第16話 【称号】を取得しましたっ

魔力を吸い上げたまま首にくる衝撃に備えた。首に結界を出し構える。よくよく考えればソフィアさんを助ける時結界を使えばよかったのだ。考え無しに飛び込んでしまった。


ザシュッ


首が切られた。


それも僕ではなく男の首が地面に転がる。支えがなくなり男の体が糸にぶら下がる。僕は咄嗟のことに力が抜けて地面に落ちていく。同時に男の腕が抜けた。

しかし、地面に激突する衝撃はなくふわりと体が浮く。

「カナメ!カナメ!生きてますか!カナメ!」

ソフィアさんの慌てたような声がした。見上げるとソフィアさんは今にも死にそうな顔で僕を抱えていた。

「い、生きてますよ?」

美少女でもこんな顔するだなと驚きながら僕は答えた。正直言うと喋る余裕あるし痛いけれど苦しみはあまりない。多分僕のお腹はあの時のように気持ち悪い再生が行われているのだろう。

どうやらソフィアさんが助けに来てくれたらしい。首と胴体が離れた男の死体が地面に転がっている。男は人間ではないが人の形をしている。その死体を見るのは初めてでちょっと怖かった。

「い、今すぐ湖に………!」

カナメは猛スピードでけれど僕を揺らさないように湖へと飛んでいく。

「いや、大丈夫ですよ」

そう言ったがソフィアさんは聞いていないようで僕は黙ってソフィアさんに抱えられた。てか、美少女にお姫様される僕って……。




服を着たままゆっくりと僕を湖に入れた。その頃にはもう傷が治りかけていてそこでやっとソフィアさんが僕のスキルに気づく。僕の異常な回復力に目を剥いていた。

「これはカナメのスキルですね」

「あ、はい。蒼龍と戦った時体半分失ったんですがこの『復活』のスキルでどうにかなりました」

僕はそう言ってここからここまでと以前なくなった部分を教える。すると、ガッと肩を掴まれる。

「どうしてそれで生きてるの!?」

青ざめた表情のソフィアさんに僕は驚く。いや、ソフィアさんも驚いてるけど。

「どっどうしてでしょう!?」

落ち着いている雰囲気のソフィアさんが慌てている様子に混乱した。

ありえないと顔に書いてある。

ソフィアさんはハッとしたように僕から離れ誤魔化すように咳を一つ。

「私はカナメに怒らなければなりません」

「えっ」

「自分を犠牲にするような戦い方はやめてください」

「あー」

あの時はソフィアさんが危ないと思って何も考えずに突っ走ったから自分が傷つくことも考えていなかった。実際スキルのおかげでどうにかなったけど。ソフィアさんは悲しそうで心配そうに僕を見つめる。

「すみません…」

そんなソフィアさんの目に負けて素直に謝る。

「……」

けれどソフィアさんからの返事はなかった。見ると悔しそうで悲しそうで僕はなんとも言えなかった。

「私の力不足です…」

チャプンと水の音がする。そういえば僕たち今湖の中にいるんだった。しかも服着たまま。

ソフィアさんは黙ったまま僕を強く抱きしめる。暫く離れてくれなかった。

「ソフィアさん?」

僕はむず痒い気持ちになりながらじっとソフィアさんが落ち着くのを待った。






「そういえば他の魔族達はどうしました?」

僕は新しく貰った服を来ながら何かしら準備をしているソフィアさんに話しかけた。

「あの魔族たちはここです」

そう言ってソフィアさんは大きな水晶を見せる。色はなんというか汚い。

「なにこれ?」

ソフィアさんに水晶を渡され中を見てみるとパリパリッと電気のようなものが見えた。あの男も魔族達も属性が雷みたいだったけど。

「これは私のスキルの『牢獄水晶』です」

「『牢獄水晶』?」

精霊であるソフィアさんがなんかちょっと物騒なスキル持ってるんだなぁ。牢獄ってことはまさかここに1万の魔族達が閉じ込められてるの!?

