第33話 原作者、試す
「今度はどこに行くの」
「南の島のダイオウハ」
その名も偉大なカメハメ波!
昔そういうネタがあって、それをふと思い出して提出した名前案があっさり編集で通った。
小説の挿絵で地図載せることになって、その時ふざけて名付けただけの島だ。
本編には一切出てこない。
「そこに何があるの?」
「あ、うん、ちょっとしたアイテムと隠しヒロインとスタンピード起こすダンジョン」
ゲーム版になった途端、重要性爆上がりだ。
「スタンピードは起きない事になったんじゃないの?」
「それが事情が変わってしまったんだよなぁ」
チュートリアルがスタンピードで襲ってきたモンスターを制圧するって内容なんだよな。
通常はフィーが製作した呪魂玉で生成されたスケルトンと戦う。
しかしフィーが仲間になっている時は別のスタンピードが起きるのだ。
チュートリアルのために。
その時の敵のモンスターはスケルトンじゃなくて、ドラゴン、ワイバーン、バジリスク。
気を抜けばチュートリアルで全滅させられるという、制作者側の『小説版のヒロインなんか仲間にしやがって』という悪意が見える内容になってる。
「そこでは何をする予定なんだ?」
「色々試してみたい事があるから、それを順番にやっていく感じかな」
「まずは何をするんじゃ?」
「フィー、二個ほど呪魂玉作ってくれる?」
「オカリ草がないわ」
「あ。それは俺が確保しておいた」
実はオカリ草はそこら中に生えてる。
擬態してるから分からないだけで、俺のアナライズを使えば集めるのは造作もない。
「うん、それなら三日貰えば作れるわ」
「三日かかるかー、じゃあ、他の事済ましてしまおうかな」
ダイオウハの入り口、港町ハマハに到着した。
早速、港の一角で路地売りをしてる場所に行く。
島に来た人達からぼったく……観光地価格で販売する非公認で店を出してる人達だ。
その隅の方で、ゴザに薬草らしき物を置いて売っている一人の少女に近づく。
みすぼらしい外套を羽織っているが、その外見は紛れもない美少女だ。
緑色の髪、緑色の目、少しだけ尖った耳。
彼女はエルフの血がまざっている。
「頼みがある、離脱草を作ってほしい」
「どうして、私が作れるって知ってるの!」
彼女は驚きと警戒が混ざった目で俺を見つめた。
「説明すると長くなる……あ、そうだ」
ついでだし、裏設定が有効かどうか試してみようかな。
「俺は物知りでな、デカナールの入手方法も知ってる」
「ふう……」
彼女は無造作に敷いていたゴザを商品ごと丸めてしまった。
「今日の商売はおしまい!」
これは失敗したかな?
「デカナールの話と離脱草の話、じっくり聞かせてもらうわ」
これは成功した?
「仲間になってもらえないと詳しく話せないんだけど」
「良いわ、仲間にでもなんでもなるから、デカナールの話教えてちょうだい」
裏設定有効そうだなこれ。
隠しヒロインは彼女ともう一人居るが、俺が編集に言われて設定を考えて提出したキャラだ。
何故、原作者が表のオリジナルじゃ無くて裏の隠しヒロインのキャラ設定しかさせてもらえなかったのかは、はなはだ疑問だが、どうせ隠し設定なんだからと好きに設定させてもらった。
二人ともあるものに固執するタイプにした。
彼女の方は、女性的なものを象徴するある部分はペッタンコなのだ。
それが強烈なコンプレックスになっている。
そんな彼女のコンプレックスを解消する薬がデカナール。
天空城に設置してある交換所に置いてある薬で、ゲームではデカナール入手後に彼女と会うと仲間になるという設定だった。
なので、ゲームでは天空城確保後にしか仲間にならない。
ただ、俺が書いた設定集ではデカナールの単語が聞ければすぐ飛びつくって書いた。
ここがゲーム的にはアイテムを持ってるがフラグになるようになったようだ。
だからリアルになった今ならば、デカナールという単語が出れば仲間になるかもと思って試してみたら、本当になった。
どうやらこの世界は、ゲーム設定とコミカライズ設定だけじゃ無く、ゲーム化する時に提出した設定集も採用されているらしい。
これは、たとえゲーム主人公が本当にプレイヤーだったとしても出し抜けるかもしれない。
公開されてない設定集の情報なんて俺くらいしか持ってないだろうからな。
【後書き】
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この作品はカクヨムコン参加作品です。
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