第10話 〖水の森〗の精霊が回復しましたっ
クマ、狼、ドラゴンを食べて僕のステータスは異常なまでに上がっているだろう。実際ステータス通知がうるさい。けれども確認なんてしなかった。
もういい。何もいらない。死なせて。
頭の中で僕はそんなことを考えていた。
もう食べたくない。食べたくない。僕に肉を見せるな。生き物を見せるな。魔力を見せるな。
大量の魔力を摂取したせいで『悪食』のスキルは想像より上がっているだろうし戦闘力を桁違いに変わっているだろう。実際、空腹で倒れそうになるし息をするように動物や魔物を食べている。僕の意識は薄れていくのに体だけはフラフラ歩いてスキル『突風』で遠くの魔物を捕え口に運んでいた。ずっと食べているのだろう。僕の口の中には色んな味が広がっている。吐き出したくても体が言うことを効かない。止めたくてもスキルを無意識に使っている。
ゆっくりとした足取りで僕はひらけた場所にたどり着く。そこは岩肌がむき出しになり洞窟が存在した。暗くてジメジメしている。
呼吸が荒い。体が熱い。今にも倒れそうだ。僕は洞窟の中へと入っていった。
洞窟はかなり奥行きがあり体を休めるのにちょうど良さそうだった。僕は自分の周りに『結界』を貼る。すると、さっきよりも体が熱く感じた。けれど構わず何重にも『結界』を貼る。そして、『隠密』で極限までに自分を薄め、『威圧』で誰も来させないようにした。そのまま僕は洞窟の奥で深い眠りに入った。
【名前】紺本 紀(こんもと かなめ)
【種族】人間
【性別】女
【年齢】18
【属性】なし
【職業】なし
【レベル】43
【称号】暴食
【スキル】悪食lvMAX、突風lvMAX、光合成、聴覚lv2、脚力lvMAX、暗視、復活、ポイズン、万能薬、精神抑制、体力回復lv2、解毒剤、解呪lv2、酸耐性lv3、酸lv3、威圧耐性lv3、吸収、威圧lv3、結界lv3、隠密lv3、催眠lv3、怪力lv3、糸lv3、痛覚耐性lv2、嗅覚lv2、
【魔法】蒼龍
【HP】650772139701/650772139701
【MP】-3546775111490/8967447001394
【攻撃力】29371034259
【防御力】34732072934
【魔力】魔力過剰使用
【素早さ】73541079942
【運】307
【魅力】0
〖水の森〗の精霊。少女はカナメが蒼龍を倒したおかげで自らの力を回復することが出来た。魔物も数が減り、〖水の森〗は以前の美しい森に戻りはじめていた。精霊は毎日のようにカナメを探した。しかし、カナメもかなり強力な『隠密』を使っているようで探すのに時間がかかった。
「あの子は蒼龍と戦って傷を負っているはず……なのにまだ魔力で自分を隠しているの?どこにそんな力があるのかしら。これは妖精達にも手伝ってもらわなければ」
少女は妖精たちの視覚を共有し広大な森を毎日探した。カナメがどこからどうやってこんな危険な森に迷い込んだのかわからないがあの存在は無視出来ない。
もし、力が暴れだしたら蒼龍と比べ物にならないくらいの災いが人の街に襲いかかることになる。
そうか考えた少女は焦りはじめる。その時1人の妖精が魔族を発見した。少女も気配で気づく。場所は遠くない。この魔力量だと上級魔族だろうか。属性は雷。まさか、カナメが目的?魔族の捕まる前に早く見つけなければ。しかし、全く気配がない。魔族も手こずっているようだ。ならと、少女は考えを変える。先に魔族を倒すことにした。今の力なら簡単に上級魔族を倒す事が出来る。
少女はすぐに魔族のところへ向かった。
「魔王様の言っていた小娘が見つからない」
体全体が黄緑の光に覆われその魔族は動物で言うライオンを模していた。他の魔物とは違い言葉を話す。下級魔族は知能が低く。野生動物と変わらないが上級魔族となれば多少知識を持ち魔力もそれなりに大きい。しかし、最大の欠点は知識が中途半端にあるので頭は悪く自尊心の塊でもあった。
その魔族の頭上に蒼光の矢が降り注ぐ。咄嗟に魔族は自分を帯電させ矢を消し飛ばす。
「誰だ…っ」
襲撃を受けると思っていなかったのか魔族は声をあげた。
「あなたは上級魔族ね。属性は見たとおり雷。私もなめられたものだわ。こんな弱いのを差し出してくるなんて」
魔族の背後に蒼色に輝き白銀の髪をなびかせた少女が姿を現す。
「弱い?弱いだと!?貴様この私を侮辱するつもりか」
「もうしたわよ」
呆れたように少女はため息をする。魔族はその態度に怒りを隠すこともなく内に秘めている魔力を膨張させた。パリパリと体の電気が音を出す。
「貴様ァ…!」
「まさかこの森を消すつもり?頭は悪くても魔力はかなり大きいし力も強い。そんなことされたら困るわね」
少女はゆっくりと右手を魔族に向ける。
──────────!
その瞬間音が消えた。森が青い光に包まれる。
「今、私は忙しいのよ。せっかく森が元気になりはじめてるのにあなたのような低脳でもこの森は傷つくのよ」
魔族がいた場所には片手で収まる水晶が落ちていた。ほのかに電気を帯びている。少女は自分の魔法で魔族を水晶に封印したのだ。
「あなたの魔力、少し利用させてもらうわ」
少女はその水晶を拾い懐にしまう。その時1人の妖精が何か見つけたようだった。
妖精のところに行ってみるとそこには魔物の死体が所々落ちている。
「あの子の仕業かしら」
しかし、魔物を一部をかじられたような後を残しているがその後拳や足で踏み潰されたような傷もある。最初何かわからなかったが少女は気づいた。
「まさか、魔物を食べるのに抵抗を感じているの?」
あんなにたくさん食べるのに食べるのを嫌がっている。彼女の能力なのか。はたまた呪いなのか。少女はカナメのスキルがわからなかった。
「とりあえずこの魔物達の死体を続いて行けばあの子がいるかもしれない」
少女は足を進めた。
「うそ!うそうそうそ!なんで精霊の力戻ってんの!?あーもう!楽な仕事と思って嬉しかったのに!めんどくさいことになったよ!」
魔族のエリは刺客として送ったライオンを通して精霊を見ていた。その自分の配下も倒され視界は消える。
「エリちゃん!」
「どうしたの……?」
エリの傍に同じようなサーモンピンクの髪をした男の子が2人。エリは男の子たちに笑顔を向ける。
「あー!ごめんね?大丈夫だよ!怖くないよ!ちょっと人間にムカついてただけだよ!」
「僕達がその人間殺す?」
「人間……嫌い」
同じような顔をした2人はエリと同様魔将である。エリの弟達だ。
「大丈夫!ゲイルとギエルは何もしなくていいよ!」
心配そうにエリを見つめる2人だが自然と笑顔になった。
エリは大量の上級魔族を〖水の森〗に行かせることにした。
少女は洞窟に辿り着く。だが、すぐに体が地面に崩れてしまう。
「なんて……威圧なの……。間違いない………あの子はこの中にいる」
少女は重い体を持ち上げるが立つだけで精一杯だ。
妖精達はその場に倒れて意識を失っている。
「こんなの……異常だわ」
少女は自分の体に魔法をかけ洞窟の中へ入った妖精たちはその場に残した。
「ジメジメして暗い………。それに寒い。何故こんなところにいるのかしら」
洞窟の奥に行けば行くほど力が強くなる。3日程かけてやっと居場所をつきとめたが保護するには時間がかかりそうだ。洞窟の中にも所々魔物の死体が落ちている。その魔物が異臭を放ち少女は顔をしかめた。
一層威圧が強くなる。顔をあげるとそこはもう洞窟は行き止まりだった。何もない。しかし、あと数メートルのところで少女は立ち止まる。
「あなたね。あの蒼龍を倒してくれたのは」
少女は何もない空間に呼びかける。
〖火の森〗ではレンがのんびりと食事をしていた。この森を人間から奪い今は管理をしている。〖火の森〗は他の森の中でも1番小さかった。森の中心である精霊樹は力を失いその精霊樹を囲むように城がそびえ建っている。
「やっほ」
レンは炎が激しく燃え上がる大きな檻に話しかけた。
「………あんた、私の前で堂々と食事して嫌味のつもりかい」
その檻の中には鎖で繋がれた紅の髪の少女がいた。
「うーん、そうだね」
適当に答えるレン。紅の少女はレンを睨みつけた。
「何故殺さない」
不思議に思った。自分たち精霊は魔族にとって邪魔な存在。殺した方が優位のはず。
「保留だよ」
レンは笑顔で返す。その口はまだモグモグとしていた。それだけ見ると可愛らしい。
「保留……だと?私たちは精霊が生きていればお前たち魔族には不利だろう?」
戸惑っている少女にレンはクスクスと笑った。
「なぁに?殺されたいの?」
少女は言葉に詰まる。魔王の中で1番強く何を考えているかわからない炎の魔王、レン。この存在が来てから少女は絶望し死を覚悟したがレンは少しずつ攻撃をし少女を弱らせたが殺すことはしなかった。
「でもね、オレにも考えがあるんだ。何も言わないで挨拶返してよ。ノア。」
ニコリとレンは笑う。しかし、目は笑っていない。少女、ノアと呼ばれた〖火の森〗の精霊は恐怖を感じた。
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