異界侵蝕

藻屑暦(もくずこよみ)

第1話 異界門と乱用者

世界が終末に向かっている。

幻想の中の怪物が、悍ましい化け物が、目を覆いたくなるような狂気が、吐き気すら催す美しさが。

その、混沌の泥ケイオスタイドの漏れ出すヒビから現れた。


2025年10月20日、世界各地に「異界門ゲート」と呼ばれる、空間のヒビ割れが発生した。

ひび割れからは青緑にほのかに光る泥が漏れ出し、泥が色や形を成して人々を襲っていった。

泥から生まれた生物モドキ、「異獣」。

現代兵器由来の殺傷能力は1/50以下に抑えられ、緑色の小鬼ゴブリンにさえ対物狙撃銃アンチマテリアルライフルを運用し、赤色の大鬼オーガに至っては戦艦砲を用いても致命傷を与えることは不可能だったらしい。元自衛隊のじっちゃんから聞いた。

国際連合総会は「異界門ゲート問題および異界門由来の生物的物体に対する声明」において、世界全ての国、地域において緊急事態を宣言。

また、国際連合の直接下部組織として国際異界対策機構、通称異界機構を発足させ、

全人類に対して「同組織への登録」ならびに「異獣の討伐」の努力義務を課した。

日本では、異界門発生後も銃刀法によって銃、刃物類の所持が制限され、異獣が現れても自力対処ができず、人命救助において困難を極め都市部を中心として甚大な被害が出た。俗に言う対応が遅すぎたねって言うやつだ。

さて、他にも問題が出た。

異獣の血(果たして血なのかどうかすら怪しい液体)を浴びた人間に、物理法則を超越した「異能」が生えた。火を出したり、透明になったり、瞬間移動できるアレだ。

優秀な読者の皆様お察しの通り、犯罪者が増えた。

人間基準で強大な力を手に入れたら、

「俺って選ばれた存在なんじゃない?」と勘違いし強力な力を振るいたくなるわけで。

異能乱用者アビューサー、異獣vs民間人または武力組織(警察然り自衛隊然り)という関係が生まれたせいで、さらに人命救助なんかやってられっかよ…と半ばやけに。

しかも異能の中には洗脳とか魅了とかの精神に作用するタイプがあったせいで、異能乱用者アビューサーが母体の宗教団体が生まれたりともっとカオスに。

それで、いち早く政府によって異能所持者を招集していたアメリカの力を借り、異能乱用者アビューサーの捕縛、殲滅、さらにいうと精神系異能影響下にある宗教団体の無力化を行っている、らしい。

その代償として日本にいる優秀な異能者たちをアメリカに送っているとかいう始末、日本が弱体化していくのは目に見えているだろうに…と思う日々。

さて、こんなに長ったらしく語ってすまなんだ。

お詫びとは言ってなんだが俺の自己紹介を。

伊吹彼方。高校生1年生16歳、いわゆる宗教団体に拐われたモルモットってやつだよ、チクショー。

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2024年10月6日 00:00

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