第28話 公表の余波
公的な発表はミサキの気付かぬ所で、小さからぬ変化を起こした。それは取りもなおさず、ジェシカやメイユィ達と違って広い範囲に自分の顔や名前を知られていたからである。
これが海外の事であれば、遠く離れたヒノモトにいる彼女達にそれほど大きな影響は無い。しかし、ヒノモトの、しかも住んでいる場所と隣り合う自治体であれば、その影響は小さいとは言い難い。
「部長、ご覧になりましたか」
「うん。カラスマ君……新しい生き方を見つけたようだな」
ヤマシロ県ヤマシロ市東区、小さな事務所ビルの四階、誰もいない会議室で、二人は早朝から顔を突き合わせていた。
「こちらにも問い合わせがあることが想定される。総務には早めに言っておかないと」
「そうですね。『彼女には戸籍がなかったが、カラスマ君の伝手という事でパートとして雇っていた。知識も技術も十分だったので助かっていた。ヤマシロ市役所の件で解雇に至ったのは非常に残念だ』これ以外、無いでしょう」
「そうだな。彼女が男性であったなど、言いふらしても良い事は何もないだろう」
彼らには良識と分別があり、そして善良でもあった。
「係長!係長!」
「どうしました、スメラギさん。またアドヴァンス警備に何か言われましたか」
「違いますよ!いや、多少関係はあるんですけど!」
ヤマシロ市役所、本庁舎の一階にある庁舎管理課へ、定時よりもだいぶ早い時間にスメラギが血相を変えて登庁してきた。既に出てきていて朝のコーヒーを啜っていた担当係長に、勢い込んで唾を飛ばす。
「カラスマさんです!昨日のHHK、見ました!?」
「うん?ああ、竜災害の事でしょう?ここは実際に被災した場所なんだから、当然見ていますよ」
「だったらなんで、そんなに落ち着いてるんですか!」
デスクにだんと両手をついたスメラギに、係長ははあと小さくため息をついて言った。
「知ってます。カラスマさんでしょう。見た時は私も驚きましたよ。でもね、スメラギさん」
彼はコーヒーの入ったマグカップを自分のデスクにそっと置くと続けた。
「広報の人が言っていたでしょう?あんまり騒ぐなと。だから、公務員である我々が騒ぐわけにはいきません。わかりますね?」
「あっはい。そうですね。そうでした。でも、でも、なんかすごくないですか!?世界で六人しかいない人がここにいたんですよ!しかも、市役所の災害を鎮圧してくれたって」
「そうですね、彼女には感謝しないといけないですね。だから、落ち着きましょう」
普段から騒がしい彼女はより一層、興奮してしまっている。彼女もそこそこ長く地方公務員をやっている以上余計なことは言わないだろうが、少しだけ担当係長は困惑した。
「失礼します。ヤマシロ県警のものですが、庁舎の委託警備担当の係員の方はいらっしゃいますか」
開庁前にも関わらず、背広姿の男女二人が庁舎管理課に入ってくる。
「あ、はい。私ですが。なにか」
入ってきた女性の警察官は手帳を広げて身分を見せながら、ここに来た要件を伝えた。
分庁舎では相変わらず、東出入口のカウンター内は、約一名によって無駄に騒々しかった。
「ほらな!俺の言った通りだろ!」
「何が?」
痩せこけた老人のイシハラが、またかという顔で隣りにいる騒々しい相方を眺める。
「イトコちゃんだよイトコちゃん!あの巨乳の子!なんか違うと思ってたんだよな!ほら、あんときも俺が言ってただろ?」
「あん時って、いつの時」
抽象的で要領を得ない男に、面倒くさく思いながらもイシハラが聞き返す。
「例の日だよ!庁舎がぶっこわされた時のやつ!」
「ああ」
この男はあの日から暫く、誰彼構わず毎日のようにその日の話をしていた。死ぬ思いをしながらも、現場に居合わせた事をどうしても自慢したいらしいのだ。
「いや、俺もな?もうちょっと若けりゃ彼女と一緒に恐竜なんか殴り殺せたんだけどな?ほら、職員を守らなきゃいけないだろ?警備員として!」
