第2話 始まりの世界と異世界?
「うん。マジで意味分からん。どういう事?俺たちは昨日、契約満了のお祝いとして晩酌をしてから、いい時間になったって事で寝ただけだよな?何コレどういう状況?」
「そうね。ハッキリ言ってわたしも理解不能なのだけど……。ここが日本どころかその他の国でもない可能性が高いという事ね。
マジで意味不明だわ。目が覚めるとそこは異世界だった。これはトンネルを抜けた先が雪国だった衝撃を上回るトンデモ展開ね。」
「いや、落ち着いた口調でボケるのは止めろ。ふぅ……。なんかこの状況には唖然とするしかないけど、とりあえずちょっと和んだわ。
ここが異世界ってのは分かんないが、俺もお前も意識はハッキリしていて、二人だけが変な世界に迷い込んだって事は分かった。」
「あら?随分落ち着いたじゃない。もっとビックリして、『これは夢、もしくはドッキリなんだろ!?そうなんだろ?』って詰め寄って来るのかと思ったじゃない。そうしたら、夢かどうか確認するって口実で合法的に頬をつねれたのに……。残念だわ。」
「うん、お前もいつも通りで俺は安心したよ。それと隙あれば俺に攻撃しようとするのは止めような?舌戦も強いのに物理もこなせるとか外面無双も大概にしろよ。」
「何よ。そんなの妻とのドメスティックなコミュニケーションの一環じゃない。それを笑って許すのが甲斐性ってものよ。
……と、そんな事は今はどうでもいいわ。問題はここが異世界もしくはそれに準ずる世界だとして、これからどうするのかという事なのよ。無一文で放り出された私たち二人なんて、超絶美人な外面無双女性と一般成人男性でしかないのよ。」
「いや、言い始めたのキミだけどね?そして、唐突な自分上げと俺の無個性感を全面に押し出すのは止めようね?事実だから否定しないけど、なんか悲しくなるからさ……。
まあでも、コレからどうするかだよな。漫画やアニメでは異世界転移に際して、色々と説明なり神様なりが現れるんだが……。この世界のトリセツはまだですか?」
「バカね。トリセツで理解出来るのは家庭用ゲーム機の操作方法くらいなものよ。そんなものよりも、この世界の攻略本はまだですか?もしくは分かりやすいチート能力でも可です。これくらいは最初から要求しないと。」
「……強欲で貪欲な妻とか即禁止カードにしてくれ。この世界のルール改定はよ。って、色々と話が脱線し過ぎだ。この状況が特殊過ぎてアレだけど、ここがどこで俺たちに何が出来るかくらいは知りたい所だな……。」
ーー目が覚めるとそこは異世界だった。まさに読んで字の如くの状況が二人が先程目覚めてからの出来事であった。
彼らが目覚めたのはどこか開けた場所にある草原。適度に草が生い茂ったその場所で起き上がった二人は辺りをぐるっと見渡して、冒頭の感想を口にしたのであった……。
辺りに生えてる草などは正直そこらに生えていた草と違いがない。しかし、彼らがここを異世界もしくはそれに準ずる世界だと判断したのは、そこに動き回る生物達を見てだ。
少し離れた場所には、ポヨポヨとゴム毬のように跳ね回っている漫画やアニメで見たような青色の物体が……。そして、その近くには白いウサギの見た目なのだが、その頭にはツンとした一本の角が生えている。
正直それだけでも、ここが日本どころか地球のどこでもないと言えるのだが、そこからかなり遠くの方に見える空飛ぶ蛇のような見た目で翼の生えた生物を確認して、彼らはここが違う世界である事を確信したのである。
しかし、待てど暮らせど彼らにこの状況を説明してくれる者はおらず、妙に落ち着いている二人は今後の行動について、建設的な話し合いをする事にしたようである。
「じゃあ、まずは……。誰かこの世界の人間に出会う事ね。見た所、ここはただの草原だけど、もしかすると街や村のように人が密集する場所が近くにあるかもしれない。軽くだけど周辺の探索をしましょうか。」
「ああ、でもここは地球じゃないし、危険が多い可能性が高いから二人で警戒しながらにしよう。基本的に敵意がなければスルーの方向だが、万が一どうしようもない時は逃げるか隙を見て逃げるようにしよう。」
「あら、そこは『ここは俺に任せて先に行け!』じゃないのね。まあ、とりあえず逃げるってのには賛成だわ。一々攻撃していたらそれこそ敵だらけになりそうだもの。」
「いやいや、それこそこんな序盤にそんなセリフ吐いたら助かるものも助からねーよ。一度は言ってみたいセリフではあるけど……。
じゃあ、周辺探索を始めるか。うーん、360度どこを見渡しても草原しかないな。電柱とかないから見晴らしだけは最高だな。」
「そうね。昔、北海道の牧場に行った時もこんな風に気持ちいい見通しだったけれど、建造物の近くには人工物が多かったわね。
そう考えると……。やっぱりファンタジーなだけあって、夜の星空は地球と違って別格に綺麗だったりするのかしら?」
「ああ、そんな事もあったなー。突然お前が『北海道って、大自然が広がっててとっても開放感があるらしいわよ?』とか土曜の朝に言い出して、午後には北海道1泊2日の旅をする羽目になったあれの事な?まあ、言われてみれば雰囲気はかなり似てるな。とは言え、今の状況で夜空をここで見上げる事になったら死亡フラグが立ちまくりなんだけどな。」
「それもそうね。夜空を見上げるなら身の安全が保証されている所じゃないと落ち着かないものね。……ああ、そこスライムみたいな謎生物が群れてるから気を付けなさい。」
「メチャクチャ冷静に注意喚起してくるな。まあ、ありがとう。てか、やっぱりこれはスライムでいいんだよな?流石にドラ◯エみたいな可愛い見た目じゃないけど……。なんか祭りの時の水風船みたいで、これはこれでアリな姿してるな。こっちに敵意もないし、魔物?モンスター?って感じじゃないな。」
ハジメは目の前でポヨポヨと跳ねながら群れる三体のスライム?を前にして思わず呟くと、カザリの忠告通り、触らぬ神に祟りなしと迂回してその場から少し離れてみる。
彼の呟いたようにスライム?には敵意のような物が見られず、こちらに積極的に近付く個体などは存在しないのだが、まだ正体がハッキリとしない相手に無警戒に近付く程、彼らの警戒心は緩んではいなかった。
そして、二人が警戒しつつ先を進み、目が覚めた地点から2・3km程離れ場所の少し小高い丘を超えた所で二人同時に顔を合わせる。
「「街だな(わ)。」」
彼らの目線の先に広がるのはそれなりに大きな街の外観。この世界に来て?から初めての人間との接触である。
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