第6話 「楽しい市場にでかけよう!」
■マイハウス
朝の陽ざしが窓辺から入ってきたのを感じた私はゆっくり起き上がる。
枕が涙で濡れていたことに気づき、顔が赤くなった。
寝間着にも代えることなく、そのまま寝てしまったのでローブや服がシワシワになってます。
「このままじゃ、市場にいけないし、みんなの前にも出れないよね」
服をアイテムスロットに戻して、他の衣装に切り替えました。
今日は市場で販売するので、丸い襟元で、胸元に軽くフリルがあしらわれたコットン製のブラウスにオリーブグリーンのロングスカートを合わせた村娘風衣装に着替えます。
アイテムを選ぶだけで着替えられるのは便利な反面、味気なさもあった。
よしっと、自分の頬を両手でたたくと、私は部屋から出てダイニングに向かう。
「おはよう?」
「おはよう、マスター」
ドアを少し開き、様子を伺うように声をかけてみるとフェンが笑顔で私を迎えてくれました。
昨日の夜に起きたサスケへの態度と違い優しい雰囲気があり、ほっとする。
「朝ご飯を食べたいな……何かある?」
「パンとソーセージエッグ、コーンスープなら、すぐできる」
「じゃあ、それでお願いね。フェン」
私はフェンに頼んでから、まずは併設されている工房へ足を向けた。
工房ではポーションの自動生産が終わり、出来上がったものをガイウスが倉庫へ入れている。
「ガイウス、素材の在庫は大丈夫?」
「おはよう、お嬢。そうだなぁ。いったんは打ち止めだな。使う材料にスライム液とかあるだろ? お嬢がこれから作る滋養強壮剤に使うから止めとかないとそっち分が回せなくなりそうだ」
「そっか、それじゃあ仕方ないね……朝食をフェンに頼んだから、まだなら一緒にたべましょ」
「おう、あとで行くぜ」
ぼりぼりと頭を掻いて答えたガイウスは朝食のお誘いをすると笑顔でサムズアップをしてきました。
下町工房のおやじさんみたいな雰囲気で、ブライアンさんに誘われた通り、鍛冶なんかも仕事として増やすのもいいかもしれないと考える。
「サスケは……」
「主様、拙者はここに……」
サスケを探そうとしたら、目の前にシュタッと音を立てて降りてきた。
もう忍者。
忍者としかいえない。
私がサスケって名前を付けたからなんだろうか? このあたりのキャラ付けについてはよくわからなかった。
「朝ごはん、一緒に食べよう」
「はっ!」
サスケとガイウスを連れてダイニングに戻るとフェンが料理を並べていました。
洋風スタイルの朝食メニューなのはゲーム内のアイテムだからね。
「「「いただきます!」」」
ダイニングテーブルに着くと私たちは手を合わせてご飯を食べ始める。
異世界二日目ですが、こうして誰かとテーブルを囲んでご飯を食べるのはちょっと楽しい気分になってきた。
「マスター、市場に出かけるのは昼食頃だな?」
「この世界の食生活も知りたいし、その頃に行ってお昼を済ませてから売り出ししたいかなって思っているよ」
「荷物は俺が運ぶからお嬢はたくさん作ってくれや!」
「ありがとう、ガイウス」
「オレも今度は一緒にいくからな……マイハウスの守りは昨日の狼たちにやらせる」
「そうなの?」
「話は出発前につけておくから安心してくれ」
「フェンがそういうのなら、任せるね」
話もまとまり、食後のコーヒーを飲んだら工房で滋養強壮薬の作成作業をはじめる。
いいものを作って、ラヴィル村の皆さんに喜んでもらうんだ!
◇ ◇ ◇
ガイウスの用意した荷車に滋養強壮剤を生成できた100本ほど乗せた私は人の姿になったフェンとガイウスと共にラヴィル村へ向かう。
サスケは今日もひっそりとついて来てくれるようなので、みんなでお出かけとなった。
ゲームでは獣姿のままでぞろぞろ歩いていたけど、この世界じゃそうはいかないよね。
しばらく移動すると、にぎやかい村の入口へたどり着く。
中央の広場には野菜や果物、肉、魚、パンなどを売っている露店が並んでいた。
あの広場の一角で私のお店も出せるんだね。
ちょっとワクワクしてくるっ!
「ええっと、私の場所は……」
「おい、こっちこっち。今日は俺の隣だ。知っている人間がいたほうが最初はいいだろ?」
「ブライアンさん! 助かります! ガイウス、フェン、こっちこっち」
手を振ってくるブライランさんに従って、私は荷車を露店の場所まで引っ張ってもらった。
「ガイウスって兄さんは昨日みたが、こっちの兄さんはリオのコレか?」
ブライアンさんは初めてみるフェンと私を見比べて、親指を立てて『恋人』のサインを作る。
なんで、異世界でもこのサインが通じるんだと私の顔は真っ赤になった。
「まぁ……そんなところだ」
フェンはフンと勝ち誇ったように鼻を鳴らして私の肩を抱き寄せる。
ますます誤解されるから、やめてほしいんだけど……特にここ市場だから人が見ているよぉ~!?
「ブライアンさん、私とフェンは、まだそんな関係じゃないですから!」
「まだってぇことは、兄さん脈あるね」
「当たり前だ……俺ほどリオを思っている奴はいない」
否定しているものの言葉の選び方が悪いのか悪乗りが止まらない状況になっていった。
どうにも止まらないんだけど、どうしたらいいの!?
頭から湯気が出てパニックになりそうなところに大きな手が頭に乗って撫でてくる。
「お嬢、落ち着け。ほら、ブライアンにこれを渡すっていってただろ」
空いている手でガイウスが滋養強壮剤を渡してきた。
それを受け取ったことで落ち着いた私はブライアンさんにお近づきの印と滋養強壮剤を贈る。
「昨日お世話になったお礼も兼ねて、滋養強壮剤です。よかったらどうぞ。あ、ご飯買ってくるね」
私はブライアンさんからのお礼も待たずにその場を去った。
だって、その場にい続けても弄られそうだったんだもの……。
私は悪くないよね?
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