第18話 駆逐者達の内情
弁当を作るというのは、最初は面倒くさい、と感じるものだ。
あれこれ献立を考えて、それは弁当として適したおかずなのか、腐りやすくないか、味は、栄養のバランスは。と、考えだしたらキリがない。
だが、ある程度継続して作っていくうちに分かってくる。手抜きで良いのだと。
今や弁当用の冷凍食品はスーパーにずらりと多種多様なものが並んでいるし、自分で作るにしても冷凍して大丈夫なものは冷凍しておけば、朝に箱に詰めるだけで済む。
定番の焼き茹でウィンナーや玉子焼き等は作る必要があるものの、それ以外はほぼ全て、冷凍モノやプチトマトといったもので誤魔化してしまえる。いや、誤魔化すというのは聞こえが悪い。時短が出来てしまうのだ。
そこに気が向いた時にアレが残ってたな、これが使えるなと考えるというのは、意外と楽しい。日々に変化が生まれるのである。
昼食を外食で済まそうと思えば、食の細い人間であっても500エンから700エン、都市部の一般的な成人男性であればそこから4ケタまで見えてきてしまう。
そこを弁当として済ませてしまえば、水光熱費等を別にすれば、豪華にしても大体ワンコイン以内で収まる。社食や学食、給食がないのであれば、これが最も確実に食費を下げる手段の一つとなる。
そんなわけで、朝5時半に起きてぱぱっと一時間足らずで弁当を詰める。以前作ったおからの和え物がソウに好評だったので、今日はこちらも入れてある。
作っているうちに寝癖のついたソウが起きてきたので、冷凍しておいた飯と弁当の余り、味噌汁で朝食にする。
「今日からお前も出るんだろ?無理して作らなくてもいいんだぞ」
味噌汁を啜りながら適当な男が言う。
「別に無理はしてねえよ。一人でもやってたんだし、それが一人分増えた所でどうってことないし。まぁ、朝と昼のおかずが少し被っちまうのは悪いけど」
「アホか。十分過ぎるだろ。毎日しっかりした朝昼が食えるのに、文句言う奴なんかいねえよ」
「そうか、サンキューな」
「礼を言うのはこっちだって」
適当な男だがこの辺りは大変律儀である。故にずっと関係が続いていたのではあるが。
ずっと一緒にいて居心地の良い関係というのは貴重だ。30年程度の人生では、なかなかそういう相手というものは見つからないのである。
飯を食い終わって洗い物を終わらせた所で、インターホンが鳴った。時間きっかりに外務官のサカキが迎えに来た。
「悪い、先行くわ」
「おう、いってらっしゃい」
外出用のパンプスをつっかけて外に出る。これも以前サクラダで買ったものだ。
スニーカーでいいだろと言ったら、妹たちに服に合わないから絶対にやめろと物凄い剣幕で怒られた。言われてみれば、服に合わない靴というのは見ていてなんだか奇妙に映る。
スーツにスニーカーとか、ジャージに革靴なんて格好の人間がいたら二度見してしまうだろう。それと同じだと思えばまぁ、納得は出来る。
エレベーターに乗ると、途中でゴミを出しに来たのか以前の猫ちゃんの飼い主が一緒に乗ってきた。おはようございますと笑顔で挨拶して、一階で降りた彼女に会釈する。流石にこの程度で猫を連れ出すことはない。基本的に猫を外に出すのは、旅行の時にどこかに預けるか、病院に行くときだけである。
犬も猫も病院を嫌がるので、普段外に出ない猫は連れ出そうとするとそれはもう嫌がる。暴れる事もあるし、キャリーの中で怖がって動けなくなってしまう事もある。この間のアメリカンショートヘアの子は後者ではないかと推測している。
地下に降りてサカキの運転する防衛省のクルマに乗り込む。相変わらず地下駐車場は空いていた。
「すみません、サカキさん。これ、時間外業務ですよね」
少し眠そうな美形の男に謝罪する。こちらが8時に間に合うようにと思えば、当然それよりも早く迎えに来なければいけない。戸籍が出来たのなら、免許証の書き換えでもしてもらって、中古車でも買ったほうが良いだろうか。
「ええ、まぁ。でも、庁舎では時期によってはそれが当然なので、慣れていますから」
省庁の職員は基本的に一定分しか残業がつかない。それを越えた分は暗黙の了解で足切りされてしまうのだ。
「別にバスで移動しても良いのですが」
「それが出来るのであればその方がありがたいですね。カラスマさんから二佐に言っておいて下さい」
そうしよう。流石にこんな事で毎日時間外業務をさせては申し訳ない。彼のことはあまり好きではないが、それとこれとは別である。
「サカキさんのお住まいは、首都近辺ですよね?」
中央省庁に勤めているのだから当然だろう。官舎だってあるので、そこに住んでいるのかもしれない。
