第14話 原作者、チャレンジする。

「よし! そうと決まったらすぐ出よう!」

「え! ちょっとまって! 私何も用意してないわよ!」


「このまま居たらどうせ奴隷にされて全部失うんだから一緒一緒!」

「いやよ! まだ奴隷になってないんだから! 必要最低限のものは持ってこさせてよ!」


「うーん、分かった。

 ……三十分あれば良いか?」


「寝言は寝てから言ってちょうだい、ニ時間後に馬車乗り場で落ちあうわよ」

「えぇぇ、ニ時間もぉ」

 時間潰すの苦手なんだよなぁ。


「嫌ならこの話無かった事にするわよ!」

「しょうがないなぁ、それで良いよ。

 あ、でもその前にカウンターで指名依頼の完了報告だけしてしまおう」


「その金はどうするの? 返せば良い?」

「好きに使って良いよ稼ごうと思えば、どうにでもなるから大丈夫」

「えーっとじゃあ、ココアちゃんの好物教えて」

「肉だね。

 質より量で用意した方が良いよ」

「こんな可愛いのに、肉食なのね。

 ちょっと意外だわ」

 食べる姿を見たら、もっと驚くと思うよ。


 依頼の完了報告をして貰って、俺はギルドに手数料を支払う。

 

「じゃあ、2時間後ね」

「ああ、待ってる」


「……貴方私の事、疑わないのね」

「どうせ、味方になる相手だからな、疑う必要もない。

 それに君がどうしてこんな事したかも、これから何をしたいかも知ってる。

 そっちも可能な限り協力するから心配すんな」

 全部俺が考えた事だしな!


「……不思議ね、本当に全部知ってるって私も思っちゃってる。

 荒唐無稽で絶対信じちゃいけないタイプの話のはずなのに」

 そう言ってクスクス笑ってから、準備のために別れた。


 主人公の俺の事を信じちゃうし、裏切れないし、好感持っちゃう。

 コレがヒロイン補正ってやつだな。


 ニ時間暇だなぁ、どうしよっかな……。

 ……チャレンジしてみるかぁ。




 俺は今、とある墓の前のいる。


 俺には戦闘力がない。

 そりゃもうビックリするくらい。

 ゴブリンとタイマンはっても負けるよねってくらい弱い。


 物語の都合でそうしたけど、自分が当事者なら話は別だ。

 それで二章のパワーアップイベントをもうやっちゃおうって事ですはい。


 ただ、このアイテムってフィーが仲間になってから、フィーが持ってたんだよな。

 もう仲間になってるし、俺が持つタイミングが無い気もしないでもない。


 で、ここは伝説の死霊術師『ヤナデネ』の墓場だ。

 ヤナデネの副葬品を盗掘しよう!

 っていうイベントなんだけど。


 最初は伝説のテイマーにしようかな思ったんだけど、なんか最近最強のなんとかテイムしてとか多いし、かといってなんか居ないとダレるしなぁと色々考えた結果。


 ナンデヤネン……じゃなかったヤナデネの遺産『魑魅の腕輪』読み方は『ちみ』じゃないよ『すだま』だよ。

 この腕輪を使うと、S級モンスター『モチッコレイス』を1体使役する事が出来る。


 はい! 皆さんご一緒に! ナンデヤネン!


 この辺でキャッチーな可愛いキャラ欲しかったんだ!

 イラスト映え考えたかったんだ!


 モチッコレイスはその名の通り、白くてモチモチしててフヨフヨ浮いてて、「モチー」って鳴くぬいぐるみサイズの可愛さ特化されたレイス。


 あ、S級なんでちゃんと強いよ。


 で、これを取りに行くんだけど……。


 俺若干なんだけど、暗所と閉所の恐怖症持ってるっぽいんだよねぇ。

 あ、いや、他の人よりそういう場所がちょっと怖いだけで、決してビビリじゃないよ。

 ……ホントだよ。


 死体が安置されてて、元死霊術師の墓な訳ですよ。

 しかも地下室になっててこれが結構広い。


 ここで副葬品を手に入れるルールが1つ。

 決して声を出してはならない。


 有り体に言えばお化け屋敷回だったわけですよ、原作じゃ!

 リアルアンデッドが脅かしに来るダンジョンなんですよここわ!


 なんでこんな設定にしちゃったんだろうなぁ、誰だよ夏はホラーとか決めたやつ。

 たまたま投稿時期が夏だったら入れ込んじゃったじゃんか。


 やめときゃ良かったなぁ。


 嘆いていてもしょうがない、自分の口を手で塞いで突入する事にした。


 ー一時間半後ー


 無理だ、俺には無理だぁ!

 何度も失敗して、その度に入り口に戻って入りなおす事6回、しっかりきっちり俺の心は折れた。

 分かっててもいきなりゾンビが上から落ちてきたら声出るわ!


 諦めて一旦馬車乗り場まで移動する事にする。


 あれ? 二時間って言ったのにもう来てるや。

「ごめん待った?」


「ううん、今来たところ」

 あ、なんかデートっぽいな。


「今後の呼び方なんだけど、君のことだってすぐ分からないように、ゼムフィラのフィの部分取って、フィーって呼んで良い?」


「構わないわよ、私はなんて呼べばいい?」


「……ダイ」

 俺はダイとして生きていかないとな。

 少しだけ、寂しい気持ちになった。


「分かったわ」

「じゃあ、行こっか」


 フィーを墓場に連れて行く。

「えぇ?どういう事?」

「死霊術師だし、アンデッドとか怖くないでしょ」


 ー一時間後ー

「結構時間かかったね」

「ダイのバカァ! 私だって女の子なのよ!」


「いや、俺も頑張ったんだけどどうにも出来なくて、やっぱり適材適所って必要じゃない?

 それに、そのアイテムはフィーにあげるし」


「う……もう! 今度からはちゃんと説明してよね!」

 早速呼び出したモチッコレイスを侍らせながら、割とご満悦に見えるのは俺の気のせいか?


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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