「そうだね」
「だからな?その時はどうしようもなかったんだって!でも、分かってたよ俺は。イトコちゃんならあんなの余裕だってな。何ていうか、オーラが違うんだよ、オーラが。どこから出てるかしらんけど。あ、胸か?いやいや胸から出るのは母乳か!」
「そうだね」
イシハラはもう惰性で相槌を打っている。この男は好きに喋らせておけば上機嫌なのだ。うるさい以外は放って置いても構わないと彼はそう学んでいた。
イシハラは表を通って登庁してきた職員におはようございますと挨拶をし続けている。ハヤシダの言葉を聞いた女性職員が眉を顰めて通り過ぎていった。
ハヤシダのこの悪癖は死にそうな目にあっても直らないのだ。現場責任者がいくら口を酸っぱくして言おうが、直るはずがない。叱られるのはハヤシダ本人であり、イシハラには関係ない。懲りない男だと思いつつ、イシハラは正面の自動ドアから入ってきた背広の二人に目を向けた。
「ヤマシロ県警のミズキと言います。ハヤシダさんは……そちらの方ですね?」
少し年増の化粧の濃い女が、イシハラの隣で口を動かし続けていた肥満体型の男に向かって言った。
「ああ、はい。県警の方ですね!ご苦労様です!私に何か?あっ、スカウトですか?女性に誘われるのは慣れていますが、それはちょっと」
意味のわからない軽口にも表情一つ動かさず、女警部補は手帳を示して身分を証明した。
「ミチオ・ハヤシダさん。肖像権の侵害及び機密情報漏洩の件で、防衛省並びに外務省から訴えが出ています。ご同行願えますね?」
告げられた思いもよらぬ事実に、さしものハヤシダも口を開けたまま固まった。とは言え、口から生まれてきた男はそれでも尚、その止まらない口を動かし、声帯を震わせる。
「肖像権?機密情報?何の事でしょうか?俺はそんなだいそれた事。それに、防衛省からって。あ、お姉さん、からかってますね?いやあ、気を引きたいからってそんな」
今度は彼女ではなく、後ろに居た若い男が口を開いた。
「よく喋るジジイだな。わかんないなら教えてやるよ。お前が無修正で投稿した動画、どんだけ拡散してると思ってんだ?顔を晒された人がどれだけ困ったか、全然分かってねえんだな」
事実を突きつけられて再びハヤシダは固まる。ミズキは後ろにちらりと視線をやった後、再び彼を真正面から睨みつける。
「やめておけば良いのに、何度も再アップしましたね。プロクシも通さずにやってたのでまるわかりでしたよ?あなたの住所。さあ、その良く喋る舌で話を聞かせてもらいます。勿論署でね」
手錠こそかけられなかったが、若い男に引きずられるようにしてハヤシダは表に引っ張り出された。そのまま表の通りに連れて行かれる警備員の制服の男を、登庁してきた職員達が何事かと足を止めて振り返っている。背後を振り返りつつ入口にやってきた顔なじみの清掃員の男が、イシハラに向かって聞く。
「あれ、警察でしょ?ハヤシダさん、何したの?」
若い男に向かってイシハラは、いつかこう言おうと決めていた言葉を返した。
「いやあ、いつかやると思ってたんですよ、あの人」
薄暗い部屋の中、照明も点けずにその男は、仄白く光るディスプレイを凄まじい形相で睨みつけていた。口元でブツブツと独り言を呟くその様子は、傍目に見ても明らかに常軌を逸している。
「あの女のせいだ、あの女の。なんで俺がクビになって、あの女だけ有名になってるんだ。くそ、くそ」
男はカチカチとせわしなくマウスを動かし、偽装してあるファイルフォルダから動画形式のファイルを選び、忙しない様子でダブルクリックした。
開いた動画の画面の中には、男が少し前まで勤めていた職場のロッカールームが映されている。男は慣れた手付きでシークバーを動かし、該当の時間で再生を始めた。
