第3話 カード開封を邪魔するな
「開けちゃおうかな」
コンビニからの帰り道。
俺は袋の中からヒーローチップスを取り出した。
普段ならポテチの立ち食いなんてしたら人目につくが、今日は運良く空いているので堂々と振る舞える。
「……」
ポテトチップスを開封して、斜めに傾けながら袋の上部を自分の口に近づけた。
ガサガサという軽やかな音が響き渡り、袋の中のチップスが開口部を通って俺の口へと滑り込んでいく。
「……塩気が効くな。でも、量が少ない」
ぼりぼりと咀嚼しながらも呟く。
もう無くなってしまった。
口の中に一気に放り込んだせいであっという間に消えたので、お待ちかねの本編に移ることにした。
よく、この手の商品でアクスタを買ったらガムが付いてきたり、小さいフィギュアを買ったら飴が付いてきたりする。
しかし、実際のところ商品名はガムや飴になっていて、おまけでアクスタやフィギュアが同封されているという解釈らしい。豆知識だ。
ヒーローカードも同じで、商品名を見るとメインがポテチでカードがおまけだったりするが、ポテチはガムや飴に比べると満足度は高いから文句はない。
無駄な講釈もご愛嬌。
「……高値になりそうなやつが当たってくれよ……」
俺は本体の袋にシールで貼り付けられた小さな別袋を破いた。
切れやすいようにギザギザにしてくれている親切設計だ。
俺は1ミリずつゆっくりとカードを袋から上方向に動かし、徐々にその全容を確かめていく。
興味がなくとも、カード開封は高揚感を覚えてしまう。
さながら気分はギャンブラーだ。ポーカーでカードを確認するときのあの感じである。
「キラカードだ!」
柄はかなりキラキラしていて、色は黄色と黒だった。
結構レアカードの予感がする。
金だ、これは金になる!
人気のヒーローなら必ず高値で売れるぞ!
むさ苦しい男ならご遠慮願いたいが、ビジュアルの良い女ヒーローなら最高だ。
俺はムフフで邪気を孕みまくった笑みを浮かべながら、遂に我慢できずに袋からカードを一気に取り出した。
側から見ればその姿はもはやデュエリスト。
天高くドローしたカードはきっとレアカードであろう。
「こい!」
俺は天に掲げたカードを見ようと腕を下ろそうとしたのだが、その瞬間、背後で爆発音が鳴り響いた。
「え?」
同時に、爆風が俺の背中に押し寄せてくると、気を抜いていた俺の手からはカードを吹き飛ぶ。
驚愕と絶望に心が支配された。
「がぁぁぁ……っ!?」
思わず口周りの筋肉が全て溶けたかのように、完全に弛緩、脱力。
無気力状態に陥り、宙を舞い飛ばされるカードの行方を目で追うことしかできなかった。なさ
カードは少し離れた水溜りの上に着陸すると、即座に水を含んでしなしなになっていた。
確か昨日は結構な雨が降っていたな……。
誰のせいだ。絶対に許さんぞ。俺の大切な娯楽を邪魔した罪は重い。
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