第14話 くっころガチ勢、入学&ロックオン
入試から数カ月後。
俺は今家族が揃った場で士官学校から届いた手紙を開けていた。
「すごいわお兄様!Sクラスだって!」
「ああ。流石自慢の息子だよ。よくやった」
「すごいわ、ジェラルト。ずっと昔から頑張ってたものね」
「はい、ありがとうございます。父上、母上、アリス」
その手紙に書かれていたのは合格通知とSクラス専用寮のお知らせ。
士官学校では実力ごとに上からS、A、B、C、Dの5クラスに分けられるがクラスによって待遇が大きく変わってくる。
使える施設の充実度も全然違うしもちろん寮の部屋もだ。
Sクラスは大きい一人部屋、Aクラスは普通の一人部屋、それ以降は二人部屋なのだ。
まあ貴族は暗殺の恐れがあるのでクラスが下でも最低限の個室が与えられるらしいがせっかくの学校生活を有意義に過ごしたかったのでSクラスに入れたのは良かった。
まあ俺は首席を獲りたいんだけどな。
「制服の発注も既にかけてあるしもうすぐ届くだろう」
「ありがとうございます。父上」
「お兄様の制服姿見たいです!」
「あはは、届いたらな。それにアリスも5年後に入学することになるんだから」
「私もお兄様みたいにSクラスに入ってみせます!」
拳を胸の前でギュッと握ってアリスは目を輝かせる。
アリスも俺が剣の素振りをしていたところ「私もやりたいです!」と言って剣の修業を始めたが既にその才能の片鱗を見せている。
勉強のほうも問題ないらしいしこのまま行けばアリスもSクラス間違いなしだ。
「アリスなら絶対に大丈夫さ」
「はいっ!」
「はは、2人は本当に仲が良いな。ともかくジェラルトは入試はよくやった。ドレイク家としてはSクラスに入れば問題はない。ご苦労だったな」
「はい、父上」
この結果はドレイク家の長男だからではなく、くっころを見るためだったが結果的にドレイク家のためになったのだから万々歳だ。
俺は父に向かって大きく頭を下げた──
◇◆◇
そして迎えた引っ越し当日。
まだ日も昇りきっていない中、俺は馬車の前に立っていた。
「元気でね……ジェラルト。頑張るのよ」
「はい、母上。ドレイク家の長男にふさわしい成績を残して参ります」
「お兄様……!私お兄様が次に帰ってくる時までに自慢の妹って言ってもらえるように頑張ります……!」
「何言ってるんだ。アリスはもう自慢の妹だよ」
母とアリスと別れの挨拶を済ませ最後は家長の父だ。
父は何か細長い袋を持って近づいてくる。
「これは私からの入学祝いだ。受け取りなさい」
「入学祝い、ですか?」
父から袋を受け取り開いて中を確認する。
すると中には刃も美しく光沢を放ち見るからに切れ味も良さそうな名剣が入っていた。
こんな剣は中々お目にかかれないほどだ。
「こんな素晴らしい剣を頂いてもいいのですか?」
「ああ。お前のために最高級の素材を用意して国一番の鍛冶師に打たせた名剣だ。ぜひ使ってくれ」
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
思わぬプレゼントに嬉しくなる。
父からの思いが嬉しいし、何より戦いにこの剣は更に俺を高みへと押し上げてくれる。
くっころのために圧倒的な実力が必要な俺にとってすごく嬉しいプレゼントだった。
「頑張れよ。ジェラルト」
「はい。将来のドレイク侯としてこの地を治めるために精進してまいります」
俺がそう言うと父は満足気に頷いた。
そろそろ出発の時間だ。
俺は貰った剣を大切に抱え馬車に乗り込む。
「いってまいります。父上、母上、アリス」
家族の姿が見えなくなるまで馬車から手を振り続けていた。
くっころのためにも、家族のためにも俺は進み続ける。
俺は心にそう誓いを立てたのだった──
◇◆◇
街での宿泊など寄り道もしつつ馬車を走らせること数日。
俺はついに入試のときにも来た士官学校に戻ってきた。
見るのは二度目だが何度見てもデカい。
「おーい!ジェラルト〜!」
「ん?」
聞き覚えのある声に呼ばれ振り返るとローレンスがこっちに向かって歩きながら手を振っていた。
偶然とは言えこの早さで会えたのはラッキーだな。
