第4話 「私のポーション何かやっちゃいました?」


〈鑑定〉


 エミリーさんがそう唱え、私の作ったポーションの出来具合を見てます。

 鑑定のスキル持ちだから、あれだけ自信をもっていたんだなぁ……。


「これは……なんという高純度なポーションなの!」


 エミリーさんが驚いた表情で立ち上がり、手が震えてはじめていた。

 今日持ってきたポーションはToFで生産できる初級のヒールポーションなんだけれど……なんなら、マイハウスの自動生産機能で作り出せるものなのに……。


「私のヒールポーションは何かおかしいとこがありましたでしょうか?」

 

 恐る恐る私がエミリーさんに尋ねると、エミリーさんは咳払い一つとって、私に視線を向け直しました。


「あなた、独学って言いましたがこれはどんな材料を使いましたか? 器具は? 詳しく教えなさい!」


 私に詰め寄ってきたエミリーさんの目は血走っています。

 どうしようかとたじろいでいると、村長さんが助け船をだしてくれました。

 

「エミリーや、客人が困っているじゃろう。目的である腕も分かったのであれば無茶をいうでない」

「そうだぜ、エミリー先生。リオのことがわかったならいいじゃねぇか」

 

 ブライアンさんも私に詰め寄ってくるエミリーさんを止めてくれます。

 取り押さえられたエミリーさんは落ち着きを取り戻して、私に向き直りました。


「ごめんなさい、取り乱したわ。あなたの作るポーションがすごくいいものだったからついね」

「い、いえ、わかってくれたのであれば大丈夫です」

 

 ほっと息をついて落ち着いた私はエミリーさんと握手をし直します。

 無事に解決したのであれば、次の話題に移ろう。


「それで、明日市場を開かれるということであれば私の薬もだしてもいいでしょうか?」

「ああ、そういう話じゃったな。ワシからは問題ないと思うが……エミリーはどうじゃ?」

「私の方も大丈夫です。リオさんがヒールポーションなどのポーション系を出されるなら、ものをかえないと負けてしまいますね」


 諦めたように苦笑を浮かべたエミリーさんが市場の内容を考え直しはじめました。

 譲ってくれたようなので、まずは一安心です。

 

「それなら、今日はお近づきの印にこちらのポーションは村長さんにお渡しいたします。それと必要なポーションの種類などありましたら、教えていただければ用意いたします」


 私は村長さんにヒアリングをはじめました。

 営業の仕事をしていた時の癖で、何かを売り込むときには顧客の要望をヒアリングする癖があります。


「そうじゃなぁ、この村では怪我もそこそこあるのじゃが肉体労働が多いので疲れが取れるものがあったらいいんじゃがなぁ……」

「なるほど、疲労回復や滋養強壮のものがいいんですね」

 

 私は村長さんの言葉をメモを取り、作成するポーションを探す。

 スライム液とリポの葉、アリナの実を混ぜればできるようだった。


「そんなものも作れるの?」

「はい……多分、ですが……」

 

 エミリーさんが怪訝そうに私を見て来たので、遠慮がちに答えます。

 あまりにできると言い張りすぎるとあまりよくない気配がしたからだ。


「では、明日の準備のために失礼いたします。市場参加の許可ありがとうございました」

「おう、嬢ちゃんはまたな」


 ブライアンさんに見送られながら、私は村長さんの家をでてガイウスと合流する。


「ガイウス、荷車はいったん持ち帰って。私は周辺の森で素材の採集をしてから帰るわ」

「お嬢一人で大丈夫か?」

「多分、サスケも見てくれていると思うから大丈夫よ」


 わかったと、静かに言ったガイウスは遊んでいた子供たちと離れ、荷車を引いて一緒に村を出た。


■エヴァ―グリーンの森

 

 深緑の中で深呼吸をするときれいな空気が胸いっぱいに広がる。

 私の生きていた世界は緑が少なったので、この気持ちよさはちょっと嬉しかった。


「さぁ、探しましょう!」


 この世界にあるかどうかを確認するためにも、散策することは重要だった。

 普通の村人が探し回れるくらいだから、危険度は少ないと思うが念のためにメイスは握っておく。

 剣などの武器もあるけれど、私にはメイスくらいシンプルなものが丁度良かった。

 家でGを潰すときの要領で振るえばいいだけなので、気楽です。


「あれはリポの木かな?」

 

 私は森の中を歩き一つの木を見つけました。

 触れてみると『リポの木』と表示されます。


「この世界でも植物の名前は同じということなのかな……それならば、アイテムが作れる可能性があがるわ」


 私はウキウキワクワクしながら、周囲の散策と薬草採取を続けるのでした。


 

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