第6話「よろしくお願いしますっ♪」

 艶間の昔話が終わると、しばらくの沈黙が訪れた。

 その沈黙を破ったのは、鼻血を垂らしている松本だった。

「…お前が、壮絶な過去を待ってるんは分かったんやが、それとあの写真の女子がどう関係しとるんや?」

「察しが悪いなお前は、まぁ無理もねぇか、それじゃあ今から本人に来てもらうか」

「来とるんか?」

「来てるっていうか、この学校にいる」

「何いうてんねん、あんな教官見たことないで」

「いや生徒だ」

「益々意味が解らん。ここは男子校やぞ」

「そうだなぁ、男子校だよなぁ」

艶間が頷く。

「なんや、コイツ」

「まさか…」

小田は、信じられないといった表情になった。

「おっ、小田は分かったみたいだな」

「そうなんか?小田」

「いや、多分気のせいだ」小田は首を振った。

「コイツもなんやねん」

松本はふくれてしまった。

「とりあえず呼ぶか。榊󠄀原!もう来ていいぞー」

「サカキバラ?それってさっき話しとった…」

 すると、ドアから可愛らしい男の子が飛び出して来た。

「榊󠄀原聡っていいます!1年生です!ってもういいですよね?これ。よろしくお願いしますっ♪」

そう言って榊󠄀原はぺこりと頭を下げた。その頭にはアホ毛があった。

 小田は、その背格好、なによりあのアホ毛に見覚えがあった。前に艶間に挨拶しに来たという後輩の後ろ姿と似ていた。

「お、お前があの榊󠄀原か…?」

「そうですよ。どうでした?僕と艶間先輩の馴れ初めは」

「馴れ初めって…意味が変わってくるだろ」

「最高でした…」松本が親指を立てた。

「最高なもんか…俺のトラウマだぞ…」

「おい、何か話が逸れちゃいないか?」

「ああ、そうやった。榊󠄀原、これ知っとるか?」

松本が例の写真を見せた。

「これ、僕ですね」

「えぇっ⁉︎どーゆーことや⁉︎髪は?」

「ウィッグですよ」

「そんなに驚くことかよ、さっきまでの話聞いてただろお前」

「はぁ…まあ確かに顔は似とるような…」

松本はなんとか納得した。

「そういえば艶間、なんでお前はコイツと外出なんかしたんだ?トラウマそのものなんだろ?」

「変に断って刺激しない方がいいかなと…」

「なるほどな」

「てゆーか、もうそろそろ昼休み終わるんちゃう?」

「そうだった!」

「まずいぞ、みんな急げ!」

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