「魂はもう消滅しています。そこにあるのは魔族たちの魔力だけです。その魔力を自分のものとして使うことができますよ」

「へぇ」

どんな風に使うのだろうか。すぐに戻ってきたから時間なんてかからないのだろうか。しかし、凄いそんな強いスキル、チートではないだろうか。

僕は驚きで言葉が出てこなかった。

「けれど体力を奪われるのであまり使いたくないのですがカナメが危なかったから使いました」

にっこりとソフィアさんは笑った。

「では、カナメ。あなたに称号を与えます。ルールは3つ守ってくださいね」

ソフィアさんは僕に近づく。

「左手を出してください」

称号を与えるとはどんなことだろうか。何かしら儀式を行うとか?いつの間にかある暴食はどんなものか知らないし何かに使うかどうかわからない。

僕は黙って左手を差し出す。

「『〖水の森〗の精霊ソフィアが命じます。この者を〖水の森〗の管理者として称号を与えます』」

そう呪文のようなものを唱えるとソフィアさんは両手を僕の手首にかざす。すると、蒼い光が照らした。眩しくて僕は目を瞑る。光が照らされた時魔力の流れを感じた。

光が消え僕の左手首には紋章が刻まれていた。ぐるりと手首を巻くように複雑な紋章だった。イメージとしては水を思い浮かべる。

「『管理者』?」

「はい。妖精、見えるでしょう?」

ソフィアさんは自分の肩に乗っている小さな生き物を指差す。

妖精と言うから僕のイメージでは小さな小人に羽が着いているような様子だったがモフモフ?ふわふわ?なんか丸っこい。僕がじっとその生き物を見ているとフッと目の前に何かが通る。見ると今度こそ僕のイメージの妖精が僕を不思議そうに見つめていた。他にも周りを見渡すと見たことないような生き物も居れば人型も居た。少し大きい妖精もいる。そのどれもが優しく暖かな雰囲気を醸し出している。僕は感嘆をもらし妖精たちに見とれていた。

「…すごい」

それしか言葉が出なかった。

「では、仕事よろしくお願いします。私は急いで他の精霊たちの元に行ってくるので」

「へ?もう?1ヶ月間?」

「はい。予定が変更しました。ごめんなさい。急がなければなりません」

「あっ、えっと、気をつけてください」

「ありがとう」

ソフィアさんはふわりと笑って一瞬にして飛んで行った。

「かわいい……」

僕はしばらく動かないでいたがハッとしたように精霊樹から離れ森の散策に向かう。すると、妖精たちも着いてきた。

「なんか、変な生き物だなぁ。妖精一匹一匹には役割とかあるんだろうか。見たことない形もいるし、一瞬にして周りに増えた感じだ」

妖精とか信じてなかったからなぁ。いや、僕の世界にはいないと思うけど。それにしても黙ったままだ。喋らないのかな。口あるけど。

「そうだ。ステータス見てみよう」


【名前】紺本 紀(こんもと かなめ)

【種族】人間

【性別】女

【年齢】18

【属性】なし

【職業】なし

【レベル】45

【称号】暴食、〖水の森〗の管理者

【スキル】悪食lvMAX、突風lvMAX、光合成、聴覚lv2、脚力lvMAX、暗視、復活、ポイズン、万能薬、精神抑制、体力回復lv2、解毒剤、解呪lv2、酸耐性lv3、酸lv3、威圧耐性lv3、吸収、威圧lvMAX、結界lv3、隠密lv3、催眠lv3、怪力lv3、糸lv3、痛覚耐性lv2、嗅覚lv2、

【魔法】蒼龍


【HP】650772139701/650772139701

【MP】256877303/8967447001394

【攻撃力】30371004259

【防御力】39752072034

【魔力】256877303

【素早さ】75541079942

【運】307

【魅力】1


あ、魅力変わってる。あと魔力が増えてるのは多分あの魔族の魔力を奪ったせいかな?にしても少ない方だ。あの魔族は階級が魔将。もっと高いと思っていたが潜在能力は僕が上か?ソフィアさんがくれた称号は証かなんかなのか僕の左手首に記されている。では、暴食はどうだろうか。手足を見てみるがそのようなものはない。では見えないところ顔か?僕は1度湖に戻って顔を見る。変わりはない。いつもの僕だ。ていうか髪邪魔だな。いつも美容院行くの面倒いからくくってただけだけどさすがにこの世界では不便だな。切った方がいいか?いや、でも髪長くないと男と思われるみたいだし切らない方がいいかな。どうしよ。

「せめて髪ゴムがあればなぁ」

僕は立ち上がりまた森の中へ入っていった。

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