第8話 刃が
ぶるん、ブアッ。
決まってはいないが、細かに刀を振っていく。
グイッ。空気の中で、敵が爪を振るう。
ビリっ。
「!」
私の服が一瞬で、爪の跡の形に裂かれた。
そんな!相手との距離は遠かったはず。何で。
その時。爪がシュルル・・・、と内側に引っ込んでいくのを見た。
なるほど。自由に伸び縮みするのか。それなら!
ダンッ!!高速移動で、一気に近づく。
相手はびっくり。これならいける。やるぞ!手をクロスさせ、体勢を整えた。
シュンっ!と一直線に私を目掛け、爪が伸びる。ここでやられれば、私は串刺しだ。
だからっ!
「うおおおお」
交差した手を元に戻すタイミングで、綺麗に爪を、ざん!と切った。おまけに、両手だから。
コンコンコン、コロ・・・。
10本全ての爪が一気に、折れて床に落ちる。
シュタ。慎重に着地。
よし!後は、体を斬れば・・・。
「ぎゃあああ、ぎやあああ」
「!?」
ドン!
爪がまた生えた?自己再生能力があるのか!
「マジか、これじゃきりがない!」
由紀ちゃんは苦戦していた。目の前にいる大いなる敵に。
私も加勢しよう!彼女を助けるんだ。
「松ノ殿様!私も力を解放して、由紀ちゃんに協力したいです!」
松ノ殿は、うつむいて言った。
「・・・それは、できない」
「なんで?私にだって、出来ますよ!きっと」
彼は説明した。遠くを見るような目だった。
「近衛は、自分の体直接ではなく、武器を使って戦っている。だが、君は戦うのにはかなりの努力と、持久力、パワーが必要なんだ。おまけに君は、スポーツの経験が少ないだろう?」
「!」
そうだ。由紀ちゃんは、剣道をしているからこそ今うまくやれている。
でも、ほぼ(体育以外の)運動経験が無い私は、今挑んでも・・・。
「判ったか」
「はい」
今回は諦めることにした。
「まあ、もうすぐ終わるだろう。この戦いも。あ、そうそ。もう一つ」
「なんですか」
彼は私の耳元に近寄り、小声で話した。
その内容について読者の皆さんには、戦いが終わるまで内緒です!
ニュニュニュ・・・。
また伸びた!何回目だ、この状況。
息が、切れつつ、ある。
もうすぐ体力の限界がくる。そしたら、少なくとも動けなくなるだろう。
こうなったら!
集中。精いっぱいの力をここに込めて!
ダアンッ!
今までで一番の最高速で、床をけり、飛び出した。
教室の天井まで一気に、上がった。
上から見る教室って、こんなもんなのかあ。ちょっとだけ空からの景色を楽しんだ後。
グルッ、サっ。風が起きるくらい、大きく振りかぶった。
「ぐっ」
加奈が私の起こした風に抵抗している。自分でも、耐えられるかどうかは不安だった。
そこをしっかりと乗り越え、ついに敵の間合いに入ることが出来た。
よし。今だ!一瞬の油断が相手からのカウンターにつながる。
だから、今ここで。決める。
「うりゃあああ」
力の限り、刀を縦に振る。
後ろで、松ノ殿が言った。
「なんて奴だ。形は十分だ。あれで炎がしっかり出てたら、完全に決まってた。火流落が」
この技の名なのだろうか。
春をまとっていた妖気が真っ二つになった直後、凄まじい断末魔に襲われた。
まるで竜巻が通り過ぎるように、あるいは地震かの様に学校が揺れる。
騒ぎが収まった時、私が最初に見たのは。
何事もなく、首をかしげて笑う春だった。
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