ロッカールームに長い黒髪の美しい少女が入ってきて着替えを始めた。きつそうに見える作業服のボタンを外し、扇情的な下着に覆われた大きな胸が現れる。男はそれを見ながら履いていたスウェットごと下着をずり下ろし、既に固まっていた自らの陰茎を擦り始めた。
どう見ても盗撮映像だ。この男はスマホに録画していた動画を自分の端末の中に保存し、毎日のようにこうやって自慰を繰り返していた。
先程のフォルダの中には彼女の眠っている姿や、通勤電車の中で隠し撮りした盗撮画像が大量に収められていた。
男は普段、スマホを見られても良いように、撮った動画はこの端末の中に写して、基本的にスマホからは消去していた。だが、彼女の着替えシーンだけは気に入ったためか、休憩時間等にこっそりとトイレ等で繰り返し見ていたのだった。
それが災いして話を聞きに来た警察官に見つかり、咎められ、最近できた法律によって、罰金に加えて執行猶予付きの判決まで食らっていた。
当然会社は懲戒免職となり、次の仕事を探そうにも同業他社には全て断られた。比較的地域で名の売れている同業を懲戒免職になった男など、誰も取ろうとしないのである。
一度経歴を偽って入った所も、出入りしている業者が同じだったためかすぐにバレ、クビになった。それ故にこの男は、見当違いな恨みつらみを動画の女に募らせ、それでも尚こうやって暇を見ては苛立ちをぶつけるように、自慰行為に耽っているのである。
「はぁ、はぁ、犯してやる、犯してやるぞ、カラスマ」
男はより一層右手の動きを早くする。映像の中では少女がカメラに気付かずに制服のズボンを脱いだ所だった。ブラジャーと揃いのショーツに包まれた、形の良いお尻がこちらに向かって突き出されている。
すぐに男は呻いて、添えていたティッシュの中に少量の精液を吐き出した。擦り付けるようにして、余った皮から覗く先端を何度もティッシュで拭うと、その粗末なものを仕舞いもせずに再びマウスを握る。
「なんで俺だけ、なんで俺だけこんな目にあうんだ。仕返ししてやる。お前が悪いんだぞ、全部お前が悪いんだ。フヒ、有名になったんなら丁度いい、きっとPVも伸びるだろ。全世界の男のオカズになっちまえ。ざまあみろ」
男はいつも使っている裏の動画投稿サイトを開き、先程の動画を無造作に投稿用のエリアへドラッグアンドドロップした。
余分な所を切り落とす等の編集をされていない動画のファイルサイズは大きく、アップロードされるまで結構な時間がかかる。はあはあと射精の余韻に口の端を釣り上げた男は、そのゲージがいっぱいになるのを見届けて、敷きっぱなしになっている後ろの布団に向かって仰向けに倒れた。
「はは、ははは!ざまあみろ!俺を馬鹿にするからだ!」
突き出た腹を天井に向けて、その男、タニグチは一線を越えてしまった。国家として情報漏洩に神経を尖らせているこの時期、最重要対象の人間の周囲で発生した犯罪者が、監視されていないはずがない。
アップロードされたと思われた裏サイトの画面には、『投稿者によりアップロードがキャンセルされました』と書かれたウィンドウが表示されていた。
「ママ―、サブウェイにミサキお姉ちゃんが出てるー」
小学校から帰って来たウミが早速つけたテレビ画面で、一番上にきていた動画を見つけて声を出した。
「あーそれねー。怖いからあんまり見ちゃ駄目だよ。恐竜、怖いでしょ?UAHで怖かったでしょ?」
「UAHのは楽しかった!また行きたい!でも、恐竜じゃないよ、知らないおじさんがうつってる」
キッチンから適当に答えていたミオは、娘のその言葉になんだろうとリビングに戻ってきた。リビングのソファの上ではウミだけでなく、彼女の弟のショウも画面に見入っていた。
「え……何、これ?おに、ミサキさん?え?DDD?は?」
彼女は夫からこの事を知らされていなかった。寝耳に水の情報に、慌ててスマホを開いてチャットソフトであるワイヤードを起動する。
