数キロメートルの帰路
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《コンビニの自動ドアの閉まる音》
《セミの鳴く音、二人の歩く音》
[八葵]「いやぁ〜コンビニ涼しすぎ! もうイートインで食べてかない? ……え? あ、それはそうかも! イートインで食べちゃったら体力補給できなくて帰り道で死んじゃうね! ▼やつきは めのまえが まっくらに ならなかった! なぜならアイスがあったから!」
《どこかの家の風鈴の音》
[八葵]「あっ! 風鈴の音! どこだどこだ〜? ……えっ? だって
[八葵]「誰が言ったって、し……兄様だけど?」
(「あは、あはは……」と零す八葵)
[八葵]「……いやいやいや! ちゃんと普段から兄様って呼んでますが? というか風鈴見つけたのに全然涼しくならない! ホーちゃん、気温チェックプリーズ! さっき見た時は37℃だったけど……? ……いや38℃! チクショー兄様! 純情な私を騙したなあ!」
《風鈴の音》
[八葵]「はは、風鈴が私を
(アイスを頬張り、しゃくしゃくと音を立てる八葵)
[八葵]「おや、傷心気味な八葵ちゃんに救いの手を差し伸べてくれるのかい、およよ……ええ子や、そのうち街から還元されるからねぇ……」
(年老いた声を模す八葵)
[八葵]「あ、そうだホーちゃん。キミあの小学校に通ってたってことはさ、“大食らいの百葉箱”の噂をご存知だよね? ……えぇ〜!? 知らない!? あの、百葉箱に給食で残した嫌いなものを入れたら勝手に食べてくれるっていう……私の小学校にもそれがあれば、どれだけ楽だったか……人参食べてくれたんだろうなあ……」
(アイスを咥えながら喋りにくそうに喋る八葵)
[八葵]「あ、じゃあじゃあ、“夕暮れ時のノッポさん”は? ……え!? これも知らない!? 2m弱あるおじさんが夕暮れ時の公園にいるっていう……あ、本当に知らない? キミもしかして、かな〜り世情に疎いタイプ?」
[八葵]「ならちょうど良し! 人伝に聞いた噂ばっかりだけど、キミが噂に疎いのなら、受け売りでもキミの新鮮そうな顔が拝めるってことさ! 噂に強い八葵ちゃんが、キミの知らない噂を説いてあげようじゃないか……」
~~~~~~
《川のせせらぎの音》
[八葵]「でねでね、日が沈む瞬間に保健室のベッドに潜ると……。……おっとと。大丈夫? って体温高! 水分摂って水分!」
《炭酸飲料のペットボトルを開ける音》
《渡された飲み物を流し込む音》
[八葵]「あっははは! 炭酸キツそ〜。……そうだ。私もだいぶ茹だってるから、これは行くしかないね!」
[八葵]「どこにって、綺麗な川に! ここ駆け下りるよ〜!」
《坂を駆け下りる音》
《河原から川に飛び込む音》
《水が大きく跳ねる音》
[八葵]「あっははは! ちょっ、冷たすぎ! 本当に夏の川最高すぎる! きもち〜!」
[八葵]「あー冷た! ねえねえ、こっちちょっと深いよ! 膝上まで浸かれぼぼぼぼぼ!」
《水をかけ合う音》
[八葵]「あっははははは! やったな! この〜! あはは! あははは! ……はぁ〜、疲れた!」
《川から川岸へ上がる音、服を搾る音》
[八葵]「あ〜……気持ちよかった! キミはどうだった? ……っへへへ、ならよかった!」
ふと、八葵の胸元に目を下ろします。
すると、中々ガッツリ透けていて。
[八葵]「えっ、何? これ着て? ……透けてる? ……あっ、あっははは……ごめん、うわあ、結構盛大に透けちゃってるね……」
学ランを貸そうとするあなた。
[八葵]「……これ借りてていい? 次会う時までに洗って返すからさ!」
(急いでボタンを止めたことにより、「あっ、掛け違えた」と呟く八葵)
《水を含んでガポガポと鳴るローファーのまま、川岸を歩いて橋のほうへと戻る音》
[八葵]「てか私が着たら学ランぶっかぶかだね。彼シャツ? 彼学ラン? ってやつ?」
[八葵]「よーし。そんじゃまた明後日! だったよね、古文の補習。その次は……あれ、もう次ないね。古文の補習が最後だった気がするから……」
《セミの鳴く音》
[八葵]「まあいいや! とりあえずまた
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