第14話 全裸で謁見
大魔王との戦いが終わり、この国の王さまと謁見する日がやってきた。
全裸で冒険を繰り広げたこの僕がだよ。本当にこのまま行っていいのかな。
それにしても、なんだか晴れ晴れしい気分だ。
戦いが終わったとき、まるで報酬といわんばかりに、僕にある特殊な才能がそなわった。
夢で出会った神さまのように、大事な部分が光り輝く能力だ。
これでもう堂々と歩ける。内股になって手で隠していた僕とはおさらばさ。
立派な城に到着し、謁見の間へと通される。
玉座に腰かける人物を見て、僕はいろいろと納得したよ。
なんと、この国の王さまは〝全裸の王さま〟だったんだ。
僕が言うのもなんだけど、せめてカボチャみたいなパンツはこうよ。
曲がりなりにも王さまなんだから、頼むから大事なところぐらい隠してくれ。
この国が異常……もとい裸に寛容な理由がようやくわかった。
王さまから感謝のしるしとして、記念の髪飾りが勇者たちに与えられる。
僕の脳内で、熱い冒険の記憶がめぐりだす。
瞬殺していった魔王たちの顔は思い浮かばなかったけど、さまざまな困難を乗り越え、いろいろな人たちに出会った。
全裸で魔獣を倒したり、全裸で竜の背に乗ったり、全裸で宇宙へ飛び出たり、とても楽しかったなぁ。
え? 記憶の改変? いったい何のことかな。
さて、次はいよいよ僕の番だ。
いやあ、絵になる場面だね。
全くもって素晴らしいエンディング。共に全裸であることを除けば。
でもまあ、それなりに感慨深いな。
これでようやく元の世界に戻れるんだ。
ちょっぴり寂しい気持ちはあるけれど、家に帰るまでが異世界転移だって校長先生が言ってたからね。
でも、いくら待てどもその時はやって来ない。
じつは、ちゃんと神さまと約束したわけではないんだ。僕が勝手にそう思っていただけ。
そうじゃないと、とてもやっていられなかったから。
……仕方ない。このままこの世界で暮らすことにするか。
なんだかんだ憧れの異世界だもの。それも悪くはないさ。
おちこんでたら体も冷えて来たので、お城の大浴場に向かいながらこの先のことを考える。
とりあえずこの国を離れ、服を一枚手に入れよう。
それからあらためてこの世界を旅してみようじゃないか。
うん、なんだかワクワクしてきたぞ。
さあ、新たなる冒険の始まりだ!
僕はそう気持ちを切り替え、お風呂場の扉を開けた――。
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