第13話 原作者、交渉する。
ー2日後ー
冒険者ギルドに併設されている酒場兼食堂で、俺は少し遅めの昼食をとっていた。
「ここ良いかしら?」
「はいどうぞ」
美女だが、身体中や顔にまで殴られた様な紫色の痣の有る女性が俺の目の前に座る。
「で、指名依頼はうけてくれるのか?」
「貴方はどこまで知っているの? あまりにも私に都合の良い依頼なんだけど」
「そこは運良くたまたまラッキーってノリで受けてくれないのか?」
「残念だけど、そこまで私はバカじゃねないわ」
だよねー。
「転生って信じるか?」
「そういう現象があるのは知ってるわ、どういう原理か知らないけど特殊な能力に目覚めるらしいのよね。
チートって言ったかしら?」
「そうそれ!」
「あなたがそれなの?」
「そう、俺は知識系のチートなんだ! だから色々知ってる」
原作者だしな。
「例えば?」
「君の本当の姿は金髪碧眼で色白だろ?」
やばい空気変わった。
あ、目から殺意が漏れてる!
「待て! 待て! 俺は味方になりたいんだ! そういう怖い顔はやめてくれ!」
「色々質問しても良いかしら?」
「あぁ、構わないぞ」
「なぜ、味方にしたいの?」
「それは君がヒロイン枠だから」
「ヒロイン枠?」
「あぁ、この世界には頼れる仲間になってくれるヒロイン枠を持った存在が居るんだ。
その1人が君なんだ」
「それは貴方のチートで分かる事なの?」
「あぁ、そうだ!」
「貴方は私にどうして欲しいの?」
「今計画してる事を放り出して、関わってる奴と縁を切って一緒に逃げて欲しい」
「私が何をしようか知ってる口ぶりね……オカリ草の話を持ち出してくるくらいだから、知ってるんでしょう?」
「あぁ、知ってる。
それだけじゃ無いぞ、その後どうなるかまで知ってるぞ」
「どうなるの?」
「君達の計画は失敗するんだ」
「私の製作は完璧よ!」
「あー違う違う! 君のアイテムは完成してちゃんと機能するが、その後驚くほどあっさりと解決するんだ」
「どういう事?」
「仲間にならないと詳しい事はここでは言えないが、ある力が働くと思ってくれ」
万が一全部バラして、じゃあ貴方が死ねば解決ねとか思われたらマズいから、俺が解決したとは言わない。
「分かったわ、でもそれで失敗したのは私では無いわ」
「そうなんだが、あいつ等はそうは考えない。
あまりにも早くに事件が解決するせいで、倉庫に眠ってるものはそのまま売れずに残ってしまう。
問題が解決するどころか、色々かけた分すら回収出来ないで終わる。
その責任を全て君に押し付けようとするんだ。
あいつは奴隷商もやってるから君を奴隷に落として、さらに今回の騒動で防ぎきれずに壊滅してしまった村民達も奴隷として買い上げ、君と一緒に知り合いの貴族に売りつける。
その時、村が壊滅した原因は君のアイテムだってバラすんだよ。
そして同じ奴隷に責められ続けるんだ。
そんな状態で、罪の意識に苛まれながら、奴隷のために抵抗できず、ずっと悪の死霊術師をし続ける事になる。
泣きながらね」
「まるで見てきたように話すのね」
そりゃ、ヒロインにしたくて無理矢理作った強引なシナリオだもの、事細かく覚えてるよ。
「そういう能力だからな」
流石にこの話作ったの俺だとは言えない。
それだと俺が神様かなんかだと誤解されるだろうし、この時点で原作改変してるからこの先わからない事もどんどん出て来るだろうしね。
何よりも、どうして辛い目にあう事になったかを、この子に言うほどの勇気がない。
そんな酷い事考えたの俺ですって言えない。
ある程度、未来を知れる能力くらいに思ってもらった方が無難だ。
「それでもし私が貴方の話を断ったらどうなるの?」
「どうもしないよ、どうせ後々俺の仲間になるし、君が酷い目に遭ってから仲間になるか、あわないで仲間になるかの違いだけだ。
俺としては酷い目に遭うと分かってるのに放置したく無かっただけだ」
心がちょっと痛い。
酷い設定考えてゴメン。
彼女は目を瞑り長考した。
「むぅ?ここはどこだむ?お腹空いたむぅ」
ずっと俺の背中でフードを被っておぶさっていた為リュックにしか見えなかったココアが目を覚ました。
正確に言うと、そっと俺が揺り起こした。
「こ、この子は何?」
カッ! と目を見開きフィーがココアを見つめた。
「君と同じヒロイン枠で俺の仲間さ」
「分かったわ、あなたの仲間になるわ」
フィーが即決した。
フィーは無類のモフモフ好き。
本編でもココアは大のお気に入りなのだ。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品はカクヨムコン参加作品です。
カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。
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よろしくお願いします。
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