第21話 確率の話!
突然だが、確率の話をさせてほしい。
まず、確率とは物事が起こる可能性や出現する可能性の度合いを示す数値のことだ。
この世界には様々な出来事が溢れていて、それらの出来事のほとんどは予測不可能なまでに複雑で、何が起こるかを知るのは難しいだろう。
想像してみてくれ。
俺が一つのサイコロを手に持ち、そのサイコロを振る瞬間。サイコロの目は1から6までの数字であり、それぞれの数字は均等に出現する確率を持っている。
つまり、1が出る確率は6分の1、2が出る確率も6分の1、同様に3、4、5、6もそれぞれ6分の1の確率で出現するのだ。
物事がどのように進むのか、その先で何が起こるのか、その全てには確率が絡んでいるのだ。
ちなみに、落雷に打たれる確率は、約1,000万分の1。
搭乗している飛行機が墜落する確率は、約20万分の1。
もっと身近なものでいくと、自販機の下に金が落ちてる確率が10分の1と言われているらしい。どうやって計算したのかは定かではないが参考程度にはなるだろう。
そして最後に、今、俺が遭遇している出来事が起こる確率は——
「——一歩でも動いたら頭に穴が開くぜぇー!?」
古典的な銀行強盗が起こる確率は不明だが、年々事案数が減少しており成功確率も極めて低いため、割に合わない犯罪であることは確かである。
だというのに、一丁のピストルを構える巨漢の男は、堂々と銀行強盗を決行しようとしている。
黒い覆面を被っているが高まるのは時間の問題だ。
スマホは押収して全員を隅に追いやり手を挙げさせようとも、監視カメラは一部始終を捉えている。
よりにもよって街の一角にある、こんな小さな地方銀行の一支店に乗り込むなんて見下げた度胸だな。
「……お前さん、嫌に落ち着いておるな」
男に対して呆れていると、80歳くらいのシワまみれの爺さんが話しかけてきた。
「まあ、監視カメラもたくさんついてるし、カウンターの向こうにいる銀行員は何かスイッチみたいなの押したっぽいしな」
「こんな状況なのに視野が広いのぅ。仕事は何しておる?」
「……引きこもりだ」
ヒーロー……とは流石に口が裂けても言えなかった。
俺はヒーローらしいことなんてしていないし、言ったら言ったで縋り付かれそうで面倒だからな。
「ほう、自分探し中というわけか」
「素晴らしい解釈をしてくれたところ悪いが、残念ながらほぼニートだよ」
「まだ若いから先がある。自分の人生はゆっくり歩めばいいわい」
なんだこのポジティブ爺さんは。
良い人感が溢れ出てるし、普段の俺が情けなく思えて胸焼けしそうになる。
「……まあ、そうなったらいいな」
俺は大きな溜め息を呑んで言葉を返すと、男の姿を一瞥した。
爺さんと話すのは中々悪くないが、バレて爺さんがターゲットにされたらめんどくさいからここらで控えておく。
両手を上げたまま無抵抗を演じる。
「……おい。そこの銀髪」
無言でジッとしていると、突如として男がこちらに視線を向けてきた。
「ん? 俺……?」
「無愛想なてめぇだよ。さっきからなぁにジロジロ見てやがんだ、コラ! 生意気な目ぇしやがって!」
「……」
ほんの一瞬目を向けただけなのに、なんで俺が見た時だけそんな敏感に反応してくるんだよ。
もう通報されて捕まるのは時間の問題なんだから大人しくしてろよな。
「無視か? いい度胸だな、コラ!」
男はずかずかと横柄な足取りで俺の目の前にやってきた。
こちらをギロリと睨みつけてくる。
俺はゲーセンで格ゲーをやりにきただけなのに、なんでこんなトラブルに見舞われなきゃいけねぇんだよ……。
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