第9話 全裸で服探し

 たまに言われるんだよね。全裸でいるのは自分の意思だろって。

 とんでもない。僕は何度も服を手に入れようと努力したよ。

 でも、それらはことごとく失敗に終わったんだ。


 ぞんざいな勇者パーティといえど、僕にもおちんぎんを出してくれる。

 飴とかクッキーというかたちでね。

 それを物々交換でどうにかお金に換えて、街の服屋さんに行ってみたんだ。

 結果は案の定、おちん◯んを出しているって理由で追い出されてしまった。


 仕方がないから町外れにあるゴブリンの店まで足を延ばし、身振り手振りで交渉をした。

 すると何を思ったか、彼らは僕に幼虫や木の根っこを渡してきた。

 いやいや、そんなモノは食べないよ。君らの腰蓑が欲しいの。


 苦労の末になんとか伝わって、念願の衣服を手に入れることができた。

 でも、それが大失敗。

 所詮はゴブリンだからね。衛生面がひどくノミだらけで、あそこが大変なことになった。


 だからもう他人に頼るのはやめて、自分で作ることにしたよ。

 近くの森でそれっぽい葉っぱを集め、ツルを使ってまとめあげる。

 始めてのわりにはなかなかの出来栄え。

 無事に現実へ戻ったら、腰蓑ショップでも始めようかな。


 意気揚々と街に帰還したら、全裸勇者が服を着てるってみんな大騒ぎ。

 解釈違いだって意味不明の難癖をつけられ、あっという間に身包みを剥がされた。

 お前らは山賊か。人の心はないのか。


 諦めずにまた森へ行き、今度は仮面も作ったよ。

 これでもう、僕と気づかれることもあるまい。我ながら天才だ。


 それからどうにか宿へ戻り、久方ぶりに服を脱いでのお風呂さ。

 いやあ、ようやく人間に戻れた気分。

 さっぱりとして湯船から上がり、さて服を着ようかと思ったら、これが無くなってるんだよ。


 してやられた、と思ったら置き手紙がある。

 住み込みで働く妖精さんからみたいだ。

 なになに、新しい服をありがとうございます、だってさ。


 ……そっか、なら仕方ないな。

 君もボロ服を着て頑張っていたもんね。

 喜んでくれて、僕も嬉しいよ。

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