「ええ、まぁ。こっちではずっとホテル住まいですよ。部屋の掃除をしなくていいのは楽ですが……」
「それは、なんとも」
経費のかかる事だ。いっそ防衛省に掛け合って寮を……いや、それはそれで彼も嫌だろう。防衛隊の寮はなんというか、古い。しかも、多くが複数人用の部屋だ。国防を担う者たちが粗末な部屋で生活をしているのである。結構、いや、かなり酷い。
昨日の茶の件もそうだったが、駐屯地内の消耗品すらケチっているのである。いくら今は平和だからといって、これではなり手がいなくなってしまうだろう。
思わずご結婚は、と聞きそうになって口をつぐんだ。これはセクハラになってしまう可能性がある。他人のプライベートには口を出さない。基本である。
とはいえ、これだけ顔が良いのだから彼はモテるであろう。嫁がいるのであれば、浮気が怖くて一緒についてくることも辞さないのではないか。多分、彼は独身だ。
そもそも中央省庁の職員は激務である。もうそろそろ議会の会期も終わるが、文科省や厚労省、経産省なんかは質疑の為に泊まり込みまでしていると聞く。一般職も総合職も関係なしだ。法律を作っている側が法律に則さない働き方をしているのである。結婚してもそのせいで別れる事も多いと聞く。実に笑えない。
外務省がどうだか知らないが、他に比べて健全である、とも言えないだろう。
およそ30分程走って、黒塗りのクルマは駐屯地の敷地内に入った。まっすぐ昨日のジムのある棟に向かうのかと思ったが、先に事務棟の前で止まった。
「オオイ二佐が先にこちらにと。事務室にいらっしゃるはずです」
「わかりました、ありがとうございます」
自分でドアを開けてクルマを降り、事務棟の中へ入る。受付から覗くと、彼女は下を向いて何やら事務作業をしていた。
「オオイ二佐。カラスマ一尉、参りました」
何となく言ってみたくなってそう声をかけると、顔を上げたオオイは呆れた顔をした。
「何ですか、カラスマさん。防衛隊に入りたいんですか?結構激務ですよ」
「竜を殺す事よりは多分、楽だと思います」
それはそうだ、と彼女は苦笑して、昨日と同じ打ち合わせスペースに誘った。若き軍人は、大きな封筒から書類を幾つか取り出してこちらに手渡す。
「まず、健康診断を受けて下さい。幾つか項目がありますが、詳細なものは追々」
「ああ、健康診断なら受けましたよ。ヤマシロ予防医学センターです。血液検査は西区のマツバラ産婦人科で――」
オオイはガタンと椅子を蹴って立ち上がった。
「なんですって!?そ、それはちょっと!ど、どうしましょう。それは、想定していませんでした」
急に取り乱したオオイに驚く。二佐がこの程度の事で驚いていては困るだろう。
「何か問題でも?」
マツバラは何もわからなかった、と言っていた。分からないのだから、問題があるというわけではないのではないか。
「大問題です。貴女がたの身体データは、国家間の取り決めで最重要極秘事項になっているんです。それが、民間に既に流れていたとなると……」
慌てて彼女はスマホを取り出してどこかに電話をかけている。
「ええ、はい。既に血液検査をと。はい。ヤマシロ西区のマツバラ産婦人科です。わかりました。そのように」
彼女は大きく溜息をついた。
「どうにかなりそうです。しかし、少し面倒な事になりました」
「その、彼女は信頼の出来る人です。どこかに漏らしたりとかはしていないと思いますが」
「それはこちらでは判断出来ません。実際に医師を……いえ、それは私の仕事ではありません。兎に角、データがあるのでしたら、そちらを回収してきます。健康診断は結構です」
なんだか不穏な空気が漂っている。まさか、あの誠実な医者をどうこうしたりはしないだろうな。
「あの、出来れば穏便に」
「無論です。最初からそのつもりです。そうか、ステイツも央華も、無戸籍の人間に対して健診は受けさせていないから……いや、でもそれはカラスマさんも同じはずなのに」
彼女はこちらを見て言った。
「健康保険証は?」
「無くてもどうにかすると、先生が」
「民間の医師がですか!?な、なんでそんな得にもならない事を!?」
それはまぁ、経緯が経緯だからとしか言いようがない。
「最初、相談に行った時に勘違いされたんです。妊娠したのを家族に言えなくて来たのではないかと」
オオイは額に手を当てて天井を仰いだ。
「なんてお人好しの医者だ。そのせいで余計に面倒なことになった。まぁ、でも、善意であればそう悪い事にはならないか……」
彼女はそう言うと、封筒に健康診断用の問診票を仕舞った。蹴り飛ばして倒してしまった椅子を起こすと、こちらの横に立つ。
「行きましょうか。鍛錬場の基本的な説明をしますので」
