第34話 原作者、準備する

「さて、話を聞かせてもらうわよ。

 その前に自己紹介ね! 私はファルル、見ての通りエルフの血が混ざっているわ」


 夜は酒場、昼は飯屋みたいな店に腰をおろして早速説明を求められた。


 いつものようにチートの説明と今後の方針を伝える。

「つまり、あなたの気に食わない奴らを殺して歩くって事ね」


「間違ってはいないんだけど、別に俺は殺したい訳じゃないんだ」


「私はデカナールが手に入るならなんでも構わないわよ! あ、でも戦闘は全然弱いから毒作るくらいしか協力出来ないわよ」

 割とイカれた奴だった。


「あ、うん、基本的には回復用のポーション作ってもらいたいんだけど、まずは離脱草かな」

 離脱草、瞬時に戦闘から離脱できる不思議な草。


 その場から移動するわけじゃないから、全力で逃げないとすぐまた戦闘に突入してしまう。

 ゲームじゃ意味なくてまったく使わなかったけど、リアルなら保険で持っておきたい。


「材料が無いわよ」

「それはこれから取りに行くから大丈夫」


 材料は全部ここのダンジョンにあるから問題ない。


 ーダンジョン内ー

 この島のダンジョンは珍しく屋外型だ。

 ワイバーンとか居るんだからそりゃそうだよなってなるけど。


 今までと違って上からの攻撃にも注意しないといけないので、どうしても探索のペースは落ちる。


「あ、いたいた、レッサードラゴンの群れだ」

 このダンジョンで一番弱い集団がこいつらだ。


 レッサーでもドラゴンはドラゴン。

 ブレスこそ吐かないが、充分強い。


 なのでこのダンジョンは島の人間からもほぼ放置されている。


 ここで手に入る素材は破格の値段で売れるのでたまに命知らずや一攫千金目当ての輩が来るくらいで、基本的に誰もいない。


 まぁ、そのせいで氾濫するんだけど。


「あそこに呪魂玉を投げれば良いのね」

「うん頼む、ゴマちゃんあそこに魔法ぶっ放してね」


 呪魂玉は死体を吸収してアンデッドを生み出すアイテムだ。

 それは誰が殺しても問題ないので、手っ取り早くゴマちゃんのマップ兵器こと極大魔法でさっさと死体を量産していく。

 そうやって生み出されたアンデッド達は呪魂玉の特性を継承する。


 呪魂玉はフィーとリンクしてるので、呪魂玉から出せるモンスターはフィーが召喚出来るモンスターだけだ。

 そして、呪魂玉の特徴を継承したアンデッド達は周辺の死体を取り込み自身と同じモンスターを生み出す。

 自己増殖するアンデッドになる


 敵を倒し自己増殖するアンデッドを生み出すアイテムを唯一作れるのがフィーだ。

 彼女がスタンピードを起こす事が出来た理由だ。


 その取り込んだ相手が強ければ強いほど同じスケルトンでもレベルが高くなるし、一度に生成される数も多くなる。

 そして、生成されるモンスターのレベルが高いと……。


「スケルトンがスパルトイに存在進化したわ!」

 こうなる。

 何度目かのレッサードラゴンへの襲撃でフィーが声を張り上げた。


「これでスパルトイを召喚出来るようになったな!」

「ええ!」

 フィーが召喚出来るモンスターしか出せない呪魂玉。

 逆に呪魂玉から生成されたモンスターが本来フィーが召喚出来ない進化後のモンスターになると、その辻褄を合わせるかのようにフィーがそのモンスターを召喚出来るようになる。


 ここに来た二つ目の目的、フィーの強化だ。

 強いモンスターと戦った方がモンスターは進化しやすいのだ!

 進化するとステータス的に進化前の十倍になる。


 このフィーの強化も裏設定みたいなもんだが、すでに熱心な解析班と言われるユーザー達に暴露されてるネタだ。

 だから、絶対あると思ってた。

「サンドマンもデスクラウドになったわ!」

「よし! もう一段階上げるぞ!」


 フィールド型ダンジョンをどんどん突き進んでいく。


 ワイバーンは空を飛んでいるので対処が大変なので、バジリスクの生息地域の方に行く。

 屋外なので、オシロスコープを使えば簡単にここではこういう調整が出来てしまう。

 これもこのダンジョンを選んだ理由。


「アンデッドの数も結構増えたし、こっちは放っておいても大丈夫そうだね」


 単純な肉体的強さだけならレッサードラゴンもバジリスクも変わらない。

 特殊能力の石化分だけバジリスクの方がモンスターの格は上だけど、アンデッドには石化は効かない。


 なので、経験値が美味しいレッサードラゴン扱いなのだ。


 あとはこのまま放置しておけば、勝手に増えて、勝手に進化して行くはず。

 とはいえ、次のギズモとボーンドラゴンで進化は終了なんだけど、そこまで行けばステータスだけでも初期の百倍、ついでに特殊能力付きになる。

 


「じゃあ、本命の離脱草の材料取りに行こうか」

 離脱草の材料、レッサーじゃないドラゴンの羽と、なぜかここにだけ生えている黒いバナナ、通称戦闘系バナナの葉っぱ。


 流石にちょっとは気合い入れた方がいいかな?


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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