ボーナストラック2 美術の時間

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《鉛筆の滑る音》


[八葵]「……ねぇ、大真面目に鉛筆を滑らせてるキミや」


あなたの隣でデッサンをしていた八葵から声が掛かります。


[八葵]「もう描き終わっちゃって暇なのさ。暇だからキミの絵にイチャモンつけていい?」


[八葵]「……上手い。うーん、仲良しの色眼鏡を掛けた憶えはないんだけどなあ。……え、私のほうが上手い? ノンノン、別の味わいがあるのさ。トンカツもプリンも海鼠腸このわたも美味しいけど、同じ美味しさじゃないでしょ? そういうコト」


(「海鼠腸、最後に食べたのいつだっけ。どんな味だったっけなあ……」と呟く八葵)


[八葵]「ん? こいつ? こいつは練り消しで作った海鼠腸さ。再現度高いでしょ。あ、海鼠腸知らない? おじいちゃんのおつまみだから渋いところなのかな?」


(課題を進めるために視線をキャンバスに向けるあなた)


[八葵]「あ、そっか。キミも課題進めなきゃだもんね。ごめんごめん、邪魔になっちゃった」


《しばらく、鉛筆を滑らせる音》


[八葵]「……ふふ、物足りないって顔してるね。八葵ちゃんとのおしゃべりが恋しくなっちゃったのかな?」


[八葵]「あれ、無視かあ。……もしかして照れてる?  ……そしてコレも無視、と。そっかそっかあ。キミはそういうやつなんだなあ? なんて。……ほら、ちょこっと喋ろうよ。小声だと先生にバレないからさ。あの先生ずっと寝てるし」


[八葵]「じゃあ、明日発売! 新作ゲームの話を……あ、知ってる? 特番見た? ちぇ。知らないキミに教えるあの瞬間が堪らないのにな」


[八葵]「え、コレ? コレって、キャンバスの右下にいる子のこと? うん、キミだよ。真剣にスケッチしてて偉いなあ……って感心したから描きました。まあ判定はきっと落書きなんで、提出する頃には海鼠腸に飲み込まれて消えます。あまりにも無常。海鼠腸に溺れるなんて、なんと塩分過多なのか……。……まあ、キミが海鼠腸に飲み込まれたら、私が攫ってあげましょう。一本釣りの容量でね! だから安心せ……あ、先生。……うるさくしてすみませんでした……」




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