頷いて、彼女の横について出る。事務棟の外にあったクルマの中では、サカキが運転席のリクライニングを倒してアイマスクをつけていた。あれは自分が着けていたものだが、良いのだろうか。
彼を一瞥した陸防二佐は、クルマは諦めて徒歩で昨日の場所へと歩き出す。こちらの送迎という名の時間外業務を押し付けた事もあるので遠慮しているのだろう。
「昨日も博士が仰っておられましたが、ここの二階と三階は彼のチームの研究室になっています。央華と合衆国だけでなく、環パシフィックの国々からそれぞれの専門家を呼んでいます」
こんな小さな建物に、そんな重要人物ばかり集めて大丈夫だろうか。ヒノモトには他にも大きな研究施設はいくらでもあるだろうに。
まぁ、被検体がすぐ近くにいる、という意味では理想的な環境なのかもしれない。出来れば非人道的な検査や実験は遠慮したい所だが。
「一階は詰め所です。普段、私はここに詰めていますので、何か用があれば内線で410番を呼んで下さい。番号表の名称は『DDD監視室』です」
当然の如くあのトレーニングジムには監視カメラがついているだろう。当たり前だ。
「彼女たちの部屋に、カメラは?」
「お教えできません」
ついている、と答えれば問題があるし、ついていない、と答えれば嘘になる。つまり、答えられないのだ。彼女たちはこの事を知っているのだろうか。
「普段、監視室にいるのは、二佐だけですか?」
「……いいえ」
それは。
「この駐屯地に女性隊員はどれぐらいの人数がいますか?」
「……」
倫理的には良くない。いや、大きな問題である。彼女たちは人並み外れた力を持っているとは言え、普段は普通の少女なのだ。それを。
「聞かなかった事にします。彼女たちには言いません」
「……そうして下さると、助かります」
外出も含めて、人権は制限されている。いや、侵害されていると言っても良いだろう。ただ、我々に対する扱いはまだ手探りの状態なのだ。
いずれ普通に生活している上では彼女たちに何の問題もない、とわかれば、この人権侵害も徐々に取り払われる。そう信じるしかない。それまでは知らぬが仏と決め込むしかないだろう。
嫌な事を知ってしまった。彼女に聞かずともすぐに気付いた事ではあるものの、あまり気分の良い事ではない。誰だってずっと監視されていると思えば良い気分にはならないだろう。出ている時の自分がジムにいる間だけでさえもそう思うのだ。
金庫のような扉を開けて中に入る。二人は既に置いてあるマシンに取り付いてトレーニングを始めていた。
『ジェシカ、メイユィ、おはようございます』
こちらから声をかけると、二人は嬉しそうにこちらを向いて手を上げた。
『よう!ミサキ!先に始めてんぞ!』
『おはよう、ミサキ。その服、可愛いね』
ジェシカは上半身を、メイユィは下半身を鍛えている。彼女たちなりに何か考えている事はあるのだろうが、どういう計画を立てているのか後で聞いておいたほうが良いかもしれない。
「カラスマさん、着替えはこちらで用意してありますが、まずはここの設備をご説明します。こちらへ」
誘われるまま、扉近くの部屋へと案内される。中は給湯室だった。
「IHですが、簡単な調理もここで行えます。ただ、彼女たちはお茶を淹れるぐらいにしか使用しておりませんが」
電子レンジや冷蔵庫も置いてある。中を開けてみると、経口補水液やスポーツドリンクなどが入っていた。見慣れない色をした液体の入ったボトルも置いてある。
「オオイ二佐、このボトルは?」
指差すと、彼女はああ、と言って頷いた。
「栄養ドリンクです。食事だけでは足りないものを補う成分が入っています。カラスマさんも、トレーニング後に良ければどうぞ」
プロテインのようなものだろうか。ただ、自分の場合筋肉が直接ついているわけではないので、タンパク質だったとしてもトレーニング後の摂取で効果があるのかは不明だ。
給湯室にはある程度のものが揃っている。上にある棚を開けると、フライパンや鍋、食器が三人分の一揃い入っていた。彼女の言う通り、材料があれば簡単な調理なら行えそうだ。
「普段、二人はどんな食事をしているんですか?」
「大体が食べたいものを言ってくるので、貨物用エレベーターで下ろしています。それですね。ジェシカは肉を要求する事が多く、メイユィは甘いものが好きなようです」
給湯室の突き当たりには、複数階ある料理店などで使われる、銀色の貨物用エレベーターが設置されていた。必要なものはこれで上から下ろしてくるのだろう。
好みは当然あるにはあるだろうが、栄養バランスはどうなっているのだろうか。
「好みのものばかり、言われるままに出しているのですか?」
「一応、付け合わせには気を使っています。彼女たちは良く食べるので、全て問題なく食べているようですが」