「久しぶりだな。元気だったか?」
「もちろん。あと約束通りちゃんと合格したよ」
そう言ってローレンスが見せてきた紙にはSクラス合格の文字があった。
俺が筆記試験のときにSクラスに受かれよと言ったのを覚えていたようだ。
「それはなによりだ。俺もSクラスだからな」
「だろうね。筆記試験は細かいところはわからないけど実技試験であれだけの強さを見せてSクラスじゃなかったら驚きだよ」
「ふっ、それはどうも。じゃあ順位表でも見に行くか」
「そうだね。食堂の奢りもかかってるし実技試験は負けてるかも知れないけど筆記試験と総合で勝ちたいところだね」
ローレンスと2人並んで歩き出す。
すでに成績は貼り出されているらしく校庭に設置された掲示板には人だかりができていた。
みなクラスは知っているはずだが自分の学年における立ち位置だとかどんな人がいるのかとかいう興味とかそういう理由で集まっているのだろう。
順位を付けるとなったら気になるのが人間ってもんだしな。
「人が多くてよく見えないね」
「こんなもんだろ。各自確認したら横から出ていっているようだから素直に並ぶのが一番早い」
「あはは、凶暴令息って呼ばれてる人とは思えないセリフだね」
「うるさい。お前は本当のこと知ってるだろうが」
本当にこいつは貴族とは思えないほどノリが軽いな。
もう前世のノリと変わらん。
かといって舐められてるとか馬鹿にされてるとかそういうふうには感じないから加減が上手いのだろうな。
「お、少しずつ見えてきたね。実技試験のほうから確認していこうか」
「ああ、順番なんてなんでもいいさ」
順番が回ってきて掲示板の下に来る。
入試の配点は筆記が500点、実技が300点の筆記に重きを置く形になっている。
士官学校という名前のくせにそれでいいのだろうかと聞きたくなるがそういう決まりなので文句は言うまい。
順位表を見ると一番上に俺の名前があった。
1位 ジェラルト=ドレイク 289点
2位 シンシア=アルバー 270点
3位 ローレンス=イーデン 255点
「289点って過去最高点を超えてるじゃないか……どんだけ高い点を取ってるんだよ君は……」
「というかあれで満点じゃないのか?これ以上無いくらい試験官を倒したはずなんだが」
「言葉遣いとかじゃない?騎士らしくないとか言って減点されてそうだけど」
「チッ!なんだよそれ」
でも正直自覚はある。
強ければいいって問題でも無い。
シンシア王女を見てテンションが上がってたのと待ち時間が長すぎてイライラも溜まり言葉遣いも荒くなってたしな。
まあでもこれくらいなら許容範囲内だ。
「次は筆記試験だけど……」
横に移動して次は筆記試験の成績が書かれた場所へ行く。
一応見直しもして問題はなかったから大丈夫なはずだ。
そう思って見上げると今度は俺が一番上ではなかった。
いや、正確には2人並んでいた。
1位 ヴィクター=アルバー 500点
1位 ジェラルト=ドレイク 500点
3位 ローレンス=イーデン 495点
4位 シンシア=アルバー 492点
そう、この国の第一王子であるヴィクター=アルバーである。
筆記試験も単独1位かと思っていたのにまさかの満点で並ばれた。
(天才王子の名は伊達じゃないか……だが俺も満点は取れたしいいだろう)
総合は当然のトップだった。
横でがっくりとローレンスがうなだれる。
「まさか君がこんな化け物だったとは……知ってたら挑まなかったのに……」
「お前から仕掛けてきたんだろうが。ありがたくご馳走になるぞ」
「まあ約束だからね。仕方ない」
しかし俺はローレンスとそんな会話を交わしつつも内心それどころじゃなかった。
俺の脳を占めているのは総合2位に刻まれたシンシア=アルバーの名。
これで計画の第一段階は成功と言える。
心の中で思わずニヤリと笑う。
さぁ……姫騎士攻略を始めよう──
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異世界日間5位!&総合日間6位ありがとうございます!
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