第3話 「お局様に目を付けられたっぽい」
■エヴァ―グリーンの森
森の中をガイウスが荷車を引き、私はその上に乗りながら村まで移動していた。
左手には大きな湖が見え、湖に沿いながら森の中にある道を進んでいる。
「お嬢、揺れは大丈夫かい?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
ガイウスが振り返って、私に尋ねるが居心地は悪くなかった。
荷車がゲーム内アイテムだということもあるのかもしれない。
森は獣やモンスターもいる様子はなく、なんなく村のほうまでたどり着いた。
「見かけない顔だが、こんな辺鄙なところまでどうしたんだい?」
「向こう岸の方に住むことになりました薬師のリオといいます」
「その荷車にあるのは薬かな?」
興味深そうに村人が荷車を覗いてくる。
第一村人とは友好的な遭遇ができたようでほっとした。
「はい、いろいろともってきています。村の中まで案内してもらっていいですか?」
「何もない村だけど、ゆっくりしていってくれ……ああ、私はこの村で鍛冶師をやっているブライアンだ。そっちの男は私と同じ鍛冶師か?」
「オレは……リオの護衛だな」
「確かに、その体なら頼れるな。鍛冶に興味があれば教えてやるよ」
ガイウスの体つきが気に入ったのか、ブライアンさんはガイウスの体をバシバシとたたきつつ村へ案内してくれる。
私は二人の後ろからゆっくり歩いてついていくことにした。
■ラヴィル村
案内された村はラヴィル村といい、水車小屋が村の端にありガッタンゴットンと動いている。
村の中央には広場があり、子供たちが駆け回っていた。
広場を囲うように木製の家が並んでおり、その数は200くらいだろう。
「中央の広場は何かされてるんですか?」
「今日は何もやってないが、明日は週に1度の市場の日で、釣った魚や私は包丁を売ったりするよ」
「そうなんですね。私も持ってきた薬は明日の市場で売った方がいいですかね?」
「それについては、村長に聞いてみてもいいんじゃないか? 村長の家に案内するよ」
ブライアンさんに案内されて、村の中にある大きな家へとたどりついた。
ガイウスは一緒に来ようとしていたけれど、子供たちと遊んでいる姿が楽しそうだったので、今は私とブライアンさんだけである。
「村長、村の外から薬師の方が来てるよ」
「おお、そうか……ちょうど今、村の薬師であるエミリーも来ているところだ」
ブライアンさんが村長の家に入ると、リビングのような部屋では老年の男性のそばに中年女性座っていた。
薬師のエリーという方なのだろう。
私は頭を軽く下げて自己紹介をはじめた。
「私は新しくこの森の方に住まわせてもらうことになりましたリオといいます。薬師をしています。よろしくお願いいたします」
仕事で営業していた時のような緊張感を私は感じている。
すでに取引先には契約中のライバル社がいる状態なのだ。
緊張するなという方が難しい……。
「この村で薬師をしているエミリーといいます。若い薬師ですから、見習いでしょうか? 先生はどちらの?」
エミリーさんからの言葉にトゲを感じた。
ブライアンさんも同様のものを感じたのか、あちゃーといった表情になっている。
私の仕事先にもいたお局様タイプの方であることを理解した。
とはいうものの、できることならうまく共存したいけど、どうしようか……。
だって、下手にぶつかったりしたらガイウスやフェンがエミリーさんをどうにかしてしまいそうだ。
「ええっと……本を読んで独学で学びました」
結局、私はうそをつくことができずに独学で学んだことにする。
ゲームの職業としてスキルを上げていったのも独学でいいよね?
「そう……それじゃあ、どの程度の実力なのか見せてもらいましょうか」
「わかりました、こちらをどうぞ……」
私はガイウスが持ってきていたポーションの1つを見本用にあずかっていたので、それをリビングのテーブルに置くのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます