第3話
入学式は始まり、壇上に新入生代表の女生徒、シンシア=ドラクルが登壇し挨拶を始める。
例年、貴族クラスの首席が新入生代表を務めることになっており今年はシンシア=ドラクルというわけだ。
彼女は、王国と王国の西側にある自然要塞シェンゼン山脈の向こう側にあるゼメルギル帝国との間に領地をもつドラクル辺境伯の娘である。
帝国の侵略と山脈からの魔物から領地・王国を守るために武力が重視され、彼女も幼少の頃から鍛えていたのだろう。
でなければ、座学だけでなく武も評価される入試において主席になれるはずがないからだ。
しかし、挨拶を行うシンシア様からは覇気を感じない。スラっと伸びた肢体に銀色の長髪。お淑やかな雰囲気からは、魔法使いだとしても実技試験で好成績を残したとは思えないほどお嬢様といった様相である。
他の生徒もそのように考えているのだろう。
貴族だから。辺境伯の娘だから主席になれたのではないか、といったことがささやかれている。
「ちがうよ。シンシア様は本当に強いんだ。」
俺が疑っていることに気づいたのか、隣に座っているマーカスが話しかけてきた。
「どういうことだ?見るからにお嬢様じゃないか?」
「まだ頭首じゃないから庶民には情報がまわってきてないけど、貴族の間では有名らしい。なんでも串刺し姫なんて物騒な名前で呼ばれてるんだから」
たしかに、貴族側からはシンシア様への疑いの声はあがっていない。それどころか納得しているようにさえ見える
「串刺し姫かあ。あんな綺麗な女の子に刺されるなら悪くないかもな」
「ふふ。二面性のある女性ほど魅力的な人はいないからね」
そんな冗談を言い合っていると入学式は終わっていた。
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