第5話

ここ王立学院では寮制になっており2人部屋となっている。

ただし、庶民は庶民と、貴族は貴族とペアを組むといった配慮付きだ


俺は運よくマーカスとのペアとなれた。


「そろそろ夕食をたべにいこうよ」

「それもそうだな」


マーカスの提案から食堂に向かうことにする


食堂につくと既に多くの学生が食事をとっていた。

王立学院の食堂は全学年の庶民・貴族が使う共有施設となっている。そのため、充分な座席数があるにもかかわらず時間によっては座るのが難しいことも間々あるのだ。

まさに、今がそうであるように


「ジーク~マーカス~こっちこっち~」


空席を探していると遠くの方から呼び声が聞こえる

ゼラであった

よくこんな場で声が届くものだ。活発であるのは間違いないようだ。

燃える赤髪が余計に彼女を目立たせる


「ここ空いてるから来なよー」


同室の子は他の子と食事をとっているようで1人で来ていたようだ。

それにしても、4人がけのテーブルでなくともいいだろうとは思う。


それから各自食事を受け取り、ゼラを中心に談笑の時間を楽しんでいた。


「食事くらい静かにとることもできないのか。庶民は」


「本当にそうね。私たちと同じ学院で学べることを光栄に思ってほしいわ。」


「庶民を理解することも貴族のつとめ。今は我慢しましょう。」


ゼラの声がうるさかったようで隣のテーブルに座るお貴族様から文句を言われてしまった。

まあそんなのは関係ない。食事っていうのは話しながらとるのが普通だからな。

孤児院でもみんなとの食事の時間は大切にしていたんだ。今も変わらず、だ。

そんな思いで談笑を続けようとすると、普段のゼラらしくない、しおらしい様子で話しかけてくる。


(ジーク、まずいって。静かにしよ?)


(何言ってんだ。ここは平等だろ?)


(本当にまずいから。公爵家だよ!?)


隣にいる3人の貴族は王国3大貴族だったらしい。

偉そうに食事をとっている金色の髪をもつ男は、宮廷魔導士筆頭の息子であり、ホーソン公爵家の息子であるジェラルド=ホーソン。火属性の魔法に秀でており、次代の宮廷魔導士筆頭と噂されている。

その隣に座っている金髪ドリルの女は王国宰相の娘であり、オルドヴィス公爵家のイレイラ=オルドヴィス。光属性の攻撃系魔法を得意とし、入学試験でも好成績だったようだ。

最後に、貴公子といった雰囲気をまとっている長身の男は宮廷騎士団団長の息子である、リッター=カバジェロ。幼少の頃からの英才教育もあり、剣技に秀でている。

ちなみに、3大公爵家の中で一番人気があるのも彼だ。3人とも貴族至上主義ではあるが、その甘いマスクゆえに人気があるようだ。


公爵家だからって怯えて食べるのも面白くないしな。

マーカスも気にしないようだ。こいつはこいつで大胆不敵なんだよな。

貴族と関わりの少ない孤児ならわかるが、平民が貴族を恐れないのはなかなかないことだろう。ゼラ含め平民は黙ってしまっているのだから。


「食事くらい自由でいいだろ。マーカスもこんな感じなんだ、ゼラも普通でいいんだよ。そもそも、なんで貴族の隣に座るんだよ」


「いや、それは……だって、ここしか空いてないんだもん……しょうがないじゃんかあ……」


「しょうがないよ。黙れ、なんて、こんなに器の小さい貴族だとは思わないからね。」


マーカスの挑発めいた発言に公爵家が黙っているはずがない。


「今のはホーソン家に対する侮辱か。名前を言ってみろ」


「マーカスといいます。こちらの2人はジークとゼラです。侮辱なんてとんでもございません。無知な平民の妄言とお思い下さい。ホーソン様」


「生意気ですわ」


金髪ドリルのお気に召さなかったらしい。


「イレイラ。今は許してやるのも貴族の務めだ。これから貴族の貴族たる所以を理解していけばよい。」


「ジェラルドがそういうなら我慢しますわ」


「そうですね。それでもわからない場合には公爵家としてお教えしましょう」


常識人だと思っていた、いや思いたかったマーカスのおかげもあってか、公爵家の怒りは収まった?ようだ。

もっと言い方を考えた方がいいのは確かだが。


三大公爵と庶民が話しているのは注目を集めるのは必然。

どうやら貴族を含め、食堂にいる学生がこちらの動向を伺っていた。


「なにをしているのですか、ジェラルド」


食堂の入り口の方から一人の女生徒が向かってくる。


あれは、新入生代表のシンシア=ドラクル、か


力のある辺境伯領の娘だからか呼び捨てにされたジェラルドは気にもしていないようである。


「シンシアか。庶民に礼儀を教えてやっていたのだ。お前には関係のないことだろう」


「いいえ。違います。ここは庶民も貴族も平等に扱われる学院です。貴族権力を振りかざしていい場所ではありません。」


「今現在、食堂に入ってくる様子からして、シンシアも貴族としての権威を用いているように見えるのだが。違うか。」


ジェラルドの言っていることは正しい。たしかに彼女の貴族としての地位があってこそ、ここまでの道が開けたのだから。

だが、不平等を平等にするためのことであり、そのための権威の利用はしょうがないと言える。

だから、、、


「シンシア様ありがとうございます。ですが、ジェラルド様方とは話がついていますので大丈夫です。」


「そいつの言う通りだ。」


そんな言葉を残し、ジェラルドたちは食堂を後にした。


「助けられてしまいましたね。お名前をお聞きしても?」


「ジークと申します。シンシア様」


「敬称はいりません。どうぞシンシアとお呼びください。(ジーク、素敵な名前です)」


「じゃあ、シンシア、これからもよろしく頼む」


「ハイ。“これからも“よろしくお願いします、ジーク」


この時は知らなかったのだ。彼女の本性に。そして、彼女はイケメンを好んでいることに

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