリの方にその視線を向けて、昨日の精霊騒動の件について尋ねてきた。
エルフの里に出発してからすぐは当たり障りのない会話をしていたので、人気の無くなるタイミングを見計らっていたのだろう。
そしてそれはカザリも見越していたようで、彼女は外行きの笑顔でそれに対応する。
「えっと……。よく分からないんだけど、リグレアはあの精霊さま?が私の力で現れたって本当に思うの?確かにあんなに突然私たちの前に現れて、すぐに見えなくなった事には私も驚いたけれど……。流石にその原因が私にあるなんてそんな……。っね?」
「いや、そんな素敵な笑顔で俺に話を振られても……。ま、まあ……。俺たち自身、自分がどんな力を持っているのかをあまり分かってないんだよ。だから、コイツの力で……。その精霊さま?に干渉したかとかは、実際の所よく分かってないってのが正直かな。」
「えっと……。で、では、お二人は自身の能力を確認した事がない……。という事でよろしいでしょうか?その……。大変失礼な話ですが、これまではどうやって生活をして?」
「……そうね。私と彼で二人で生活をしていたわ。そこは島国の離島で他との交流が無かったから、ほとんど自給自足の生活を送っていたわ。だから、正直今回こうして旅をする事になって驚いてる事が多いのよ。」
「お、おう。そうだな。簡単な狩猟や釣り、果実などの採取だけで事足りていたから、自分の能力がどうとか……。それを知る必要も機会もなかったんだ。だから、二人でしている旅の途中でコイツが不思議な力を持っているかもしれないと分かってな。」
「な、成程……。そのような隔離された場所で育ったのですね。ああ!だから、初めてお会いした際、見慣れない服装をされていたのですね!私たちの服と同じような素材だとは思いますが、どこか丈夫で着心地が良さそうだと不思議に思っていたのですよ。
では、お二人ともご自身の
ハジメは咄嗟にそれらしい言い訳をしたのだが、逆にリグレアには疑問を持たれてしまい、回答を窮するかと思われたが……。
そこは持ち前のレスポンスの速さでカザリが嘘八百を堂々と語り、その妙にリアルを盛り込んだ二人の過去設定に対して、思わずリグレアも納得してしまう。
しかも、二人の服装に違和感を覚えていたリグレアはその件と絡めて二人の過去について考えてしまい……。結果として、完全に二人の嘘の設定を信じ込んでしまった。
「『確認されていない。』って事は。もしかして、自分の力を確認する方法があるの?」
「はい。少し大掛かりの設備は必要ですが、確認する事は可能です。本来は産まれて間もない赤子のタイミングで確認するのですが、ごく稀にそれ以降に確認される場合もありますので……。恐らく大丈夫かと思います。」
「えっと、大掛かりの設備って……。それはどこにあるんだ?流石に時間が掛かる場所にあるようなら、設備がある場所の名前だけを聞いてそこに自分たちで行くからさ。」
「あっ、いえ……。確かに大掛かりな設備なのですが、わざわざ遠くに行く必要はなくてですね……。その設備は…エルフの里の中にもあるんです。だから、目的地でその……。」
すると、まさかの自身の
どうにも、それが目的地であるエルフの里にあると話すリグレアの歯切れは良くない。
恐らくだが、嘘がつかない性格のリグレアがどうしてもカザリの能力について知りたくて、でもそれを正直に言えば『他で調べる』と言われてしまうと苦悩しているからこその歯切れの悪さなのだろう……。
「そう……。では、その確認はエルフの里でさせて貰いましょうか。きっと私の神スキルには驚天動地間違いなしね。」
「まあ、抱腹絶倒にならない事を祈るかな。正直、お前の方は大丈夫だろうが、俺の方がぶっちゃけ心配なんだよな。どうしよう。しょうもないネタスキルとかだと……。」
「あら、私という女神を妻に持つあなたがネタスキル持ちとは神さまもゲームバランスの調整が上手なようね。流石にあなたという存在のほぼ大部分を占めるであろう私の存在の事は、神さまでさえ度外視出来る筈もなかったという事ね。ご愁傷さまだわ。」
「いやいや!何でもう俺がネタスキルな前提なんだよ!ちょっとは有用な能力かもしれないだろうが!あと、何で俺の存在の大部分がお前で塗り潰されているんだよ!?」
「ふっ、愚問ね。あなたは私の
「くっ!想像以上に芯の通った主張だった!お前に生殺与奪の権握られてるの……。マジで理不尽過ぎて許せねーよ。これでホントにハズレスキルとかだと許さんぞ。神さまよ。」
「まあ、安心なさい。あなたがどんなハズレスキル持ちのネタキャラでも、私という絶対的プラス要素があなたを引き上げているのだから、実質人生勝ち確と言っても過言じゃないわ。神さまではなく女神を崇めなさい?」
「カザリさま、女神さま……ってか?まあ、多少のハズレスキルでも、お前がいるなら何とかはなるか……。しゃあない。出来る限り有用なのが出る事を祈るか。」
「あ、あの……。ほ、本当によろしいのですか?先程も言いましたが、設備は大掛かりですけど……。他の街でも確認は出来ますよ?
それでも、その……。エルフの里で確認していただけるのですか?」
カザリのハジメに対してだけのあけすけな言動に目を白黒させながらも、自身の思惑通りにエルフの里への案内を了承する二人に対して、やはり嘘のつけないリグレアは再度彼らに本当に大丈夫なのかと確認を行う。
それは向こうで何か面倒がある事を自白しているも同然なのだが……。動揺を隠し切れない彼女はその事に気がついていない。
しかし、それも理解しながら提案を了承した二人は、『『ええ(ああ)、大丈夫。』』とこれまた冷静に彼女に告げる。
ハジメはカザリが了承したのでそれに従っただけなのだが……。カザリがリグレアの誘いに乗った
そうして、その後は元の取り留めの無い話をしつつ、平坦な道を順調に進んで、翌日の昼過ぎ頃にはエルフの里まで辿り着く所まで歩みを進める事が出来たのだった……。
ちなみに、一泊だけ野宿をする事になったのだが、最初はカザリとリグレア、ハジメのペアで二つ分のテントを使う予定だったのにもかかわらず、カザリの『大きなテントなのだから、一つのテントで寝ればいいじゃない。』との発言により、三人とも同じテントで寝る事になったのだった。
当たり前の話だが、ハジメがテントの真ん中に寝転び、そこを陣取ろうとしたのをカザリが蹴り飛ばして、半強制的にハジメ、カザリ、リグレアの順に眠る事になるのだった。
その一部始終を見ていたリグレアが、カザリのあまりに躊躇いの無い
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