第24話 くっころガチ勢、意気込む

レジメントを撃退していくらか経ったころ。

ゴーラブル王国王室はこの一件をアルバー王国へと謝罪しレジメントに対する制裁や調査など本気の対応を見せた。

今までは探そうとしても見つからなかった連中なのだが何人かのメンバーを生け捕りにしたことで状況が一つ進展したのだ。


今日はその報告やらなんやらでゴーラブル王との謁見の予定が入れられていた。

俺たちはまだ学生なので社交界に出るような服ではなく制服だ。


「さて、ゴーラブル王から話があるわけだが……一体向こうはどう出てくることやら」


「さぁ?謝罪やら弁明やらそんな感じじゃないですか?」


「ふん、どうだか。ヤケになって全員ここで殺す気かもしれぬぞ?このメンツだからな」


そう言ってヴィクター王子は周りを見渡す。

王城の客人を通すスペースに案内されたのだが部屋の中には、いつものメンバーと先生。

そして護衛役のマーガレットとカレンだけだ。

見事なまでに王室派のみ。

ゴーラブル王国も当然間者をアルバー王国に送っているはずなのでこのメンツがどこの派閥に属しているか理解しているはずだ。


「今のゴーラブル王国にアルバー王国と戦う余力は無いと思いますが?」


「裏でマーカム公を支援すればいけないこともないだろう。もしマーカム公がクーデターに成功すれば援助をしたとしてアルバー相手に強気に出れるだろうしな」


それは流石にヤケになりすぎなんじゃ……

暗殺ならもっと上手くやるだろ……


「冗談だ。どっちみち我らに断るという選択肢は用意されていない」


「でしょうね。まあなんとかなりますよ」


「はっはっは!頼もしいな。もし暗殺だったらそなたとシンシアだけでも生きて帰って余の代わりにアルバーを治めてくれてよいぞ?」


「兄様!」


あまりにも不謹慎すぎる発言にシンシア王女がたしなめる。

ヴィクター王子は快活に笑って答えた。


「冗談だと言っているだろう。断言しよう、暗殺は絶対に無い」


「はぁ……言って良いことと悪いことがあります……兄様は発言にもっと気をつけてください……」


「余がこんなことを言うのはジェラルトたちの前だけだ」


それはそれでこっちも迷惑なんだけどな。

素を出すのは構わないけどもっと自重という言葉を覚えて欲しい。


「アルバー王国の皆様方。謁見の準備が整いました。ご案内させていただいてもよろしいでしょうか?」


「ああ、頼む」


ヴィクター王子が代表して頷く。

俺達は案内役の人たちにつれられゴーラブル王国に来たばかりのときと同じ大きな扉の前にやってきた。

そして目の前から他の1団が歩いてくるのを目にした。


(あれは……フローラたちか)


場が場なため話しかけることはできないがここに集まっていたのは大演武会である程度強いな〜と俺が思った顔ぶれだった。

俺達は合流して並ぶことになり扉が開いた。

中に入ると前と変わらずたくさんのゴーラブル王国に仕える臣たちが。

暇なんか?と聞きたいところだがこの謁見が大仕事なんだろうなぁ……


「顔を上げてくれ」


ゴーラブル王の言葉に頭を下げていなかったアルバー王族兄妹を除いて顔を上げる。

心なしかゴーラブル王の顔は初めて会ったときより疲れているように見えた。

まあ俺達がこの国に来てからトラブル続きだもんな。

この中に誰か疫病神がいるのかもしれないが何も悪いことはしていないのでドンマイとしか言いようが無い。


「まずは今回のレジメント襲撃の一件、詫びをさせてくれ。襲撃を防げなかったことはまだしも学生たちを危険に晒してしまったのは国としての失態だ」


ドレイク家の諜報隊は他国なのに情報を察知してたけどな。

まあウチと比べるのは酷な話か?

