第9話 新たなる仲間
「くっ・・・」
凄まじい揺れと大きな声が、私達を襲う。
もう立つことも難しいくらいだ。
やがて衝撃は収まった。
「春!」
私は、谷川さんが無事なことを確認すると、由紀ちゃんを追いかけた。
「もう!すっごく心配したんだから!急に襲ってきて!」
谷川さんは身に覚えにないという風に、首を傾げた。
「え、え、何。何かあったの」
「あったどころじゃないよ、もう!」
どうも落ち着けない由紀ちゃんの隣に私は立つ。
私は尋ねた。
「谷川さんは、ケガはない」
笑顔が返ってくる。
「うん。平気。ありがとう。にしても・・・」
彼女は考える顔をして、うつむく。
「あの力は何だろう。今まで感じたことなかった・・・。でも、その先のこと覚えてないし」
私と由紀ちゃんはハッ、となった。
そうだった、私はこの人に事実を言わなければいけない。
読者の皆さんは、きっと予想がついていると思う。
「谷川さん。あなたの体を乗っ取ったは、怪魔っていう霊みたいなやつだよ」
ゆっくりと言葉を選んで説明した。
由紀ちゃんは驚き、谷川さんは更に判らないというように立ち尽くした。
前回、みなさんに内緒にしていた松ノ殿との会話。
それはこんな内容である。
由紀ちゃんの加勢を断念した私に、松ノ殿は言った。
「ま、この戦いももうすぐ終わるだろう」
私にはそう思えなかった。
由紀ちゃんが、なんだか無理しているように見えたからだ。
そろそろ体力の限界がくるはず。そうしたら、彼女はきっと動けなくなるだろう。
でもそれで途中で止めるような由紀ちゃんではないことを、私は良く知っている。
彼女は何でもやり遂げることが出来る、強い気持ちの持ち主だ。簡単に引き下がりやしない。
それに敵も容赦なしだ。一歩間違えれば、最悪な事態にも成り兼ねない。
そんな風に、私が思いを巡らせている時。
「あ、そうそう」
「ん?」
「今、怪魔が操っている人間、誰だっけ」
神が名前を忘れるなんてあるか?と思いながら、応えた。
「谷川さんですか」
「そうだ。単刀直入に言うと、君達の仲間だ。8人の一人だ」
私は大きな衝撃を受けた。あの人も、仲間なの・・・?
「この戦いが終わったら、言わなければならない___」
その時。凄まじい断末魔が起きた。
そう、由紀ちゃんが勝ったのだ。
私達は、昨日の幻魔と、その宿命について話した。
すると呆然としていた谷川さんは、段々と理解していき、最後には、
「なるほどねえ・・・」
と独り言をこぼした。
私はドキドキして、谷川さんの返事を待った。
「ふーん、そっかあ。幻魔、8人・・・」
言い聞かせるように、呟いている。
こんな話、いきなり信じるわけないよね。私だってまだ半分、本当だって思ってないし。
でも、返ってきた言葉は。
「面白いじゃん。乗ったよ!」
あまりにも意外だった。
「なんか素敵なことが待ってる気がするの。楽しそう!」
由紀ちゃんと私は、ぱあと明るく笑った。
まさかこんなにも早く、新しい仲間が出来るなんて。
「さっすが、春!話早いなあ」
由紀ちゃんはトン!と谷川さんの背中をたたく。
私も言った。
「これからよろしくね。谷川さん」
すると、少し恥ずかしそうに彼女が言った。
「さん付けはやめて。春で良い」
「!うん、判った」
心の奥で幸せな気持ちが湧き出た。
「そういえば、あなたの名前聞いてない」
「ああ、私は加奈だよ」
「加奈かあ。いい名前だねえ」
そう言われると、照れるなあ。
「ありがとう」
「これからもよろしくね、加奈!」
「うん!」
私達は互いに微笑んだ。由紀ちゃんも嬉しそう。
「あ、そうだ。先生とみんなは、どこかな」
不意に由紀ちゃんが言った。
「そういや」
確かに忘れてた。どこに行ったろう。
いつの間にか松ノ殿のことも記憶からすっ飛んでいる。
「加奈ー」
由紀ちゃんが私を呼ぶ。
ちょっと遠くにいた。出遅れたかも。
「うん!今行くー」
私は満面の笑みで、2人へ駆け寄った。
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