『ちょっと、DDDって何?聞いてないんだけど?』
夫との個人チャットは、暫くして既読が付いた。返信が帰ってくる。
『え?なんで?あ、ひょっとして公表されたの?』
『知ってたの?なんで教えてくれなかったの?』
『いやあ、兄貴が公表されるまでは黙ってろって』
本人が言ったのであれば仕方がない、と、ミオは夫に対する苛立ちをすぐに収めた。
『ウミとショウが見ちゃって、どうすればいい?』
『あんまり学校や幼稚園で言いふらさないようにだけ言っておいて』
『聞くかなぁ』
『言っちゃったらその時はその時でいいよ、俺がどうにかするから』
意外と頼りになる夫の言葉に、妻はほっと胸をなでおろした。しかし、義理の兄……今は遠い親戚という事になっているが、身内が世界的に有名になってしまった。しかも、竜災害を鎮圧するチームのリーダーとして、とは。
「ママ、お隣にいる人もきれいだね。ミサキお姉ちゃんと同じぐらい可愛いよ」
「そ、そうね。ねえ、ウミ、ショウ。あんまりミサキお姉ちゃんの事、学校や幼稚園で言いふらさないでね」
母の言葉に、子供二人はどうして?と不満そうに聞き返す。近くに有名人がいるのだ、自慢したいと子供なら思ってしまうだろう。
「あのね、ミサキお姉ちゃんはお仕事で有名になっちゃったの。だから、あんまり沢山の人にワイワイ言われると、とっても困っちゃうの。ミサキお姉ちゃんが困っちゃったら、かわいそうでしょう?」
その言葉に、二人は渋々と言った様子で頷いた。
「わかった、内緒にする。でも、またミサキお姉ちゃんのところに連れて行って。でないと、言っちゃうかも」
この歳にして親を脅すことを覚えてしまった娘に母親は驚愕した。
「うーん、じゃ、じゃあまた行っても良いか聞いてみるね」
「ほんと!?約束だよ!あっ!リンちゃんも一緒がいい!ねえねえ、リンちゃんには言っていい?」
「え?ああ、多分リンちゃんは知ってるかな。サメガイさんのとこだし……リンちゃんにだけだよ?」
「うん!わかってる!」
小学校に上がったばかりの彼女は、既に子供用のスマホでワイアードを使いこなしている。自分が子供の頃には考えられなかった事だ、と、母親は少し怖くなった。
(知らない所で情報が広がったりしないかな……)
その杞憂は、あまり物事の分別がつかない子供の行動によって、後に真実になってしまうのだった。
「ママ!ミサキお姉ちゃんのところにいきたい!」
キッチンでピーラー片手に芋と悪戦苦闘していたキョウカは、飛び込んできた一人娘の唐突な言葉に眉を顰めた。
「リン、ママ今、お料理してるの。危ないから入ってきちゃ駄目でしょ」
慣れない彼女にとって未だ料理は食材との戦いである。故に、調理中はキッチンに入ってこないように、娘に強く言い聞かせておいたのだった。
「うん、ごめん。でも、ウミちゃんが一緒にミサキお姉ちゃんのところに行こうって」
「ウミちゃんが?ウミちゃんのパパとママはなんて?」
「ミサキお姉ちゃんに聞いてくれるって。ねえ、いいでしょ?」
料理を片手間にすることのできないキョウカは、まな板の上に皮を剥きかけのじゃがいもを置いた。シンクで手を洗い、前掛けで拭くとスマホを取り出す。
『なんかリンがウミちゃんとそっち行きたいって言ってるんだけど』
兄にワイアーを送ったが、仕事中の為か既読は付かない。諦めて娘に後で聞いておくねと言ってキッチンから追い出して、彼女は再び芋に向かった。
二個目の皮を剥き終わった頃、再びその娘が飛び込んできた。
「ママ!ミサキお姉ちゃんがしらないおじさんとお兄さんと一緒に動画に出てる!」
ガタン!とピーラーと芋をまな板の上に放り投げ、キョウカは慌ててリビングに置いてあるテレビの方へと駆け出した。
(何、何!?し、知らない男とって、不倫!?)