それは自分も同じだ。それこそ満腹になるまで食べようと思えばいくらでも食べられる。しかし、付け合わせに気を使っているといっても、それでも偏りは大きいだろう。
「材料を持ってきて作るのは問題ないのですよね?」
「勿論です。言って頂ければ、材料もこちらで用意します」
なら、昼食ぐらいは時々作ってやったほうが良いだろう。健康な肉体は食事と睡眠、それから良い精神状態によって得られるのである。
給湯室はそれぐらいにして、オオイは隣の部屋に案内した。脱衣所の奥に樹脂製の半透明の扉がある、典型的な浴室だった。
「ご覧の通り、浴室です。奥にはバスタブがありますが、手前の部屋はシャワールームです。彼女たちはもっぱらシャワーのみで済ませる事が多いようです」
「……まさか、ここにも?」
何故シャワーのみで済ませていると知っているのか。
「ああ、いえ。流石にここにはありません。毎日昼間に清掃員が入りますので、使用状況はわかりますから」
「そうですか、安心しました」
流石に脱衣所や浴室を覗くのは問題有り、とされたようだ。寝室なら良いのかと言われれば、それは勿論良くないのだが。
浴室の隣はトイレで、あとはテレビや端末の置いてある談話室だった。大きなソファが置いてあり、テレビは50インチ以上ある大型の液晶だった。
「こちらが元々予定していたカラスマさんのお部屋です。出てこられた時はここを自由に使って下さい」
入って右側の隅にあった扉を開けると、緑色の絨毯が敷かれた部屋の中、壁際にデスクが一つ、右側にベッド、奥には小さなクローゼットが置かれている。
「かなり快適ですね。防衛隊の宿舎とは随分と差があるようですが」
どこも真新しく清潔だ。僅かな時間で準備をしたにしては整いすぎている。
「元々ここは、有事の際に使うことを想定していたシェルターなのです。なので、設備も相応、という事ですね」
それでこんなにも頑丈で厳重なのか。設備が整っている事にも納得がいく。恐らく、首都機能が麻痺した時にお偉いさんを避難させておくための施設だったのだろう。中央の広いトレーニングルームは恐らく、パーティションを置いて執務室か何かにする予定だったのだ。
「他にも沢山扉があるようですが」
今まで回った共用設備と自分の部屋、ジェシカとメイユィの部屋以外にも扉は沢山ある。
「今後、皆さんの仲間が増えるかもしれないという事を想定しています。予備ですね」
そうか、その可能性もあるのか。面子が増えれば安定性も増すだろうし、一人当たりの負担も減る。できれば見つかってほしいものだ、が。
「増える、といえば。アースの残り半分はどうしているのですか?まさか放置、というわけではないですよね」
環パシフィックは自分たちでどうにかするにしても、それ以外の地域はどうなっているのか。それこそ、連邦なんていうどでかい国土を持つ国もこちらの対応範囲に入っていない。
「あちらはあちらで三人、いらっしゃいます。ここと同じような拠点はロマーナに置いています」
そうか、半分ずつ、全世界で6人、というわけだ。それにしたってあちらはあちらで大変だろうが。
「向こうの方々との交流とか、そういったものは無いのでしょうか」
同じ災害に立ち向かう仲間なのである。受け持ち範囲が違うとは言え、挨拶ぐらいはしておくのが当然ではないだろうか。
「色々とありまして、今の所は予定されておりません」
「色々と、ですか。あちらはあちらで大変そうですね。あちらの方々の出身地は聞いても?」
大きな国である連邦からは出てきているだろう。他はどうだか分からないが。
「構いません。ヴィクトリア連合王国、ヴァイマール共和国、サウスサハラから、それぞれ一人ずつです」
それはまた、妙に偏っているな。
「全て西側からですか?ルーシ連邦からは?」
「いません。というより、報告が上がっていないのでわかりません」
いるかもしれない、だが、隠しているという可能性もあるという事か。
「連合王国と合衆国は情報協定を結んでいますよね。あちらの情報局ですら、何も掴んでいないと?」
ヴィクトリア連合王国の情報局は極めて優秀だ。特に敵対感の強い連邦に対しては、かなり綿密に情報収集を行っている。連邦で竜災害が発生したとすれば、必ずそれがどこで起こってどのように制圧されたかという事まで掴んでいるはずだ。
「そう、聞いています。ただ、合衆国はこちらの情報統制をあまり信用していません。知っていたとしても我々に教えてくれるとは限りませんので」
それはまぁ、そうだろう。隠蔽の綻びが真っ先に出たのが我がヒノモトからなのだ。隠しておきたい情報はあまり教えたいと思わないだろう。
