with八葵補習2限目
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《セミの鳴く音》
《ドアを開ける音》
[八葵]「よっす。補習2日目。よろしくね?」
(ドアの脇に隠れ、教室に入ったあなたの左耳元で囁く八葵)
[八葵]「ひゅわっ、て。ひゅわっ、て何さwww」
あなたは空いている学習机を探します。
あんまり離れすぎるのもアレなので、八葵のふたつ隣の席へと腰を下ろします。
[八葵]「えっ、なにその微妙な距離。せっかくなら隣に座ればいいのに。完璧美少女な八葵ちゃんの隣席。S席だよ? 今なら15000円がなんと0円だよ? めちゃお得。こいつぁ座らにゃ損損
《八葵が机を叩く音》
(八葵の右隣の席に座るあなた)
[八葵]「にしてもキミ、夏真っ盛りなのに学ラン着てて暑くないの? いや、似合ってるんだけどもさ。なんならこの部屋クーラー強いし、半袖の私は今凍えかけているわけで。……いや、気遣いはいらんよ。ちゃんとカーディガンを常備してありますから。なんたって、私は完璧美少女八葵ちゃんなので。用意周到の擬人化なのさ」
《あなたが鞄を探り、教材を探す音》
[八葵]「お、真面目に補習取りかかっちゃうタイプ? 偉いなあ、八葵ちゃんみたいに息抜いていいんだよ、ほらほら〜」
《ハンディファンが動き始める音》
持ち込んだミニサイズの扇風機は、青竹色のボブカットを悠々と靡かせます。
[八葵]「あ〜! クーラーの効いた部屋でカーディガン羽織りながらハンディファン! これがいちばん丁度いい! 快適かつ最適な気の抜きよう! キミもハンディファンは持ち歩いたほうがいいよ? あと日焼け止め。首元は急所。日に焼かれちゃ堪んないぜ? ……ま、私は問題ないけどね。くくってもないボブカットだし。暑いのはさておき、これがいちばん可愛く見えるからだけど。八葵ちゃんは完璧美少女なので、細かな魅力も掬いあげるのさ」
そう言われて、あなたは首筋に手を添えます。
日焼けしていて、少し痛みました。
[八葵]「日焼け止め貸してあげよっか? 今からでも遅くないよ。ほらほら、首元出しなって!」
《日焼け止めのキャップを取る音》
[八葵]「ほら、塗ったげる! その程よい長さの襟足を持ち上げぃ!」
(八葵の声が、あなたの左横から後ろへと移動する)
[八葵]「ほい、ちょいと冷たいぜ? ……あははは! キミ首も弱いんだね、可愛いじゃん!」
《日焼け止めを塗る音》
[八葵]「お客さん。痒いところはございませんか〜? ここですか? 赤くなってるここですか〜?」
(八葵の声が右耳にかかる)
《あなたが椅子から飛び上がる音》
[八葵]「あははは! そうだそうだ、耳も弱かったね、ごめんね! 赤くなってるのはお日様のせいかな? 八葵ちゃんのせいかな? ん〜?」
《日焼け止めのキャップをはめる音》
[八葵]「髪、結構伸びてるね。あと十数ヶ月伸ばしたら私と同じくらいになるかな? どうだろ、そんなに掛からない?」
(八葵の声が後ろから左隣へと移動する)
[八葵]「お、美容院予約しようとしてる? 偉いね、思い立ったが吉日だ。いつ凶日があるか分かんないから、思い立った日にやるのが正解正解! まあ八葵ちゃんと話してくれるなら、いつでも吉日にしてみせようぞ、ってね。完璧美少女はそこかしこに口が効くのだ。……ん? 何なに? 『井雲さんのオススメの髪型は?』……だって?」
[八葵]「私の好きな髪型ねぇ。……振り切った髪型はそれはそれで面白いし、普通の髪型もまあアリ。つまるところ、何でも好きなのさ。キミが髪型を変えるならね!」
《スマートフォンの電源ボタンを押す音》
[八葵]「おっと、携帯カメラは盛れないぜ? 私の井雲家伝統の手鏡を貸してあげようじゃないか」
[八葵]「どう? 素人目に見てもいい鏡でしょ。おばあちゃんの嫁入り道具なんですよねぇこいつ。私が受け継いだのさ、可愛いやつめ、うりうり」
(次第に息遣いが荒くなる八葵)
[八葵]「ハァハァ……そういえば、初めて美術の授業で一緒になった時のキミの髪型って、もしかしてパーマとか当ててた? 結構うねってたけど」
[八葵]「……うん、じゃあやっぱり寝ぐせか。っふふ、そっか。きちんと寝ぐせを整えられるようになったんだねぇ、えらいえらい。……いや、個人的にはうねりが落ち着いちゃってちょっと寂しいし、そもそもえらいのかな? そうでもないかも。付け上がるなよう?」
(げしげしとあなたの椅子に蹴りを入れる八葵)
[八葵]「そういえば、“井雲さん”は固いね。“八葵ちゃん”でいきましょう!」
(勉強へと戻る八葵)
[八葵]「……その頬杖つくのって、やっぱり癖だよね。……いや、別に悪いようには見えてないから安心せい! なんか、なんだっけ。……ニヒル? な雰囲気が出てていいと思うぜ。……さーて勉強勉強! 取り掛かるぞ〜!」
《セミの鳴く音でフェードアウト》
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