第9話 原作者、初めてダンジョンに向かう

「あ、そうだ! 食料買って行こう」

 ダンジョンに入る前に食料品店に向かった。


 店の店主は明らかにココアを見て嫌な顔をしたが気にしない。


 ココアは食料品店に来てから、さらに眠りが深くなったようだ。


 鼻が人一倍きくココアにとって、食料の匂いは一番眠りを邪魔する匂いだ。


 だが現実的には食べ物は全くと言って手に入らない。

 今までも野草や木の皮などを食べていたはず。


 ココアにとって眠ることは体力を温存することと、自分へのダメージを回復する重要な行動だ。

 それを阻害する匂いである、食料の匂いを感じると、あえて眠りが深くなるようになったんだと思う。

 だから、この店に来ても起きない。


 ……俺の設定したものが、こんな風に反映されると思っていなかった。

 罪悪感に打ちひしがれてしまう。


 俺は自分の罪悪感を紛らわす為にありったけの食料を買った。


 あ、それと抱っこ紐。

 こいつクッソ重てぇ!


 ーダンジョ内ー

 しばらく歩くと、ココアがもぞもぞしてうっすら目を覚ます。

「むぅ? あの辺か変な臭いがするむー」

 言われた通り獣化したまま抱かれている、ココアが指をさす。


 寝てるといっても完全に熟睡してるのじゃなく、極力体力を温存する為の形態なので、ちゃんと嗅覚や聴覚のセンサーは働かせてくれている。


 燃費の悪さは、随一だからなこの娘。


「何かあるのかな? 『アナライズ』」

 

 『ロックリザード』


 ロックリザードが潜伏していたようだ。


 ポコンって脳内で音がして、名前が出てきた。

 もう一回アナライズをすれば詳細もわかるんだろうけど、そこまでする必要無いか。 


 このダンジョンの特徴だが、どのモンスターも岩のような身体をしていて、それが迷彩になる。


 その為非常に見つけにくいし、奇襲を受けやすい。

 そのせいで五感が鋭い獣人しかこのダンジョンでうまく探索できない。

 獣人達が気軽にダンジョン攻略を許可するのも、どうせ人間じゃたいした成果出せないと思ってる部分もある。


「ココア、ロックリザード居るみたいなんだけど倒せる?」

「食べて良いむぅ?」


 ……あ、食べるんだ


「お、おう」

「いっただきまーす!」


 ココアが獣化したまま俺の胸から飛び出した。

 そして、そのまま。


 ブチッ!ボリッ!ボリッ!モギュ!モギュ!


 あっれー? なんか想像してた戦闘と違うー。


 壁から、ポロッと魔石と爪が落ちた。


「むう?」

 ココアがおもむろにそれを手に取ると、ポリポリと食べだした。


「え! ココア! こんなもんまで食べるの!?」


「冬とか草も余り無い時期は石とか土も食べてたむー。

 それよりは食べやすいむ」


 そう言いながら、ロックリザードの爪を食べ切ってしまった。


 尋常じゃ無い大食漢に設定したココアの胃袋を満足させるどころか、最低限の状態で維持するのですら、大量に何かを摂取しなければならなかったんだな。


 気軽にココアの大食漢を設定なんて、しなければよかった。

 やり過ぎた! 反省してる。

 せめてもの償いにこれからは、この子に沢山美味しいものを食べさせてあげたい。


「ココアこの調子で変な事あったら教えてな」

「分かったむー! それくらいなら寝ながらでもできるむーむにゃむー」


 スペックは高いんだよなぁこの子。

 盛りに盛ったせいでバランスブレイカーになりかねないから、良く寝るって設定をほぼ寝るって設定に変えたくらいだしな。


 その後も順調にダンジョンを攻略していく。


 若干スプラッタな食事風景が続いた気もするが、間違いなく順調だ。


 3階降りる毎にモンスターが変わり、今はロックゴーレムの階まできた。

 ロックゴーレムは生物じゃ無いから、リザードみたいに臭いで判別は不可能だと思う。


 どうするのかなって思ったら、ココアは反響音でロックゴーレムが潜伏してる場所を見つけた。

 俺の足音の反響音らしいのだが、そもそも俺は自分の足音が認識できてない。

 ほぼコウモリに近い能力じゃなかろうか。


 そういえば、そんなシーン書いたな。

 そのシーンの能力が反映されてるのか。


 食事風景はスプラッタじゃなくなったけど、ゴリッ! ボリッ! って凄い音がしてる。


 あ、あとドロップ品は食べないようにしてもらった。


「確かこの辺だったはずなんだよなぁ」

 このダンジョン、九階まで設定したせいで詳細な中身にするのを怠った。

 めんどくさかったし、そこまでしなくてもって思ってたし。


 でも、そのせいで隠し部屋の詳細な位置がわからなくなっていた。


「ココア、ココア、この辺に隠し部屋があるはずなんだけど、ちょっと探してくれないか?」


「むにゃ、分かったむー! むむぅぅぅ」

 ココアが自分の声の反響を聞く。


「あっちに違和感むー」

 言われた方向に移動する。


「むぅぅぅん」

 遠吠えに近い感じで声を出す。


「あそこむー! おやすみなさいだむー」

 ココアが教えてくれた壁に行くとちゃんと隠し部屋があった。


 ……あ、俺オシロスコープ、もう使えるんだった。

 アナライズと双璧をなす、探索系のチートスキル

 あれで探せばすぐだよ、いくらチートなスキルでも使わなきゃ意味ないな。

 気をつけよう。


 この隠し部屋には身体強化のスキルブックがある。


 これで、ココアを抱っこするのが少し楽になるはずだ。


 あとはボス倒してこのダンジョンも終了だなぁ。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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