「わかりました。あちらの事はまぁ、上の人達の思惑もあるでしょうし、気にしないことにします。ただ、どちらかの範囲でどうにも処理しきれなくなった場合の応援などは」
三人なのだ。同時に各地で竜災害が発生した場合、手が回らなくなる可能性がある。
「検討中です、としか。すみません、これ以上の事は私にも……」
「そうですか、いえ、お気になさらないで下さい。ありがとうございます」
やむを得ないだろう。いずれどうなるかは置いておくにしても、今の所、聞く限りでは災害発生頻度はそう高くないようだ。ただ、泥棒捕らえて縄をなうでは困る。転ばぬ先の杖は必要だ。そう、上の人間が認識してくれている事を願うしかない。
気がつけばトレーニングをしていた二人は運動をやめて、給湯室の冷蔵庫からボトルを持ち出してきて、美味そうにあの茶色く濁った液体を飲んでいる。美味いのか、あれ。
見ていることに気付いたジェシカが、笑顔でこちらに近寄ってきた。
『ヘイ!難しい顔して何話してんだ?ヒノモトの言葉はクソ難しくて全然わかんねえよ』
いちいち会話に四文字の言葉をつける彼女に苦笑する。
『今後の方針について、少し。それより、ジェシカ。それ、美味しいんですか?』
1リットルは入っていそうなボトルを指差す。沢山入っていたので、一回飲みきりなのだろう。それにしても、多い。
『ああ、クソ美味いぜ。チョコレート味だし、腹にもたまるからな。メイユィもこれ、大好きだぜ。なあ!』
ジェシカが話を振ると、両手で抱えて可愛らしくドリンクを飲んでいたメイユィも、こちらに向かってにっこりと笑って肯定した。この笑顔、天使か。
『そうですか、では、私もトレーニングが終わったら一つ頂く事にします。二人共、今日はもう終わりですか?』
まだ午前中である。時間はたっぷりあるはずだ。
『ああ、もうあんまり効果が感じられねえんだ。オオイに新しいのを要請してるんだが』
ちらりと彼女を見ると、もう少し待ってくれ、と彼女は頷いた。
『そうですか。では、私はこれから少し使わせてもらいましょう。一般のジムよりはずっと効果がありそうですからね。オオイ二佐、着替えはどちらに?』
『奥のロッカールームだ。ネームプレートがついているので、そこから出してくれ』
言われるまま、奥のロッカールームに入った。全体的にピンク色の可愛らしい内装にしてあり、いかにも女性専用のロッカールーム、といった感じである。女性専用……。
着替えながら考える。そういえば、我々、所謂デストロイヤーに男性はいないのだろうか。自分たちに直接的な筋力量はあまり関係ないとは言え、人類は基本的に男性のほうが力が強い。竜を狩るという荒事であれば、そちらの方が適任ではないかと思うのだが。
理由はまるでわからない。女性の身体でないとこの力は発揮できないのか。そして何故、自分は性転換してまでこんな力を得るようになったのか。
答えの出ない問いを脳内に巡らせつつ、薄手のタンクトップにぴっちりとした短パンに着替えてトレーニングルームに出た。しかし、この格好、誰の趣味なのだろうか。
サイズに問題は無い。ぴったりである。しかし、形状の関係から着用しているブラジャーの一部が丸見えになってしまう。
専用のスポーツブラなんかであれば問題ないのだろうが、今着用しているのは例の真っ赤な大人用スケスケブラである。流石に少し恥ずかしい。
案の定、出てきた所を二人に捕まった。
『うおっ!ミサキ、クソすげえブラしてんな!お前の男の趣味か?』
『ミサキ、すごい大人っぽい。それに、大きい……』
口々に彼女たちの母語で話しかけられる。一方、オオイの方はこれと言って何も反応していない。それもそうで、彼女は立派な大人の女である。いちいちこんな事で反応するわけがないのだ。
『ええ、まあ。でも、ジェシカならこういうのも似合うんじゃないですか。美人だし、スタイルも良いし』
『そうか!?そりゃあ嬉しいが……なあ、オオイ』
彼女に要求したが、当然の如く首を横に振られた。
『必要無いだろう。大体、誰に見せるのだ。彼女には相手がいるからそういうものを着けているだけだ』
『そりゃあ、必要あるか無いかで言われりゃそうだけどさ』
ジェシカは形の良い唇を尖らせた。こういう所も年相応で可愛らしい。
『私は、無理かな……ジェシカやミサキみたいに大きくないし、きっと似合わないよね』
しょぼくれているメイユィに慌てて声をかける。
『メイユィだってこれからですよ。ええと、成長には個人差がありますから。それに、メイユィはメイユィで可愛いでしょう?ほら、方向性の違いですよ』
『方向性?』
そう、別にでかいだけが魅力ではないのだ。彼女の容姿は誰が見ても可愛らしいと思うし、別にそんな下着なんて気にする必要は無いのである。
