第7話 原作者、森に入る。
目的の女の子の居る場所は白狼の獣人が森の奥に作ったフエン村だ。
なんで白狼なのかって?
そりゃ、白狼の獣人ヒロインにしたかったからだよ。
編集に『ありきたり過ぎますねぇ、なんかもっとインパクトあるの出来ませんか?』
とか、言われてクッソー思いながら捻り出した設定が『異界獣人』
この世界では獣人として異世界転生した者は記憶を取り戻せない。
そして、この世界には存在しない有袋類の獣人として産まれてくる。
そんな者たちを『異界獣人』と言って、通常の獣人と区別する。
親の特徴を一切受け継がず、完全に別種の獣人として。
もちろん異世界転生特有のチート能力はしっかり持っている。
ただ、獣人は自分の元になった動物が同種だと結束が強くなるが、全く別物だと差別や迫害の対象になる。
その為成人まで生き残る人数は少ない。
コアラ獣人のココアは、その類稀なるフィジカルと空前絶後の胃袋で成人になるまで生き残った娘である。
という事で、獣人類最強の女の子を仲間にしに行こう。
イハトで馬車に乗る。
もちろん隠れ里みたいになってる場所に行く馬車なんてないから、途中で降りる事を御者に伝えて近くを通る馬車に乗る。
資金はたっぷりあるから、途中下車でも安くならないと言われても気にならない。
「あ! ここで降りますー」
森の入り口で止めてもらった。
さて、ここからが大変だ。
なんせ本編で詳しい村への行き方なんて書いてないからね、どうなってるかさっぱりだったりする。
とりあえず大きな木探してみよう。
不自然に大きな木が目印だ。
しばらく街道を歩きながら木を探す。
「あれだな」
明らかに不自然に大きいもんね。
その木まで近づいていく。
「うーんどうしよう?」
木まで来たら何とかなるだろうって思ったら、何ともならんかった。
あの時と状況違うからなぁ、小説版二章でもコミカライズ版一章でもスタンピード後の復興の手伝いで冒険者ギルドから依頼受けて行く場所だから。
特に描写なく村に着いちゃうんだよね。
そのイベントを阻止しする為に会いにいくんだから、本末転倒も甚だしい。
どうしよう。
……
……
……
あ! そうだ! 唯一村に通う商人がいた!
森の向こう側に小さな人間の村があるはずだ! そこ行こう!。
さっきの馬車に乗ってたら問題なく到着してた事実はこの際目をつぶろう。
ややしばらく歩いて、馬車で降りたのと反対側の森の入り口まで来た。
「や、やっと……着いた」
この森こんなに広かったのか……そういえばそんな設定した気もするわ。
めちゃくちゃキツかった。
ステータスと疲労とかは完全に直結してない気がする。
戦闘みたいな瞬発的な行動ではちゃんと反映されているけど、歩いたり、長時間労働するのはまた別の要素が絡んでるじゃなかろうか。
もちろんそんな所まで設定してないので、この世界が勝手に補完したんだろうな。
とりあえず、村に入って近くにいる人に声をかける。
「グラバーさんの店に行きたいんだけど、どっちかな?」
「おーそれなら、そこ左に曲がって突き当たりだ」
この村の商人グラバーさんは、行商人から買ったものを村人に、村人から買ったものを行商人にという感じで、仲介人みたいなスタンスで商売してる人だ。
村人が直接取引するのも全然自由にさせてるが、そういう奴らはしっかりチェックしていて、消耗品とかが品切れで自分所に来た時は、きっちり値上げして売ってる。
もちろん、行商人相手でも、その行商人が村人に直接売ればその価格より安く売るよう交渉するし、買い取りしてれば、その価格より高くじゃないと自分の商品は売らない。
結構、したたかな商人だ。
そして、その強気な商売ができる理由の1つが、獣人族の村に買い付けに行ったり、物を売ったりしているからだ。
原作では、復興のために獣人の村に行ってる時に会って仲良くなるんだけど、ここは逆に仲良くなって獣人の村まで連れて行ってもらう作戦だ!
「こんにちわー」
「ん? 見かけない顔だね」
「冒険者やってるんですが、獣人村のダンジョン挑戦したいんで、紹介してくれませんか?」
「……何故知ってるんだ?」
「行商人のヴァスコさんに聞きました」
グラバーさんがあちゃーって顔して右手を顔に置く。
ちなみにヴァスコさんはグラバーさんの親友の行商人だ。
そもそも、この獣人と取引するやり口を考案したのがヴァスコさんだ。
本人は1箇所に定住するのが嫌だという理由でグラバーさんにアイディアを売りつけた。
成功したら、払うって約束で。
「ボウズ、俺はまだ成功してないって事にしといてくれねぇか?」
うん、こう言うと思った。
「良いですよ、その代わりダンジョン入るの許可もらってください」
「それなら、ダンジョンで取ってきたものは自分たちが必要なもの以外は全部村に売るって言えばすぐだぞ」
「じゃあそれでお願いします!」
「どうする? すぐ出発するか?」
「はい!」
「分かった、じゃあちょっと手伝ってくれねぇか」
村に持っていく荷物の積み込みをさせられた。
しかも、タダ働きで!
なんか親切で連れて行ってやるって雰囲気出しながら、しっかり労働力として確保されてた。
やりおる。
それでも他に行き方法思いつかないし、しょうがない。
俺は荷物を満載した馬車の隙間にねじ込むようにして入り込んだ。
これ到着した時身体バッキバキになる奴じゃないだろうか。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品はカクヨムコン参加作品です。
カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。
よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます