第3話

少しの間、混乱と、興奮とでボーッとしてしまっていた。すぐに、今の状況を思い出した


「とにかく、外に出られる道を探さないと」


ここが何なのかは分からない。さっき聞こえた声も、ステータスとやらも。

だが、早くここから出て、地上に戻らないと、死ぬのは確かだ。


「とりあえず、歩いてみるか……」


迷ったが、クラ〇カを信じて、右の方の道を行くことにした。大分前に読んだからちゃんと覚えてないけど。


そうして、光源も見当たらないのに何故か明るい通路を歩いていると、程なくして突き当たりが見えて、左右に道が伸びていた。


「迷路みたいだ……」


と呟きながらも、とりあえず右に行こう、と頭をそちらに向けると。


そこには、生き物がいた。


生き物といっても、普通じゃない。テレビとかで見るようなやつじゃない。

半透明で、丸くて、目とか口とかが無くて…RPGの最初の敵として出てくるようなやつ。


そう、それはスライムだった。


といっても、ゲームとかでしか見た事がないし、その生き物が何なのかなんて断定はできないが、そうとしか形容ができなかった。


驚いて固まっていると、いきなりそいつは吹っ飛んできた!


「いってぇ」


腹がクソ痛い。おもいっきり成人男性にぶん殴られたみたいに感じる。経験はないけれど。


スライムは、俺の腹から跳ね返って、地面に落ち、少し転がると、また俺の方に向かってくるような動作をした。


「やばい…」


俺は走って、もと来た道を戻っていく。

混乱はしているが、なんとか動くことができたのは、もう既に非現実的なことが起こり過ぎて、テンションがおかしくなってたからだろうか。


帰宅部の、運動不足の体を気合いで動かす。

こういう時に、いつも、運動部に入っとけば良かったと思う。


とか、そんな悠長なことを考えてる余裕はない。


「あっちの方が速い!」


少しづつだが、さっきの衝突によって空いた距離が縮まっている。このままだと追いつかれる。


とっさに振り返り、スライムに向かって持っていた鞄を投げた。

あいつは、鞄に気を取られ、敵だと勘違いしたのか、体当たりをしている。


「よし…!」


その間に距離を引き離したが、数瞬の後、また追ってくる。


どうする?このままだと結局追いつかれる。


あんな意味わからん奴に殺されて、こんなとこで死ぬとかふざけんな!

何かないか?

なにか…


そうだ!さっきの洞窟に戻って、やり過ごせないか?


あいつは、鞄を敵だと勘違いして、俺を追ってくるのを辞めた。もしかすると目が悪いのか、知能が低いのかもしれない。


あの洞窟の中なら薄暗いし、広い。何とかなるかもしれない。


俺は、近づいてきた穴に向かって、大急ぎで入り込んだ。


後ろからスライムに攻撃されることは無かった。良かった。さっき鞄で距離を稼いだおかげだ。


俺は、できるだけ音を立てないようにしながらも、急いで、入口から反対側の壁へ向かって移動する。


…俺が洞窟に入ってからすぐ、あいつが入ってくるのが見えた。

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