第7話 全裸で農作業

 今回は戦いじゃなくて、人助けに行くんだって。

 勇者っていろいろやるんだね。

 なんでも、町外れの農地で収穫の手が不足してるみたい。

 いいじゃない、最近は異世界でも農業とかスローライフが流行ってるんでしょ。


 さすがに全裸だと他の人に迷惑がかかるから、今日は着せてくれるんだよね。

 ダメ? うん、そうだよね、いちおう聞いてみただけ。


 でもさあ、手を使うってことは隠せないってことだよ。コンプライアンスは大丈夫なのかい?

 今さら遅い? まあ、そうですよね。


 農具を使うのは危険だし、なるべくひとりで荷物運びをすることにしたよ。

 役立たず呼ばわりはしゃくだからね、やれることはやるさ。


 隅っこで作業していたら女の子がやってきて、どうして服を着ていないのか尋ねてきた。

 事情を説明すると、可哀想だから自分が作ってあげるって言うんだ。


 正直、泣きそうになったね。

 このダメな異世界にも、こんな優しくてまともな人がいるなんて。


 お願いしますって答えて、その後の作業はとにかく頑張った。

 危うく見えそうになるぐらい、彼女の親切に報いるために働いたよ。


 手伝いが終わり、お礼のご飯をご馳走になっていたら、さっきの女の子がやってきた。

 もう出来たのかい? と尋ねたら、はいと笑顔で手渡してきた。


 受け取ったら見えちゃうだろと周囲に突っ込まれて、みんなで大笑い。

 地面に置いてもらい、ありがたく頂いたよ。


 その日の帰り道は、まるで羽が生えたようだった。


 わあい、全裸に麦わら帽子ー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る