第23話 くっころガチ勢、介抱する
(終わったな……)
目の前には首のない亡骸一つ。
俺が自ら討ち取ったレジメントのリーダー、ダンカンの遺体だった。
(俺で解決できてよかったよ。もしできなかったら刺し違えてでもこいつを倒さなくちゃならなかったからな)
テロリストたちが計画を立て、この場所、このタイミングで仕掛けてくると知っていながら俺は何も手を打たなかった。
正確には打たせなかった。
その理由としてはくっころの布石としたかったからだがダンカンは本当に猛者として有名でフローラよりも強いと読んでいたのだ。
もし俺よりも強かったら俺の命をかけて倒さなくてはならないところだった。
当たり前だ。
俺のくっころ欲のせいで誰かが死ぬなんて許されることではない。
俺はくっころのためならいくらでも命をかけることができるしこれくらいはくっころを志すものとして当然の心構えだ。
「さて、と……」
俺は後ろを振り返るとがっくりと膝をついているフローラの姿があった。
一体どうしたのか?
ダンカン戦で怪我は負っていないはずだが……
「どうした、ウォルシュ嬢。どこか怪我でもしたか?」
「い、いえ……大丈夫です……」
ウォルシュ嬢は顔をそっと上げ女の子座りの体勢になりながら首を横に振る。
ではどうしたのだろうか?
あ、もしかして戦闘中に厳しい言葉を使った俺に対しての苦手意識とか?
ふふふ、そうだとしたらいい傾向だぞ。
「あの……ジェラルト様……」
「……?俺に何か?」
「……い、いえ。なんでもありません」
フローラは何か言いたそうにしていたけど口を噤む。
俺に何か言いたいことでもあったのか?
まあ言う必要があったら言ってくれるだろう。
別に無理して聞き出す必要はない。
「立てるか?」
「は、はい……ぁ……」
フローラは立ち上がるとフラリと倒れそうになる。
急いで体を支えたがフローラは体に力が入らないらしい。
そのまま目をつぶって意識を手放してしまった。
(体に外傷は無し。恐らく初めての実戦による極度の緊張やストレス。それに魔力の使いすぎが原因だろうな)
命に別状はない。
だが安静にしておいたほうがいいのは間違いないので、俺はフローラを背負い歩き出す。
途中でマーガレットと合流し、フローラを救護班のところへ送り届けるべく歩き出す。
「そういえばアンタは怪我してないの?相手はあのダンカンだったんでしょ?いい噂はなかったけど実力だけは本物だったはずよ」
「あーまあ強かったけど大したことなかったな。居合の一撃で勝負決まったぞ」
「はぁ……呆れた。アンタここ最近急激に強くなってるんじゃないの?」
マーガレットがため息をつきながら、しかし微笑みを浮かべながらそう言う。
自分だと強くなったかはわからないがここ最近は戦いも増えたし経験の問題なのかもしれない。
マーガレットと雑談を交わしながら歩いていくと救護班のテントが見えてくる。
「あそこね。やっぱり結構混んでるわ」
テントの外では軽傷の生徒が包帯を巻いてもらったりしている。
間接的とはいえ怪我をさせてしまったのは申し訳ないが、もし諜報隊に対処を任せていれば文字通り隊員に犠牲が出ていただろうし今回の件も死人が出ないように尽力はした。
まあこうなった責任の大本はコロシアムの警備を怠った人物たちになるだろう。
テントの中に入ると見覚えのある人物がいた。
「あ!ジェラルトさん!」
医療器具を運んでいる途中であったのだろうシンシア王女がこちらに気づき駆けてくる。
シンシア王女はどこも怪我をしていないようだった。
「ジェラルトさんが無事でよかった……」
「俺があんな奴に遅れを取るとでも?」
「こら、そんな言い方しないの」
「いて」
俺がそう言うとマーガレットに軽く頭をチョップされる。
ちょっと冗談で言っただけじゃんか。
まあ嫌われようとする気持ちは冗談じゃないが。
「ジェラルトさんの実力は理解してます。でも心配してしまうんです。あなたに怪我をしてほしくないから」
「まあ心配してくれることに感謝する」
「素直じゃないわね、アンタは……」
「うるさいぞ。というかウォルシュ嬢を先に預けてこなくては」
俺はシンシア王女にひとまずの別れを告げ、奥にいた医者にフローラを診せると俺の予想通りの診断結果が帰ってきた。
