第11話 全裸の夢

 全裸での異世界も慣れてきた。

 慣れちゃダメなんだけど慣れてきた。

 相変わらず人前では羞恥心がひどいが、ひとりなら気楽なものさ。


 全裸でお風呂に入り、全裸で就寝。

 こういう人は少なからずいるだろう。

 え、君は服を着てお風呂に入るのかい? 変わってるなあ。


 そんなわけで、気持ちのいいシーツで今夜もぐっすり寝れそうだ。

 ふぁーあ、今日も疲れた。おやすみなさい。


 ……。

 …………。

 ………………。

 あれ、ここはどこだろう?

 ふわふわとして不思議な世界だ。


 ほっぺたをつねっても痛くないな。

 もしかして夢のなか?


 よくみたら全裸だ。

 とうとう夢でまで全裸になってしまったか。


 目の前に神々しい光がある。

 そのお姿を見て、確信したよ。

 僕をこの異世界に招いたのはあなただな?

 全裸の神よ。


 眩しくて大事なところは見えない。

 これが全裸のちから……。


 気づけばひざまずいてお祈りしていた。

 どうか僕を元の世界に戻してください。


 すると神は言ったよ。

 全裸を極めよ、と。

 そして次々にありがたいお言葉が、僕のなかに流れ込んできた。


 人は誰しも裸で生まれる。

 それなのに、裸を恥ずべきものとするなんておかしくはないか。

 みな服の中身は全裸である。

 恥ずかしいなどと考えるほうが恥ずかしい。


 僕のなかでパッカーンと何かが弾けた。

 そのまま両手を広げ、飛び出していった。


 不意に悲鳴で目が覚める。

 なんと、いつの間にか起きていたみたいだ。


 お情けで泊めてもらっていた宿から、とうとう追い出されてしまった。

 明日から野宿となります。

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