『下着は別として、可愛い服はきっと良く似合いますよ。多分、そういうのは私やジェシカでは似合わないと思うので』
『そうかな?ファミリーでも、おじいちゃんはなんでも好きなものを買って良いって言ってくれてたけど、私はそういうの、良く分からなくて。興味はあるんだけど』
『それじゃあ、許可が出たら一緒に買い物に行きましょうか。きっと似合う服が沢山ありますよ』
そう言うと、彼女は嬉しそうに感謝の言葉を述べた。央華語の分からないジェシカと、聞き取れなかったオオイは不思議そうな顔をしている。
『なあ、何て言ったんだ?』
『メイユィには可愛い服が似合うって言ったんですよ』
買い物のくだりは黙っておいたほうがいいだろう。いつ、外出許可が得られるかはわからないのだ。
しかし、いくら快適だとはいえ、ずっとこんな所にいたのでは気が詰まってしまうだろう。明日は休日でもあるし、自分かオオイが同行して買い物ぐらいは良いのではないだろうか。流石にサカキを連れ回すのは問題があるだろうが。そうだ、サカキ。
「オオイ二佐、サカキさんの送迎ですが、流石に申し訳ないので、バスで通勤しようと思うのですが」
通勤、だろうか。まぁ、通勤だろう。トレーニングが仕事なのである。
しかしオオイはその言葉に渋い顔をした。
「公共交通機関でですか。あまりオススメできませんね。いずれ発表する事とは言え、貴女はかなりの有名人になってしまっています。それがこの駐屯地に出入りしているとなれば、一体何があるのかと勘繰る人も出てきてしまいます。一応、ここに我々の本拠地があるという事は伏せておかねばなりませんので」
言われてみれば確かにそうだ。ある程度鎮火させようと政府も防衛省も頑張ってはいるが、相変わらず動画サイトではいたちごっこが続いている。自分の顔は割と多くの人に知られてしまっている。
サクラダ駅周辺のように、沢山の人がいる場所であれば紛れて気が付かれないが、バスに乗って座っていれば、通勤や日常で使っている人達に気づかれる可能性も高い。
「それじゃあ、運転免許証を発行できないでしょうか。自家用車であれば構わないでしょう?サイドウィンドウに軽くシェードでもかけておけば」
安い中古車でも調達してもらえればそれで良い。出来ないだろうか。
「ああ、それなら可能です。防衛隊用の教習施設があるので、そこで試験を受けて下さい。クルマは、そうですね、防衛省のものを貸与しましょう。公務ですので問題ありません」
貸与。そんな事が出来るのか。買わなくて良い、税金を払わなくて良いというのは実にありがたい。クルマには多額の維持費がかかるのだ。
「そうですか!是非!いつなら大丈夫ですか?」
「いつでも結構ですよ。トレーニングの合間にでも」
勤務中に。そうか、防衛隊は免許取得も仕事の一環なのだ。
「それでは、午後からにでも。筆記と実地ですよね?」
善は急げである。兵は神速を尊ぶ。
「え!?今日から!?構いませんが……大丈夫ですか?筆記試験も実技も、市井の試験センターと同じですよ?ぶっつけ本番ですよ?」
「大丈夫です。問題ありません」
というか、既に免許は持っているのだ。別人の20歳女性としての戸籍が与えられたのでそちらはもう使えないが、身についたものはそうそう消えるものではない。交通ルールだって日常で生活する以上必要なものなので、しっかりと覚えている。
困惑しながらも手続きをしておくと言ったオオイに礼を言って、やっとの事で本業にとりかかる。そう、トレーニングである。
さっきは何の話をしていたのかと取り囲んでくる二人に、午後から運転免許を取りに行くと説明しながら全身を鍛えていく。
マシンも重りも全て彼女たちが使っていたものなので、しっかりと負荷がある。今までのものよりも存分に実感を得られたので、調子に乗ってあちこちの部位を満遍なく酷使した。
そうこうしているうちに昼になったので、シャワーを浴びて元の服に着替えると、談話室で仲良く三人、昼食にする事にした。
広い談話室、ど真ん中にある大きなテーブルに丸く並んで、各々の昼食を貪っている。
『ミサキのそれ、何?』
『これは弁当ですよ、メイユィ。家で作って持ってきたのです』
大きな弁当箱にみっしりと飯と色とりどりのおかずを詰め込んだ弁当。サイズは小さいがソウにも同じものを持たせてある。
『弁当。ミサキが作ったの?』
『そうですよ、一つ食べますか?』
肉団子を一つ、新しい割り箸で掴んで彼女の前に差し出した。彼女は小さな口をあけて、ぱくりとそれに一口で食いついた。可愛い。餌付けしている気分になる。
『美味しい!本当にこれ、ミサキが作ったの?』
