第7話

あれからも森林での演習は行われ、今日からは迷宮への挑戦となる。

正確にいうと、迷宮―王都近くの迷宮であるラブレー迷宮―での演習は既に行っており、今回は数日かけて行う迷宮探索になるというわけだ。

ラブレー迷宮は比較的攻略難易度の低い迷宮であり、学院の学生や初心者冒険者の最初の目標とされている。


迷宮は3層からなり、最下層にいるボスを倒して帰還することが本演習の目的となる。

一度に大量の学生が攻略できるのか疑問ではあったが、どうやら、迷宮内の魔物は迷宮からでることができず、迷宮内で再発生するということで問題ないらしい。

一般的な魔物は闇属性の魔力によって生み出されるのと異なり、迷宮内の魔物は未だ解き明かされておらず、迷宮の誕生とともに神秘とされている。


オルドからの迷宮の説明を聞き終え、オルドの号令と共に迷宮へと潜った。



迷宮1層。壁や天井から産み出されている魔鉱石が、通路を仄かに照らす。

この魔鉱石はそれなりの収入にもなる。そのため、戦闘になれていない初心者冒険者向けの迷宮になっている。


前方に赤黒い核をもつジェル状の魔物を確認する。スライムだ。

どうやらこちらに気づいたようだ。

プルプルと震え酸性のジェルを飛ばしてくる。


マーカスは3人の前方に水壁を展開しジェルを防ぐ。

同時に、俺とゼラは壁を駆け側方からの一閃で核を破壊する。


核を破壊されたスライムたちは液状になり地面に溶け出していく。


「楽勝!楽勝!」


探索初戦闘を終えたゼラからそんな声が聞こえてくる。


溶け出したのはスライムだけではなかったようだ。

ゼラの胸部を覆うビキニアーマーに穴が開き始めている。


「言ったよね。防具にも風魔法かけておいてって。ねえ」


そう叱りながら、マーカスは予備のアーマーをゼラに渡す。

一方で叱られたゼラは「ごめんね~」などと受け流し、俺の方にウィンクをしてくる。


そんなことをしてるとマーカスに怒られるぞ。ほら


用意がいいのも今回が初めてじゃないからだ。というよりも、対スライムの場合、ほとんどの戦闘でゼラの防具は溶けている。


ウィンドアーマーを防具上からもかけておけば酸が防具に付着することはないはずなのだが、ゼラはそれをしない。

彼女曰く、できないらしいが、普通は一部にだけ魔法をかけない方が難しい。


たぶん、俺に好意があるのだろう。さすがに俺でも気づく。

だが、3人パーティーで仲間同士の恋愛はよくないだろうことはわかってる。

頭のいいマーカスもそのことを理解しているからか、ゼラからのアプローチを遮断してくれている。


ゼラは普通にかわいいから困る。マーカスがいなければどうなっていたことか。


その後も順調に1層を攻略し2層へと向かう。

2層も何度も攻略したことがあるため、問題なく3層へと向かった。

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