なんで、こいつ?
崔 梨遙(再)
1話完結:1600字
42歳で病気になってから、女性とのご縁がめっきり減ってしまった。そんな中でも、女性からアプローチされたことが無いわけでは無かった。その中で、個人的にヒドイと思った女性がいた。名前は花子ということにしておこう。
歳は10歳年下。
「私、胸が大きいんですよ」
と自慢するが、胸と同じだけ腹も出ていた。第一印象は“妊婦?”だった。だが、単に太っていただけだった。顔面偏差値もかなり低いと(個人的に)思った。若い頃なら、誘われても即答でお断りしていただろう。しかし、歳をとると内面を知りたくなる。もしかしたら性格がいいかもしれない。僕はとりあえずデートをOKした。
レストランでランチ。僕のお気に入りのレストラン。花子は喜んでくれた。ここまでは良かった。僕は楽しくなかったけれど。
その後、カラオケに行った。花子はリモコンを抱き締めて1人で歌っていた。僕は歌わせてもらえなかった。花子はカラオケが下手だった。下手なくせに採点機能を楽しむ。何を歌っても低得点なのに、何がおもしろいのだろう? カラオケは2時間ということで入室したのだが、何故か花子は1時間延長した。
カラオケ屋から出た頃には、僕はシラケていた。もう帰りたかったが、
「ディスカウントショップに行きたい」
と花子が言い出した。仕方が無い、僕達はディスカウントショップに入った。とりあえずカゴを手に店内を歩いた。すると、僕のカゴに花子が自分の欲しいものを入れてくる。僕はシラケるのを通り越してウンザリした。結局、買い物は花子の物ばかりだった。花子は財布を出さない。仕方が無いから僕が払った。花子は礼も言わなかった。僕はウンザリを通り越してイラッとした。
そして、花子が、
「靴屋に行きたい」
と言ったので、僕は、
「僕は帰るから、1人で行ってきたらええやんか」
と言って帰った。もう、それで終わったと思っていた。
花子からの連絡が増えた。僕は花子の内面にも興味は無くなっていたので、最低限の返信しかしなかった。
或る日、花子からのお誘いメールがあった。
「野球を観に行こう! 知人経由でチケットが手に入るから」
僕は野球にはちょっと興味があったので返信した。
「チケット、2人分でなんぼ?」
「なんで、2人分なん?」
その言い方が気に入らなかった。
「ほな、1人分で」
しばらく返信が無かった。しばらくしてからメールが来た。
「定価なら2千5百円の席」
その言い回しが引っかかった。
「定価なら? 定価ではないんやな? ほな、なんぼ?」
また返信が来なくなった。ようやく返信が来たと思ったら話をそらされていた。
「ビール、沢山飲もなぁ」
「僕、ビールは飲まれへん」
「2杯は飲もなぁ」
その言い回しにドンドン腹が立って来た。奢って貰いたいのはわかるし、何も言わなければ奢るのだが、こういうたかられ方をするとイラッとする。
「自分のお金で、好きなだけ飲んだらええやんか。僕は飲まれへんから。それに、なんぼかもわからへんのやったら行かへん」
また返信が来なくなった。僕は、それで終わったと思った。それなのに、まだ誘ってきた。僕は、“しつこい奴やなぁ”と思った。もうハッキリと終わりにしよう。
「チケット、1人分で5千円」
「ほな、僕は行かへんわ。1人で行っておいで。ほな、さよなら」
それなのに、まだ連絡が来た。
「私、お小遣いが月に5千円やから1人じゃ行かれへん」
「つい、この前は1万5千円って言うてたやんか、ほな、さいなら」
そして、また連絡が来なくなった。これで終わったと思ったら後日、連絡が来た。
「もう、別れよう」
「いやいや、そもそも付き合ってへんやんかー!」
どうせ好かれるなら、もっと素敵な女性に好かれたかった。なんで、こいつなん? 数少ないチャンス、人生って厳しすぎる!
なんで、こいつ? 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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