第20話 修行を始めますっ
「1ヶ月間ありがとうございます」
ソフィアさんは本当に感謝を込めてそう言ってくれた。
「他の精霊とも話がつきました。これからはカナメの修行を行いつつ魔族への対策を考えていきます。私たち精霊は現状維持をしながらも少しずつ魔族を倒していくことにしました。魔力も2人にわけられました。カナメがこの森を綺麗に維持できたおかげです。ありがとうございます」
スラスラと出てくる言葉に僕は少し背徳感が募る。優しく笑っている。笑っているのだが目が笑ってない気がする。僕は冷や汗をかきながらソフィアさんの話を聞いた。
「しかし…」
スゥッとソフィアさんの表情が消えた。僕は極りと喉を鳴らし恐怖を感じる。
「ルールを守らなかったようですね」
「す、すみません」
僕はソフィアさんの顔が見れなかった。罪悪感もあるがそれ以上にソフィアさんからの圧が僕にのしかかってくる。簡単に言えば。めっっっちゃ怖い。
「あなたのスキルは貴重です。簡単にバラしていいものではありません。それをわかっていますか?」
「はい…」
「…………」
しばらくの沈黙。しかし、ソフィアさんの方から深いため息が聞こえた。
「誰かを助けたい、か。………あなたの行動は間違っていません。どうやら賊も国に捕まったようですし危険はないと思います。どうやら上手くごまかせたようですしね」
呆れた、そう言っているようで今回は許すつもりらしい。僕も少し安心する。
「しかし!これは結果ろんにすぎません!次からは気をつけてください!カナメは文字も読めない。常識もない。魔法の知識もない。この世界で魔法の知識は不可欠。スキルで生き抜こうとするものは馬鹿ですよ!」
「は、はい」
「これからはめいいっぱい教育していきますからね!」
そう言ってソフィアさんは怪しく笑う。もしかしたら僕は何かしらやばい状況にあるのではないだろうか。
「まずスキルや魔法無しで武術の練習をします。カナメの攻撃は蹴り技が多いです。総合的に拳や組み術などを練習しながらも蹴り技を広げていきましょう」
蹴り技。そういえば今まで足を使うことが多かったな。自分で気づかなかった。よく見てるなぁ。
「それと同時に言葉の練習。話し言葉は通じるので文字の読み書き。これは絶対重要です。この国は公用語を使うので他の国でも役に立つと思いますよ」
やっぱりそれは避けられないか。僕、英語苦手なんだよなぁ。よく赤点取ってたし。やたら単語多いし面倒いしまず担当の先生が嫌いだったからやる気出なかった。
「言葉と武術などの基本、その他の知恵、これを半年で完璧にします」
は、半年!?待って短くない!?武術だけならまだしも言葉は絶対無理!英語苦手なんだよ!
「ちょ、ちょっと短くないですか!?」
僕は慌ててたソフィアさんに意見を述べる。
「カナメは飲み込みが早いです。私の魔法のせいで飲食しなくても体力は減りません。死にませんよ」
「そういうことを言ってるんじゃありません!」
これはまさか地獄になるんじゃないか?ソフィアさんの考えは変えないようだし。覚悟して修行しなきゃやばいぞ。ソフィアさん優しそうなのにスパルタだ。
「それが終わったら残りの半年で武術などの応用、魔法による勉強を行います。もし武術の基礎がすぐに終わればそのまま応用に進みます。約1年でカナメを育て上げます」
無理だろ……。自信ない。この1年間地獄しかない。誰か助けて。
「ではまず武術からですね」
鬼が笑う。
僕は今地獄にいた。ソフィアさんが作った精霊樹のツリーハウス大きさは小さいが勉強に集中できる場所だった。ここで文字の勉強。ソフィアさんが隣で文字を読み僕がそれを繰り返し書く。単語帳もたくさん作られた。訳はもちろん僕の知ってる日本語だ。声に出してくれれば分かる。どうやらソフィアさんも日本語は難しいらしい。僕の世界でも日本語は難しい部類に入るし当たり前か。しばらくすると息抜きというように場所を変えて前紹介された草原へ案内され繰り返し組手。それを半年間続けた。時間としては言葉を覚える時間が多い。体は常時発動しているスキルのせいでついてこられた。飲み込みが早く力のコントロールもついてきた。ソフィアさんの教えは的確だ。
この世界の言葉は見た事のない記号のようなものが使われている。けれど発音は同じなのはよくわからなかった。けれど公用語以外の言葉を聞いたが発する言葉すらわからない。どうやら会話ができるのは公用語だけのようだ。発音は日本語と一緒ということで予定より早めに言葉を習得することができ武術のほうも飲み込みが早かった。武術などの基礎は3ヶ月、言葉は4ヶ月で完璧に習得することができた。そして、武術は僕の予想以上に種類が多かった。格闘術、弓術、剣術、槍術等、他にも色んな武器の基礎を叩き込まれた。
「ソフィアさん、何で色んな武器の基礎をするんですか?ひとつに絞って磨いた方がいいんじゃないですか?」
純粋な疑問。確かに色んな武術を体験していれば応用力も増えるだろうがそれでは弱いままだ。
「そうですね。まずカナメがどの武術にあっているか。それの確認をしたかったから。もうひとつは応用力が増えるから。カナメは弓術が得意ですね」
まぁ、納得だ。ていうか僕高校ではアーチェリーやってたし。
「残り9ヶ月ではひとつに絞り込みますよ。弓術はいいですが矢に制限がかかります。やはり足技に集中しましょう。カナメは足が長いですからね」
また、地獄が始まるのか。これからはもっと厳しくなる。そう言われたようで僕は逃げ出したい気持ちにかられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます