第8話 原作者、獣人村に入る。

「ぐおぉぉぉ、身体がバッキバキだぁ!」


 無事獣人村に到着した。


 ダンジョンの許可は驚くほど簡単にもらえた。

 放置しておけば勝手に利益になるもの持ってきてくれるんだから、当然といえば当然なんだけどね。

 理屈じゃない感情的な部分で拒否されなくてよかったよ。


 そして、今は村の中の見学をさせてもらってる。

 もちろん、ヒロイン枠のココアに会うための方便だ。


 案内の話を無視してサクサク奥の方に歩く。

 なんか、そっちには何も無いとか、そっちに行くなとか聞こえるけど、華麗にスルーした。


 少し歩くと、獣人の子供たちが何かを全力で蹴ってる。


「え! ちょっと、お前たちなにしてるんだ! やめろ! やめんか!」

 そう言って追い払った場所には丸くて小さい女の子がクークーと寝息を立てて寝ていた。


 完全に外で熟睡してた。


「寝てるんかい!」

 俺の声にも反応せずにグッスリだ。


 この絶賛惰眠貪り中の女の子が異界獣人のコアラ獣人ココアだ。


 めちゃくちゃ設定頑張ったよ!

 カチンときたから!

 ありきたりですねとか、ちゃんと考えてます? とか、カチンときたから!

 大事な事だから二度言うよ!


 異界獣人は元になった獣の優秀な部分を強く引き継ぐから、通常の獣人より何倍も強いって事にした。


なのでココアはコアラの特徴をかなり極端な形で受け継いでる。


 毒に強い。

 どんなに傷ついても死んでなきゃ寝れば治る。

 防御力が高い。

 視力は良くないけど夜目がきく。

 嗅覚と聴力は高い。

 こんな感じなのに足が早くてパワーも強い。

 そしてビックリ手先が器用。


 これにフィジカル強化というチート能力も持ってる。


 単純な殴り合いだったら、ココアに勝てるやついないんじゃ無いだろうか?


 ということで、このままじゃ主人公交代になりかねないので、コアラっぽい欠点も持ち合わせてみた。


 寝る、ひたすら寝る、暇さえあったら寝る、あと信じられないくらい大食漢。

 

 それでも、ココアって130cmくらいしか無いし見た目と相まって、完全なマスコット枠としてなかなかの人気キャラだった。


「ココア! 起きろ! ココア!」

 やっぱり起きないか。

 俺は袋から干し肉を取り出してココアの鼻先に持っていく。


 本物のコアラと違って、この子は好き嫌いなく何でも食べる。

 大量に……。


「美味しい匂いがするむー」

 原作でもココアを起こす定番は食べ物を鼻先に置くだからな。


 ちなみに話す時に語尾に『む』がつくのが特徴。


「起きたか? その干し肉は食べて良いから、俺と一緒に行動してほしい」

「いっぱい食べても怒らないむぅ?」


「ああ、問題ない!」

 よな? 多分?


「じゃあ一緒に行くむー!」

「一応、親御さんに許可もらいに行こうか?」


「それは大丈夫だむー!

 だいぶ前にお前なんか死んでしまえって外に追い出されたむー」

 ……え、そんな設定知らないぞ。

 原作ではスタンピードで親が死んでいる。

 スタンピードが起きていない時は、親にも迫害されていたのか。


 俺はありったけの干し肉を出した。

「全部食べていいぞ!」

「本当に全部食べていいむぅ?」

 俺は強く頷いた。


「やったむー! 幸せだむー!」

 すっごい嬉しそうに干し肉を食べている。

 やばい、目が潤んできた。


 なんか、よく分かんないけど、なんか……ごめんな。

 こんな設定にして。


「よし、一緒にダンジョン行くか!」

「……眠くなってきたむー」


「あぁぁ! 待て! ココア! 獣化しろ! 寝るなら獣化してから寝ろ!」

「……分かったむー……獣化するむー……むーむにゃむー」


 獣化、獣人の戦闘形態の一つである。

 より獣に近くなり獣の特徴が増す。


 つまり、ココアが獣化すると、ただのコアラが昼寝してる状態になる。

 この状態になれば、抱っこして運びやすい。


 よし! 目的は達した!

 あとはダンジョン攻略するだけだ。


 小手調べにここのダンジョンをササっと攻略してしまおう。

 ココアがいれば、何の心配もない。


 ここのダンジョンはロックリザード、ロックバイパー、ストーンゴーレムが出る。

 ドロップ品がリザードが通常品は爪、レアは尻尾。

 バイパーが通常が牙、レアが皮。

 ゴーレムが通常が黒曜石、レアはガドリン石。

 ガソリン石は錬金術師が泣いて喜ぶ触媒に使われる石だ。


 これは三階づつで全部で九階、十階にボスのアイアンゴーレムがいる。


「さてと、ダンジョン攻略してしまおうかな」

 どうみてもコアラなココアを抱っこしながら、俺は一人で宣言した。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る