ボーナストラック1 あるデート
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夏も終わりのとある一日。
あなたは八葵と待ち合わせをしています。
[八葵(電話)]『あ、もしもし〜? もう着いた? そっか、そいじゃあ、私がどこにいるか分かるよね! ……んぇ? 見当たんない? へぇ〜、この八葵ちゃんを人混みから見つけられないと申すか。溢れ出る魅力? オーラ? 的なのが見えない感じと申すか』
[八葵]『シンボルかあ。え〜っとね……あ、そことか! のぼり旗の立ってるクレープ屋さん! そちらを見続ければ、いずれ八葵ちゃんが見つかるでしょう……』
(言われた通りにそちらを向くあなた)
[八葵]『ほらほら、そっち向いててね? ほら、ほ〜ら。すぐに八葵ちゃんが』
[八葵]『「見つかります」』
あなたの右耳からは音の揺れが。左耳には息がかかりました。
[八葵]「あっはははは! 反応おもしろ! やっぱりキミ耳弱い? いつか日焼け止め塗った時もそんな反応してたよね」
(振り返るあなた)
[八葵]「改めて。今日も可愛い八葵ちゃんです。どうだい? 実は私服を見るのは初めてだろう? どうだいどうだい? 私服らしい服で至福かい?」
(ずいずいと距離を詰め、あなたの周囲をくるくると回る八葵)
[八葵]「えぇ、反応が乙女すぎる。キミちょっと雰囲気に見合わない初々しさあるよね。……いや、悪いことじゃないよ。いい感じに萌ゆるギャップくんが鎮座してるだけ。豪華な椅子を誂えてあげなよ? その子は既に牙を剥いているからね。……何言ってるか分からないって? しばらくは分からないほうがいいなぁ」
[八葵]「にしても、見てよこの帽子、鍔広いでしょ。このワンピースも似合っていると思わないかい? ……まま、ちょうどクレープ屋さんがあるんだし、そこでクレープのひとつふたつでもつまみながら服の感想をくださいな。私からもキミの服の評価をしますので。安心しな、きっと悪い評価じゃないぜ?」
(「えへへ」と、屈託のない笑みを浮かべる八葵)
[八葵]「ほら、行こう? なぁに、恥ずかしがることはないさ。なんてったって、この八葵ちゃんと歩けるのだから!」
[八葵]「っふふ、今日はいっぱい楽しもうね! ま、キミといれば何でも楽しくなるか!」
[八葵]「何でもとは言ったものの、何でもかあ。……地獄とか巡っちゃう? 針山地獄の針スパとか、釜茹で地獄の熱々サウナとか。私のおじいちゃんが閻魔様の子孫のいとこの恩師の遠縁の親戚の子の知り合いでさ? ちょうど割引券が二枚手に入ってね──」
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