第2話 避難警報が出ているらしい
「……なんか、人が少ないな」
ゆっくりとコンビニへ向かう道中。
なぜか街に人が全く歩いていないことに気がついた。
今日は何かイベントとかやってたっけ?
フェス? コンサート? アイドルの握手会?
よくわからないけど、空いてるならその方がいいな。
人混みとかマジで嫌いだし。
「ジャンキーなブリトーとカップラーメンで決まりだな。夏こそ熱いものに限る」
俺は全く人のいない通りを進んでいき、家から徒歩三分の位置にあるコンビニに入店した。
「っしゃぁっせぇーぇぁ」
若い金髪ギャル男の店員の挨拶の癖が強いが、既に慣れたし毎日通っているので最早顔見知りだ。何ならレジ打ちの時に世間話をすることもある。
こんな毛玉まみれの燻んだ黒いスウェットに、シワシワの白いTシャツを着た銀髪の不審者と仲良くしてくれるなんて良いヤツだ。
「……おっ、これは……」
どうでもいいことを考えながらも、ぶらぶらとのんびり店内を散策していると、あるお菓子が目についた。
「ヒーローチップスか」
手に取りよくよくパッケージを見てみると、本当に全ヒーロー収録と記載がある。
確かヒーローは千人ちょっといたはず。
この量が極端に少ねぇチップスを買えば、得体の知れないヒーローのカードが貰えるというわけだ。
俺のカードを引いた子供は可哀想だな。
親に泣きついてカードを捨ててしまうかもしれない。
そもそも影が薄すぎて無名な俺が登録されているかも怪しい。全てのヒーローとやらの中に、俺は含まれていないような気がする。
「……」
俺は手に持つカゴの中にヒーローチップスを投げ入れた。
何となくの運試しだ。
上位のヒーローが出たらラッキーだと思っておこう。もしかしたらネットで高く売れるかもしれないしな。
「ひぃっろっちっぷすがぁ一点ぅっ……ちーずそーせーじぶりとぉーはあたためますかぁ?」
レジにカゴを置くと、金髪のギャル男は慣れた様子でレジ打ちを始める。
「……」
頷く
うちにレンジはない。
「ふくろぁひとつでいいっすかぁ?」
「……」
頷く。
「あっすぅ……」
「千円で」
「あいあぃぃ、お釣りっすぅ……あっ、おにぃさん、ニュースみましたぁ?」
俺にお釣りを渡した金髪のギャル男は、他に客がいないことを確認してから話しかけてきた。
「何の?」
「えっとぉ、この辺になんかやっべぇすっげぇでけぇ真っ黒なモンスターが出たらしぃっすよ? ヒーローも何人か来てるっぽくて、けっこーやべぇ的な?」
金髪のギャルは伸びのある口調で教えてくれたが、ふにゃふにゃしすぎてよくわからなかった。
「ふーん……そんな強いやつなのかな?」
「んー、避難してくれーってそくほー出てたっすね」
「そうなんだ。んじゃ、お互い気をつけようぜ」
俺は袋を受け取り退店した。
「あぃあぃー。っしゃしたぁ~」
金髪のギャル男は無警戒な声色だった。
とても速報が出るくらいのモンスターがこの辺りに現れたとは思えない。
何人もヒーローが来ているということは、ここら辺で戦闘が起きる可能性は高いと思うし、面倒事に巻き込まれるのは嫌だな。
とっとと家に引きこもって飯を食うか。
一応、俺もヒーローだけど別に関係ないし。
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