動画を見て映っていた記者会見らしき光景にほっと胸を撫で下ろしたキョウカは、その内容を確認して再び驚愕に目を見開いたのだった。
ナナオ駐屯地の前、入口の所でボロい軽自動車から、剃り残した無精髭の目立つ、四角い顔の背の低い男が出てくる。入口付近のボックスで防衛官と二言三言話していた彼は、一旦クルマの前に戻ってタバコに火を着けた。
紙巻きの一本を喫い終わる頃、門脇の通用口を開けて、20代後半ぐらいの凛々しい女が出てきた。肩にはその階級の高さを示す星が輝いている。
「昨日の今日でもう来たんですか」
「勿論ですよ、オオイ二佐。約束ですからね。まさか忘れちゃいませんよね?」
懐から取り出した携帯灰皿に吸い殻を押し込むと、背の低いその男は一枚のクリアファイルを取り出した。
「抜かりはありませんよ。はい、申請書。場所はどこでも結構です」
「しっかりしていますね。まぁ、いいでしょう。明日か明後日なら」
「では、明日で。午後の方が?」
「そうですね、13時半に、ここにお願いします」
「イチサンサンマル、了解しました!へへ、どうもどうも」
「あんまり防衛隊にかぶれると恥をかきますよ、忠告です」
男はボロい軽自動車を揺らしながら帰っていった。サクラダの街中方面ではないので、近くに安いホテルでも取っているのだろう。
オオイは肩だけで小さくため息をつくと、受け取った取材申請書を携えて中へと戻っていった。
薄いゴム越しにミサキの熱い体温を感じながら、ソウは滾った欲望をその中に吐き出した。腰が砕けそうな程の快感に身を任せ、愛しい相手の華奢な身体を抱き寄せる。
「ちょっと、ソウ、苦しいよ」
「ごめん。ミサキがあんまりにも可愛いから」
繋がったまま、うにうにとお互いが身体の位置を動かしつつ、密着した肌の感触を確かめ合う、行為の後の余韻。
「やっぱり生の方がいい?」
「そりゃまぁ。でも、今は無理だろ?」
「うん。公表したばっかりだし」
アイドル扱いである。そこへ、いきなりリーダーが妊娠したので一時離脱します、では、いくら超法規的措置の存在とは言え批難が集中する事は目に見えている。
妊娠出産の権利は皆等しく与えられているはずだが、人権が制限されているという事を公言した直後に権利を主張する、というのは流石に具合が悪い。ほとぼりが冷めるのを待たねばならないだろうと、二人は本能的に理解していた。
「だから、こうやってミサキのおっぱいを俺に押し付けておきたい」
「ほんと、おっぱい好きすぎ。おっぱい星人か」
「おっぱい星人でいいよ。柔らかくて可愛くて気持ちいいし」
「馬鹿」
それでも嫌がる素振りも見せないミサキは、ソウの胸に頬を押し付ける。
「あれ?そういやソウのスマホは?」
頭の上のボードをちらりと見たミサキが、いつも置いてある彼の黒い板が無い事に気がついた。
「ああ、そういやキッチンのカウンターに置きっぱなしだったな」
「アラーム、鳴らないから起きられないよ?」
「ミサキが起こしてくれるだろ?」
「起こすけど。努力は放棄しないで」
「明後日からそうする」
「適当だなあ」
言ってミサキはソウの尻を撫で回し、彼の乳首に軽く歯を立てる。
「あっ、固くなった。もう一回、する?」
「ほんとエッチだなミサキは。自分がしたいからそうしたんだろ」
「ふふ、そうかも。ねぇ、いいでしょ?」
「いいに決まってるだろ、こっちからお願いしたいぐらいだ」
望むと望まれるまま、二人は避妊具を交換して二人だけの夜を再び楽しみ始めた。
翌朝、その日の午後からずっと、ソウのスマホに怒涛のように投げ込まれていたワイアーの事は、まだ彼らの知る由もない事であった。
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