第8話 全裸で風の谷

 今回の魔王は、強風が吹きつける谷の奥地にいるらしい。

 魔王討伐も今回で四回目。僕もなかなか様になってきたかな。


 危険は少ないから完全に全裸で行けってさ。

 なんだよ、完全に全裸って。

 まあ、いつも全裸と言っておいて半裸だったからね。言いたいことはわかるさ。


 なりゆきでそうなっただけで、別にポリシーでもなんでもないんだけどね。

 なんて愚痴ったけど、風が強くてまったく聞こえてない。


 っていうか寒すぎ。雪山よりマシと考えていたけど甘かった。

 縮み上がりながら、歯を食いしばって突き進む。

 風が抜けていくたびに不気味な音が鳴り響き、ああ、僕って冒険してるんだなってしみじみ感じた。

 それも全裸でね。何してるんだいったい。


 向かい風の行軍は時間がかかり、いろんなことを考えたよ。

 僕はどうしてこの異世界に招かれたのか。

 ちゃんと元の世界に帰れるのか。

 この先、ほんとどうなっちゃうんだろうな……。


 ダメダメ、弱気になってどうする。

 大魔王を倒せば、きっと戻れるはずだ。

 そう強く信じたら、縮み上がっていたものが風で震えだしたよ。


 うん、いつの間にか隠すのを忘れていたんだ、すまない。

 魔王はそれを見てしまい、腹を抱えて笑い死んでいった。

 本当に申し訳ない。


 今回も立派な像が建った。以上だ。

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