変化

第8話

2024年9月5日。

日付が変わった瞬間に、全人類が声を聞いた。


《世界は変化しました。これから現れるダンジョンに入ることによって、人類は力を得ることが出来ます。ただし、100日以内にある条件を達成しなければ、ダンジョンからモンスターが溢れ、人類は滅亡します。ダンジョンを攻略してください。》




…夜寝てたら、いきなり目が覚めた。

声が聞こえてきた。

ダンジョンに居た時に聞こえた声だ。

無機質な女性の声。




大地震の翌日、ダンジョンが出現した。

いきなり、世界中の色々なところに、扉が現れた。

どれもデザインは共通している。

木製で、アンティーク風。暗い色で、蔦をモチーフとしたような模様。

普通のドアに見えるが、どうやっても壊すことが出来ない。


そのドアを開けると、中には、黒だけが広がっている。

そこに入ると、ダンジョンに行けるのだ。



ダンジョンに入ると、ゲームのようにステータスが付与される。

程度の差はあれど、皆、身体能力等の向上が見られた。


人によってその値は違い、ステータスが付与されると同時にスキルを得るものも居た。


火を出したり、身体能力が劇的に上がったり…いずれも、科学で説明できない、「超能力」としか形容が出来ないようなものだった。


そして、ダンジョンの中に居るモンスター。

それを倒すと、レベルが上がる。

レベルが上がると、更なる能力の向上が見られた。

スキルも、使っているとレベルが上がることもあるらしい。




…俺はウィンドウを消して、パソコンを閉じた。


声が聞こえた後、出現したというダンジョンを探しに行くか迷ったんだが、1度寝て元気になってから活動した方が良いだろうと、2度寝した。


早く寝たから、6時に目が覚めた。

スマホは壊れてしまったから、パソコンで情報を検索していたのだ。


ちなみに、今日に日付が変わった瞬間(何故か日本時間で)に、全世界で、全ての人間が起きていて、あの声を聞いたらしい。

寝ていた者は目が覚めたみたいだ。

聞こえた声の言語は、聞く者の母語によって違った。

だが、全て同じ意味だった。


その内容を受けて、世界中が大混乱。

情報は錯綜していた。

中には、C国がウイルスをバラまいて、集団催眠を起こしてるんじゃないか、みたいなことを言ってるやつも居た。


自分の部屋を出て、階段を降り、リビングに向かう。


母さんと父さんは、既に隣り合って席に着き、朝食を食べていた。

声を掛ける。


「おはよう」

「おはよう」

「おはよう。怜、昨日、ダンジョンがなんとか、みたいな声聞いたか?」

「え、うん、聞こえたよ。夢かなって思ってたけど。」


一応、ダンジョンのことはまだ何も知らない、というフリをする。

母さんの向かいの席に座り、バターと蜂蜜が乗った食パンを口に運ぶ。


「あれね、母さん達も聞こえたのよ。なんかニュース見たら、皆聞いたらしくて、言ってたことも本当みたい」

「え?どういうこと?」

「ニュース見てみろ」


どの局も、ダンジョンのことについて報道していた。

ニュースには、俺が調べたことと大体同じことが報道されていた。


「どうなるのかしらねえ」

「まあ、政府とかがなんとかしてくれるんじゃないか」

「そうだねぇ」


ご飯を食べ終えると、2人は出勤の用意を始めた。

こんなことになっても、働かないといけないらしい。

学校は、非常事態ということで休校になった。


世界は変化した。

食器を流しに運んで、人を駄目にするクッションに座った俺は、これからの方針を考えていた。

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