八葵ちゃんとの邂逅

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《ドアを開ける音》


[?]「お、キミで最後かな。2年1組が主催する、このデスゲームに参加するのは……」


(教室の中央から声が教壇へと近づく)


[?]「……なんて、冗談冗談。これは補習。というわけでおおよそゲーム! 大将! デスゲーム、デス抜きで一丁!」


(教壇からドア前、あなたの前へと声が近づく)


[?]「……え? 補習なんてサッカーで言うところのアディショナルタイムみたいなものでは。……ん? 言っておいてアレだけど、アディショナルタイムってなんだったかな……」


あなたと面識があるようでないような少女は、青竹色の髪を肩ほどまでの長さで携えています。


[?]「……あ、そっかそっか。そもそもアンタ誰って感じ? ならまずは自己紹介ですな。先生が今日二人しかいないって言ってたから、私たち以外来ないっぽいし。私の名前はねぇ……」


《鼻歌、チョークを引く音》


[?]「うーむ、これ邪魔! 化学ばけがくが何だってんだ! こちとら化学反応待ちだっての……!」


《チョークを引き終わる音》


[?]「ほい、じゃあレッツ音読! ……もう! スンってした顔で頬杖つかないの! レッツ! 音読!」


《黒板を叩く音》


[?]「私の名前は……井戸の『井』に……はい音読! 井戸の『井』に〜?」


[?]「うむ。じゃあ次! 雨雲の『雲』! 今日も高い空の下でもくもくと漂っているあの、でっかい雲!」


[?]「繋げて井雲いくも。ここまでが苗字ね。じゃあこっからがサビ! 私のファーストネームは……おや、思い出したかな? そうだね、キミなら私の名前を知ってるはずだから」


やっぱり、少女には見覚えがありました。


[?]「……ビンゴ! 1学期の選択授業の美術、デッサンのペアで一緒になった……そう! 八葵やつきちゃんです。数字の『八』にお花の『葵』って書いて八葵やつきね。苗字は井雲いくも、名前は八葵やつき


《チョークを黒板に引く音、再び》


[八葵やつき]「見てみて、これ私の似顔絵。似てるでしょ。……え、なんだって? あまりにも生首? 何か解説してくれそう? ええい、キミも描き足してやるからな。一緒に化学のアレコレを解説しようじゃないか。まあ、補習を受けるような奴らから解説できることは何もないがな、はっはっは!」


[八葵]「え? 補習はいいのかって? キミが来たから休憩休憩。ずっと根詰めてたら、そのうち根菜盛り合わせセットになっちゃうってもんですよ!」


[八葵]「よし、私描けた。……うん。やはりキミの似顔絵(デフォルメver.ばーじょん)も描くべきだねぇ。この黒板は余白が多いったら!」


三度みたび、チョークを引く音》


[八葵]「“余白は多ければ多いほどいい。なぜなら、多くを書き込めるからだ”。かの有名な八葵老師もそう言ってたでしょ? ……え? 何の補習か分からなくなっちゃった? それはそうかも、消しちゃったもんね。……あれ、何の補習だったっけ」


(黒板に近づくあなた。それに呼応して八葵の息が近くなる)


[八葵]「あ、書いてくれるの?」


《あなたがチョークを引く音》


[八葵]「……あっはははは! キミのっちゃくない!? 可愛い字書くんだ。……絵は結構大胆に書くタイプだった記憶があるけど、字はこんなに繊細なんだねぇ。……えぇと、そうだね、化学だったね。そっかそっか。……ねぇ、教科書貸してくんない? 可愛い八葵ちゃんのよしみでさ」


《鞄を探る音》


[八葵]「……え? 『僕が来るまで勉強してたんじゃないのか』って? えぇと、あは、あははは。勉強はしてたよ? これで。この、化学がテーマの漫画を読んで……あっちょっ、取り上げないで! 先生に見つかっちゃうでしょうがぁ!」




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