『そうですよ。当日で作るのは時間がなくて無理なので、冷凍しておいたものですが』
前日に冷凍しておき、朝はフライパンに薄く引いた油で炒め揚げにしたものだ。下ごしらえの段階で味をつけておいたので、ソースも何もつけなくても美味しく食べられる。
『あっ!なんだ!メイユィだけミサキの飯食って!オレにもくれ!』
同じものを一つジェシカにも差し出した。彼女は大きく口を開けて豪快に食いついた。割り箸から少しパキっと音がした。
『クソうめえな!やっぱり肉は最高だぜ!」
彼女は肉が好物のようだ。ジェシカの目の前においてあるのは三枚もある大振りなリブステーキで、付け合わせには大量のフレンチフライとマヨネーズたっぷりの茹でたブロッコリーが並んでいる。単純明快、屁が臭くなりそうな食事である。
『ミサキ、そっちのはどんな味がするの?』
『これですか?南瓜ですよ、甘いです』
これも一つ掴んで食べさせると、メイユィは満面の笑みを浮かべた。
『美味しい!甘い!ちょっとしょっぱくて、いくつでも食べられそうな味』
彼女の手元を見ると、沢山の
それにしても二人共、お国柄が良く出ている。やはり食べ慣れたものが一番という事だろうか。しかしそれでは流石に栄養が偏ってしまう。
『二人共、いつもそんな食事をしているのですか?』
ゆっくりと連合王国語で聞く。
『そうだぜ!肉はクソ力の源だからな!』
『殆どそう。何が美味しいのか、良くわからない』
要するにあまり他の美味しいものを食べたことがない、という事だろう。見るからに高そうなこの二人の昼食は、恐らく近くの店から取り寄せたものだ。費用がどこから出ているのかは分からないが、多分、税金である。これはあまり良くない。
『たまにはそういう食事も良いですが、毎日では身体に良くありません。平日の昼は私が作りましょう』
二人共、糖とタンパク質に栄養が偏りすぎだ。もっと他のものもバランス良く食べなければならない。
『げぇ、身体に良いとかって、クソ生野菜とかだろ?』
『薬みたいなのは嫌』
『そんなものじゃありませんよ。野菜は使いますが、ちゃんと美味しいものを作るので安心してください』
最初は二人にも抵抗の無いものを作って、徐々に慣れていけば良い。ステーキと飲茶ばかりでは流石にダメだ。しかしまさか、勤め先でも食事を作るハメになるとは。
材料を考えておいて、頭の中にメモを取る。月曜日の昼までにオオイに言って用意しておいてもらわなければ。
午後から、二人は昼寝をするというのでオオイを呼び出して運転免許を取りに行く事にした。それにしても、何もせず部屋で寝ていても問題ないのだろうか。
「オオイ二佐。いつも彼女達は午前中でトレーニングを終えて、それっきりなのですか?」
暇で仕方がないだろうに。それに、だらだらしていて良いのだろうか。
「そうですね、大体は。出動がなければ好きにしておいてもらって構わないので」
「そうですか。うーん、暇じゃないんでしょうか」
暇だろう。見た感じ談話室にはテレビもあったが、彼女達はヒノモト語がわからないので見ても面白くないだろうし。
「暇でしょうね。ただ、今の所何か欲しいという要望は聞いていません。まだ一週間と少ししか経っていないのですが」
自分なら無理だ。間が持たなくて一日で何か寄越せと言ってしまうだろう。トレーニングは機器待ちだという事だが、別に鍛えるのは身体だけではない。特にジェシカだ。
だが、とりあえず今日は無理だろう。試験を終えて、戻ってしばらくしたらもう自分は定時だ。なら、明日の事を聞いておきたい。
「オオイ二佐、注文が多くて申し訳ないのですが、明日か明後日、彼女達と買い物に行くことはできないでしょうか」
彼女は眉根に皺を寄せてうーんと唸った。駐車場に並んでいる車両の一台の鍵を開け、後部座席に座るようこちらを促した。
クルマが出発して駐屯地を出る。方角からして高速に乗るようだ。
「まだ、許可は降りないと思います。ヒノモト人であるカラスマさんは別ですが、彼女達はどうしても目立ちます。貴女でさえこうして公共交通機関を避けて移動しているわけですから、彼女達と一緒に行動するという事は……」
「はぁ、そうですね、目立つでしょうね」
二人共目を引くような美しさだ。そこに一部で有名な自分の顔が混ざっているとなると、それはもう目立ちまくりだろう。分かってはいたが、公的に発表されるまでは難しいという事だろうか。
「すみません、色々と考えて下さっているのは承知しているのですが」
「いいえ、仕方がないですよね。無理を言ってすみません」
クルマは料金所を通過して、北東に向かって走り出した。暫く無言の状態が続く。
防弾ガラスにシェードのかかった窓の外を見ていると、大きな川を越えた。どうやら訓練所はヤマシロ県にあるようだ。
防衛隊の一部駐屯地には、車両運転訓練の為の訓練施設がある。そこで通常の筆記試験と共に技能訓練を終えれば、一般と同じように運転免許証を取得できる。ただ、大型車の場合は特殊な軍用車両に限ることが多いので、今はそのままでは大型免許として使えないとは聞いたことがある。
ただ、自分が欲しいのは普通自動車免許だ。大型や特殊なんて取った所でトラックやクレーンを動かすわけでもないので無駄である。
オオイの運転するクルマはインターチェンジを降り、一般道へと入った。ヤマシロ県でも南東の方にある地域だ。確か、ここにも陸上防衛隊の駐屯地があった。恐らくはそこだろう。
案の定、引き門のある施設にクルマは入っていき、大きな駐車場の隅に止まった。すぐ目の前には広い敷地を持つ建造物と、脇には試験用らしき教習コースが広がっている。
「試験センターとそっくりですね」
「ああ、ここでは一般の人も免許の更新や筆記の受験ができるようになっていますから。カラスマさんは十五時からの試験を受けて下さい。その後、技能検定に移ります」
周辺には一般のクルマも沢山止まっている。駐屯地の中なのに大丈夫なのだろうか。しかし、よくよく見れば防衛隊の施設とは敷地が分かれているようだ。
建物の中からはちらほらと免許の更新が終わった人々が出てくる。防衛隊の制服を着ているオオイの方をちらちらと見てはクルマに乗り込むか、表のバス停へと歩いていく。
「オオイ二佐も割と目立ちますね」
「……そうですね。隣が駐屯地なので問題ないとは思ったのですが」
若い女性の防衛官で、しかも高い階級章をつけていれば目立つだろう。彼女もどちらかと言えば珍しい存在なのである。
「私は駐屯地の方に行っています。試験を終えて合格されたら隣の教習コースの入口で待っていて下さい。不合格の場合は……日を改めましょうか」
筆記試験は9割以上正解で合格だ。引っ掛けにさえ気をつければそこまで難しいものではない。落ちることは無いと思うが、その可能性はゼロではないだろう。その場合、わざわざ運んでくれたオオイに申し訳が立たない。くれぐれも気を付けて挑まねば。
彼女から渡された個人識別カードを持って試験場へと入る。いつの間に撮られたのか、自分の正面写真の乗った身分証明カードだ。
既に手配してあったのか、渡された番号の席について、もう随分と受けていなかった試験の空気を満喫する。最後に資格試験を受けたのは、もう数年前になる。
特に何も難しい所は無く、液晶の掲示板に自分の番号が表示されたので、隣の教習コースの方へ移動する。人はいなかった。
待っているとオオイが一人の防衛隊員を連れてきたので、彼を乗せて言われたとおりにコースを回る。信号も踏切も急発進急停車も、車庫入れも何もかも既に経験したものだ。特別何か詰まるという事も無く、合格ですと言われて終わった。
「……カラスマさん、どこかで運転をしていらしたのですか」
「さて、どうでしょうか」
暫く話をしていて分かったのだが、彼女は、というか、その上も自分が元は男であると掴んでいないようだ。というより、そんな非常識な事が起こるなどとは考えもしないのだろう。
サメガイ議員の息子の所に身元不詳の女がいて、その女がパートとしてヤマシロ市役所で働いていた、と見るのが常識的な見方だ。同姓同名の男性がどうしていたか、などというのはどうでも良い些事なのだろう。
ジェシカもメイユィも、最初から女性として身を引き取られている。もしかしたら彼女達も、記憶を失ってはいるが元は男性だったのかもしれない。そこは不明のままだ。
自分だけ彼女達と違う。何故自分は記憶喪失にならなかったのか。それとも彼女達は元から女性だったのか。分からないことだらけだ。
ナナオ駐屯地に戻ってくると、案の定、定時の15分前だった。もう本日の仕事は終わりである。
一旦トレーニングルームに戻って彼女達に帰ることを伝え、今週の土日は無理だったとメイユィに謝罪した。彼女は特別気にした風もなく、ただわかったとだけ答えた。
その日はまだ免許証を貰っていなかったため、やむを得ずサカキに送ってもらう事になった。免許が取れたので送迎はすぐに無くなることを伝えると、彼は随分ほっとしていたようだった。それはそうだろう。誰だって早朝から時間外の送り迎えなどしたくはない。
昨日と同じようにスーパーに寄ってもらい、食材を買い込んでからソウの部屋へと戻ってきた。なんだか色々と考えることが多くて、やった事は少ないのに妙に疲れた一日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます