Ancientー出会いと別れの物語ー

884

序章 むかしむかしのむかしないま

 これは、僕『三畳ユウキ』という1人の人間の昔話……でも君たちにとっては、少し未来の話になるのかもしれない。


〜〜

 僕の世界から15年ほど前。古代史生物学の第一人者、バスピ・カンブリアことカンブリア博士は偶然古代生物の復活に成功、一躍時の人となった。


 また、彼の論文には『古代生物のDNAを持った人物も近い将来出てくるであろう』という一文も書かれていた。この発言は日本、ひいては世界でもニュースになり、実際にそういった生物の特徴を持つ人間…『古生代人間エンシェント』の存在も確認された。


 が、いいニュースばかりでもなかった。カンブリアの成功に嫉妬した彼の愛弟子、Dr.オルドビスは、人間に宿る古代生物のDNAを暴走させ、意思を持たぬエンシェントを人為的に生み出す狂気の薬『強制新化薬ダーウィン』を発明。それを自身に投与し、ティラノサウルス・レックス…通称T-REXのエンシェントとなったオルドビスはカンブリア博士の研究所を襲撃。彼を殺害したという事件も起こった。


 その時のオルドビスは古生代最強の生物になったと言っても過言ではなく、警察はおろか自衛隊や軍隊も太刀打ちできなかった。


 そこで当時の国防大臣はカンブリア博士の研究所の職員からエンシェントの素質がある者を育て上げ、対エンシェント機関『アイスエイジ』を発足。亡き博士の資料から、エンシェントは強い冷気にあてられると細胞が沈静化し、やがて細胞が壊死し人間に戻るということがわかった。


 だが、発足から数週間。オルドビスはドローンを用いて首都圏の都市、石炭市全域にダーウィンを散布。『石炭市エンシェントテロ事件』と呼ばれたこの事件により、アイスエイジからも死者が出てしまう事態が起こってしまう。


 このニュースに感化された悪しき心を持った者は自ら進んでダーウィンを投与し、古代の力を手に入れ破壊と略奪の限りを尽くした。



 ……これは、エンシェントどうしによる、時を越えた殺し合いの物語。


~~


「はい、今日はここまで」


「ありがと、ぱぱ!」


 今はこうして、幸せってものがちょっとはわかる気がしてるけど…


「……いろいろあったな、あの時は」


 これから語るは、僕の出会いと別れの物語。

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