第6話 原作者、茫然自失する。

 天空城のある街『イハト』

 ここは特殊な街で、西と東で所属する国が違う。

 元々は西の街『イラハン』と東の街『ハテト』だった街が動乱期の一度同じ国になった時期に合併したが、結局その後、国が分離したのだが、今更街を分ける事も出来ずに、道の真ん中に国境が引かれているという、一風変わった街になった。


 昔のドイツみたく壁は無いが柵はあり、街中に関所がある。


 俺はその街の郊外にある丘に到着していた。

 そこには天然で出来たにしては不自然なラグビーボールのような石柱が立っている。


 俺の目的の物はここにある。


 この石柱には人ひとりが入れるくらいの窪みがある。


 やばい、テンション上がってきた!

 刮目せよ! コレが俺の切り札だ!


 その窪みの正面の壁に手をつき魔力を流す。


 その瞬間。


 冷たい石の窪みに何も変化はなかった。


 ただただ、静寂が辺りを包む。


 え? あれ?

『アナライズ』

『石の壁です』


『アナライズ』

『岩の壁です』


『アナライズ』

『なんの変哲んもない壁です』


『アナライズ』『アナライズ』『アナライズ』『アナライズ』

『なんも無いっつてんだろうが!』


 スキルに怒られた……。

 いや、スキルに人格無いから、俺が勝手に脳内変換しただけか。


 無い、ナイ、ない…… 無い────────!


 嘘だろおい!


 え? なんで無いの?

 無いなんて事があるはずが無い。


「うわぁぁぁぁぁ!」


 え! どうするの?

 え! 俺の小説だよ?

 え! 天空城はメインコンテンツだよ?

 え! なんで? なんで? なんで?


 ……

 ……

 ……


 落ち着け俺!

 考えろ! 絶対、何か理由があるはずだ!

 何か、なにか、ナニカ……何か……あ!


 コミカライズだ!

 コミックにするにあたって、スローライフ部分が読者層に合わないから、ザマァ色を強くするように言われて、天空城のある場所を変えたんだ。


 より近い場所で発見された事にして、真っ先にザマァする展開に話を組み替えたんだ。


 天空城、ギッノにある!

 通り過ぎちまったじゃねぇか!


 でも、待てよ……せっかくここまで来て何もしないで帰るのも勿体無いな。


 この街には大きなダンジョンが一つと、小さいダンジョンが一つ、ダンジョン化した現地の人が湖と言い張る池にしか見えないのが一つとダンジョン資源が豊富だ。


 だからこそ、両方の国がここに街を置きたかったわけだし。

 本編で拠点設定したくらいだから、ダンジョン攻略の時の報酬も豪華にしてある。


 ここまで来ちゃったし、どうせならダンジョン全部攻略したいな。

 あ、池ダンジョンは渇水期を待つのめんどくさいから放置で良いか。

 池の報酬はデッカいウニだし。


「戦力が必要だな」


 コミカライズ版だから、小説の二章のイベントが今から一章として起きるはず。

 一章序盤のイベントとまるまる入れ替えてるもんな。


 でもなぁ、お約束とはいえコミカライズ版の最初のイベントってダンジョンからのモンスター氾濫。

 いわゆる、スタンピードなんだよなぁ。


 さらっと、村や街が幾つも壊滅したっていう文入れちゃったからなぁ。

 リアルでも、村や街が壊滅しちゃうんだろうなぁ。


 小説と違って、本当に死人が出てしまうんだよなぁ。

 特に考えもなく入れたい一文で沢山の人が死ぬって俺が殺してるみたいで後味悪いな。

 俺が作った設定だけど、目の前で子供とか死ぬの見たく無いもんな。

 

 しかも、俺だけは止める方法知ってるしなぁ。


「邪魔しちゃおっかな」


 そう、原作者の俺は当然スタンピードの原因を知っている。

 人為的に起こされたっていう事実も。


 しかも、その主要人物って二章の後半にヒロインとして仲間になるんだよね。

 だから、上手く立ち回れば仲間になってくれるはず。


 いや、でも、怒らせたら絶対負けるな。

 ちょっと、いや、かなり怖いな。


 ボディーガード必要だな。


 先に二章の序盤でスタンピード直後に仲間になるあの子と合流して守ってもらおう。

 そうだそうしよう。

 あの子なら食料さえ用意すれば確実に仲間になってくれるはずだし。


 本編での食いしん坊キャラ兼最強の獣人『コアラ獣人』のココア。

 まずは彼女のもとに向かおう!


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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