特殊な情報網を持ってるみたいだし網は世界の至る所まで張り巡らせているらしい。

その諜報網の全てを把握しているのは全世界で現当主の父と前当主の祖父だけだ。

次期当主ですらほとんど知らされていないのが現状である。


「謝罪ならば余たちではなく本国にいる父上に直接話すべきだと思うが?」


「その通りだ、ヴィクター王子。謝罪は改めてこちらからアルバー王国へと伺わせてもらおう。今回はただ感謝をしたいのだ」


「感謝?」


ヴィクター王子の言葉にゴーラブル王が頷く。

そしてこう続けた。


「ここにいるそなたたちだけではないが、皆のおかげで大切な未来の人材、ひいては国民の命を失わずに済んだ。礼を言うのは当然であろう?」


だからゾーラ生たちも呼ばれていたのか。

奮戦していたらしいからな。

戦えないヴィクター王子やトムも率先して混乱を抑え込もうと指示を出したり、戦う人たちの邪魔にならないように避難誘導をしたりとできることをしたらしい。

それで代表者を呼んで礼を、って話になったのか。


「今回奮戦してくれた生徒には城の宝物庫から歴史的、文化的に価値があるもの以外を自由に一つ持っていってもらうつもりだ。王城にて換金するもよし、持ち帰ってくれるもよしだ」


随分豪勢だな。

まあゴーラブル王国はアルバー国境付近にある山から大量の鉱山資源、というか宝石類が採れるらしいからそういうのは結構持ってるんだろうな。

逆にアルバー王国では宝石類はほとんど採れず、鉄や石炭などいかにも戦争向けの鉱山資源がたくさん採れるのだが今は別の話だ。


「特に、ウォルシュ男爵家の娘フローラとジェラルト殿の活躍は輝かしいものだったと聞く。本当によくやってくれた」


「い、いえ……陛下。あの……私は……」


「ん?どうしたのだ?フローラよ」


「私は何も出来ていません……ジェラルト様がいなければ今頃どうなっていたか……」


謙遜か?

学生の身であいつとあそこまで渡り合える奴は中々いないぞ?

もっと誇っていいのに。


「ウォルシュ嬢。謙遜なさる必要はありませんよ。あなたがいなければ被害はこんなものでは済まなかったでしょう。トドメは私が刺しましたがその勝利はウォルシュ嬢有りきのものです」


「……っ!?」


ふっふっふ、謙遜しようったってそうはいかないぜ?

確かにフローラだけだったら確実に死んでたと思うが、元々フローラではダンカンに勝てないと踏んでわざと俺が今回のテロを野放しにしたわけだしな。

手柄くらいは分けてやろうじゃないか。

くっころの前払いだと思ってくれてもいい。


「ふむ、ジェラルト殿がそういうのならそうなのだろうな。そう遠慮するな、フローラ」


「あ……は、はい……」


フローラは了承し頭を下げる。

良かったな、これでフローラへの評価は鰻登りでよほど何かをやらかさなければ将来安泰だぞ。


「それにしても、ゴーラブル王国の学生最強とアルバー王国の学生最強、か。大演武会のエキシビションではフローラが勝ったと聞いたが、今回はジェラルト殿が敵将を討ち取ったのだろう?」


ゴーラブル王に聞かれ、俺とフローラは同時に頷く。

一体何の話をする気だ?


「いやなに、結局はどちらの方が強いのかと気になっただけだ」


「陛下。それでは改めて二人の戦う場を用意するというのはいかがでしょうか?」


「なるほど。二人が了承するならば開催するのは吝かではないが……如何する?」


臣の一人がゴーラブル王に上奏しゴーラブル王も頷く。

俺はその話が出た瞬間、笑みが溢れるのを抑えるので必死だった。


(まさかそちらから決闘の話を出してくれるとはな……!くっくっく、俺の思う通りに話が進みすぎて笑いが出そうになるな)


「私は別に構いませんよ。ね?ウォルシュ嬢」


「……っ!………はい」


フローラは一瞬表情を曇らせるが頷いた。

くくく……さぁ、俺とお前の実力差というものを教えてやろうじゃないか。

そして俺にくっころを見せてくれ!


それだけが……俺への最高の褒美となるのだから!


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