第24話 原作者、本当に気付く。

 ギッノに着いた。

 街の中をまっすぐ歩いて反対側にある小高い丘を目指す。


「ん?」

「どうしたの?」


「あ、いやぁ、今すれ違った二人組、ちょっと知ってる人に似てた気がして……そんな事ないよな」

「それもヒロイン枠なの?」


「うーん、ヒロインって言えばヒロイン?」

「随分歯切れが悪いな」


「見間違いだろうから、気にしなくて良いよ」

 さすがにそんなはず無い。


 うん……無い……はず。


「ちょ、ちょっとどうしたの急に早足になって」

「あ、あぁ、ごめん、気が急いてしまって」


「では、急ごうか! ダイ殿はいつも私達の事を考えてくれているしな!

 たまには私たちがダイ殿に合わせてもよかろう」

「そうね、そうしましょう」

「僕も自分で歩くむぅ」

 みんな良い子だ。

 ちょっとジーンってした。


 そして、ココアって僕っ子だったんだ。

 そんな設定した記憶ないけど、似合ってるから良いか。


 全員で小高い丘にきた。

 そこには、イハトにあったラグビーボールのような形の石柱がある。


 あるよな、あれよ!


『アナライズ』

『石の壁です』

 いやいやいや。


『アナライズ』

『岩の壁です』

 それは無いって。


『アナライズ』

『なんの変哲んもない壁です』

 ここは無くっちゃ困るんだって!


『アナライズ』『アナライズ』『アナライズ』『アナライズ』

『しつこいなぁ!無いもんは無いんだよ!』


 またスキルに怒られた。

 スキルに人格なんて無いから、俺が勝手に脳内でそうイメージしただけだけど。


「何かあったの?」

「天空城が無かった…」


「え! 何があったんだ? 大丈夫なのか?」

「あ、うん、理由は分かってる……ただ、その現実を受け入れられないでいるだけ……」


「どういう事なの?」

「俺……この世界の主人公じゃ……無かった」


 この世界はコミカライズの世界じゃ無かった……。

 コミカライズが上手くいき、アニメ化をした。


 この時言われたのが、どうせワンシーズンで続きなんて出ないだろうから、コミカライズ版の一章と最新の三章をうまく繋げて詰め込みましょう。


 だった。


 まぁまぁ酷い事言われてるが、アニメ化する事自体が奇跡に近いので、言われた事は全て受け入れた。

 そして、トントン拍子でゲーム化もされた。


 このゲーム、良くありがちな原作とは全く関係ないオリジナル主人公が出てくるタイプのやつだった。


 一応、原作者の俺と編集者、ゲームクリエイターでの制作会議らしきものを行ったんだけど……。


 その内容はタイトルとキャストの名前が同じな別のナニカだった。

 勿論、揉めに揉めて、喧嘩して罵倒して、結局編集者に宥められて、説得されて了承したんだけど……。


 あの、クリエイター野郎、ゲームで主人公側を敵対勢力にしやがった。


 物語の主人公とゲームの主人公がヒロインと天空城を獲得し合い、一定の時期が来たら強引な理由で決戦するって内容のゲーム。


 そして、この世界において本当の主人公は向こう。

 俺は主人公だった者。


 考えてみれば、あの時気づけたんだよな……。

 この街で冒険者登録した時、テンプレ騒動は俺じゃ無く別の人に起きてた。


 本当の主人公に。


 さっき見かけた女の子はゲームオリジナルのヒロインだ。

 間違いない、ここはゲーム世界。


 そして、時間はかなり経過してしまっている。


「みんな、話……いや、お願いがある、俺がこの世界で生き残る協力をしてくれ」


 覚悟を入れ直さないとな。

 この世界はゲームクリエーターの殺意に溢れている。


 それでも生き残ってやる。

 原作者の意地に誓って。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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