安静にして魔力が体に戻ってくればすぐに意識は回復すると。
そして後遺症も何もないため薬などもいらずすぐに寝かせたほうがいいと言われた。
俺は用意されていた仮眠用スペースにフローラを寝かせる。
本来なら貴族をこんな共用スペースに寝かせることは出来ないのだが、ゾーラ高等学校にはそもそも貴族の数が多く全員分の個室は間違いなく用意できないので大天幕に大量の寝袋や下に敷けるものを用意し仮眠用スペースとした。
「さて、俺は他のところの様子も見てきたいところだが……」
「フローラさんをこのままにしていていいわけないでしょ?」
「だよな」
流石にこれだけの人の目があればと言いたいところだがフローラはそんな理性を崩してしまいそうなほど美しい。
そんな女性が無防備に寝ているとあったら危険にもほどがある。
近くに着いていたほうがいいのは明らかだ。
「女どうしだし俺じゃなくて師匠がここにいたほうがいいんじゃないのか?」
俺はフローラに優しく毛布をかけていたマーガレットに聞くと首を横に振られる。
なんでだよ。
俺だって男なんだから俺じゃないほうがよくないか?
寝顔を見られたくないって人もいるだろうし。
「私は今回指揮官として戦いに加わったから詳しい報告をしなくちゃいけないわ。今はまだ時間があるけどいつ呼ばれるかわからないから私一人では無理よ」
くっ……!仕事なら仕方ないか……!
別に俺フローラに恋してるわけじゃないしただ寝顔見てドキドキしてあっという間に時間が過ぎていく〜!ってならないんだけどなぁ……
仕方ない。
これからゲットするであろうフローラのくっころがどんな感じになるのか想像することにしよう。
◇◆◇
「フローラ様!」
俺はフローラだけでなく、シンシア王女とカレンのくっころにも思いを馳せていると突然意識が現実世界へと引き戻される。
見ると杖をついて足を固定されたエセルが来ていた。
というかマーガレットもいつの間にかいなくなってるし外から夕焼けの光が漏れてくるんだが?
一体どれくらい時間が経ったのやら……やはりくっころのことを考えていると時間がすぎるのが早いな。
「ジェラルト様!フローラ様は大丈夫なのですか!?」
「誰かから聞かなかったのか?ただ魔力不足で寝ているだけだ」
俺がそう言うとエセルは安堵する。
やっぱり二人って仲良いんだな。
「この度は……フローラ様を守っていただきありがとうございました……!ジェラルト様がいなければ今頃どうなっていたことか……」
「俺は俺のやりたいようにやった。それだけで別に礼を言う必要は無い」
「ですが……」
「俺が良いと言っているのだからいいのだ。それ以上はただのお前の自己満足になるぞ?」
「……申し訳ありません。失礼をいたしました」
押し付けがましいのは好みじゃない。
俺は嫌がっているのを自分で迎えにいきたいのだからそれ以外は別に謝られようが感謝されようがどうでもいい。
気にする必要はないのだ。
(だがまあ……俺の作戦は順調に動いている……。フローラのくっころ、必ずや拝ませてもらうぞ)
俺はさらなる一手を打つべく筆を走らせるのだった──
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本作の中で一番人気のヒロインは誰なのか?
ふと昨日そんなことを思いましてどうしようかなぁと思った所ちょうど良い口実を見つけました。
☆一万いったので感謝SSにしてしまえばいいと。
もちろん限定じゃなく全員が見れるように!(限定の方は今ちょっと考えてるのでお待ち下さい)
というわけで人気ヒロイン投票開催!
好きなヒロイン(女性キャラ)を選んでコメント欄に投稿してください!
一番投票数の多かったキャラのSSを3章が書き終わったタイミングで投稿しようと思います!(同率だったら決選投票か砂乃がフィーリングで決めます)
もちろんこんなシチュが見たい!という要望も書いてくださったら候補に入れます!(採用されない可能性もあることは前もってご承知おきください)
期限は水曜くらいに打ち切ろうかなって考えてます!
たくさんの投票お待ちしてます!
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