第2章
第4話「過去からの訪客」
『ドラマ騒動』からしばらくして、肛交校にも落ち着きというものが帰ってきた頃、相変わらずバカ3人は仲良く昼食を食べていた。
すると、教室のドアのほうから、艶間お前にお客さんだぞと呼ぶ同期の声が聞こえた。
「なんだぁ?」
食べかけのパンを置き、マスクをつけながら、呼ばれた方へ向かった。
松本は、ちらと見てすぐに飯に向きなおったが、小田はちょうど対角線上だったので、見ていた。
艶間はどうやら誰かと話しているようだったが、離れていて声は聞こえず、相手の顔もちょうど見えなかった。
艶間は、はじめは首をかしげたりと、要領を得ない様子だったが、ある時を境に一変した。
マスクの上からでも分かるほど、みるみるうちに顔が青くなっていった。
まもなく、用件が終わったらしく艶間が戻ってきた。
小田はその時に、相手の後ろ姿を見た。
小柄で、どうやらこの春に入ってきたばかりの1年生であろうと思った。またアホ毛が特徴的だった。
飯を食べ終えた松本が聞いた。
「何やった?」
「地元の後輩が挨拶しに来ただけだよ」と、艶間はいつもの調子に戻って言った。
「ええな〜、オレも可愛い後輩が欲しいなぁ」
「可愛くねぇよアイツは。それにお前はなんだかイジメそうだしなぁ」
「なんや心外やな。どう見たって優しそうやろ」
「どうだか。なあ?小田」
先程の表情の理由を考えていた小田は不意をつかれ、素っ頓狂な声を出した。
「んぁ?…ああ、そうだな。確かにそんな髪形の奴は、信用できねぇな」
「仕方無いやろ。前髪下ろしたらガキに見られるんやから」
松本は上げている前髪を触った。
小田は悩みのタネを取り除こうと艶間に聞いてみようと思ったが、やめておいた。
艶間もその日、後輩の話はしなかった。
小田が新居での休日を満喫していると、自分の携帯の着信音が鳴った。松本からである。みてみると『大ニュースや‼︎』とあり、画像が添付されていた。艶間が女子と並んで歩いている写真で構図から隠し撮りであると分かった。
『俺たちに隠れて、こんな可愛い彼女つくっとったなんてなぁ』
『なにも彼女って決まった訳じゃないだろ。確か姉がいたはずだぞ、あいつ。それじゃねぇの?』
『いやあれは姉弟の雰囲気やなかったで。完全に恋人やった』
『そんなに気になるなら本人に直接聞けばいいだろ』
『それもそうやな。月曜が楽しみやな』
小田にとっては、艶間の彼女というより、松本が2人の後を追って、さらには盗撮までしているという事実に驚いていた。
来たる月曜日。教室で艶間を待ち受ける小田と松本。
艶間が入って来るやいなや松本が口を開いた。
「この裏切り者!どこであんな可愛い子と知り合ったんや!」
「どうしたんだよ朝から、一体なんの話だ?」
「隠そうたって無駄やで、証拠はこっちが待っとるんや……これを見てみい!」
松本は例の写真を見せた。
「こいつとどうやって出会ったのかを知りたいということか」
「そうや」
松本は頷いた。
「そうか、だが話せば長くなる。昼休みでいいか?」
「なんや急に勿体振って」
確かに、艶間の様子が尋常ではないことは、黙って見ていた小田にも解った。真剣だがどこか迷いを感じる眼差しによって松本は承知した。
昼休み、3人は屋上に居た。
艶間の目には、もう迷いは無い。あるのは覚悟のみ。
「さて、こかなら俺等以外おらん、存分に話してくれや」
「分かった」と艶間はゆっくりと話し始めた。
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